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加藤嘉明の家臣 河村権七

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加藤嘉明の家臣に、河村権七という者がいた。

彼は関ヶ原でも大功をたてた者であったが、生来頑固であり、あるとき、嘉明と行き違いで口論となり、腹立ちのあまり加藤家を出奔することにした。
が、出奔した後

「あいつは他の家に、今より良い条件で仕えるために出奔したのだ。不忠者だ」

などと言われるのも片腹痛い。
そこで、書置きを残した。

「この度お暇を頂くのは、他家に仕えるためではない。
 例え放浪の身になっても、加藤家以外に仕える事はない。
 今後加藤家に大事があったときには、何処にいようと掛けつける。」

そうして、出て行った。
これを知った嘉明は渋い顔をしたが、そのままほおって置いた。

14年の時が過ぎ、大阪の陣となる。
この時、豊臣恩顧の大名の多くは、江戸に留守居として抑留された。
無論嘉明もそうなった。
そしてこんな噂が流れた。
江戸に抑留された大名達は皆、改易されるのではないか?

そんな嘉明の江戸屋敷に、汚い身なりをした修験者が現れた。

「どうか殿にお目通りを」

河村権七であった。

嘉明は驚き、対面した。

「加藤家改易の噂を聞き、いても立ってもいられず参上いたしました。」

「…よく来た。書置きのとおりにいたしたな。」

嘉明はそれを喜び、河村を、元のように八百石で召抱える、戻って来い。と言った。
最初権七は恐縮したが、ついにこれに応じた。

「よし…。ではこちらに来い。」

嘉明は権七を、屋敷の一室に連れ出した。
その部屋には、紫の布に覆われた、山のようなものがあった。
これはなんだろうと、権七が不思議な顔をしていると、嘉明は家臣に命じその布を取らせた。
その下には、莫大な金銀があった。

「権七、お前の俸禄じゃ。」

権七は混乱した。
たった今八百石で仕えるとは言ったが、それが何故このような大金になるのか。
すると、その布を取った家臣が言った。
「これは河村殿が、『見聞の旅』に出ている間の俸禄を、殿の仰せで積み立てておいたものです。
14年分で一万一千二百石。
どうぞお納めなされ。」

「お前は14年前、言ったな」

唖然とする権七に、嘉明は語りかけた

「他家には仕えぬ。わしの一大事には駆けつける。
 お前の忠心を思えば、わしにはおぬしの俸禄を、横領することなど出来なかった。
 そして今、その通りにしてくれた。
 権七、またこの嘉明に、力を貸してくれ。」

権七はただただ、感涙にむせんでいた。

大阪の陣の後、会津四十万石に加増された加藤家において、河村権七は良く、嘉明を支えたという。


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