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囚人のジレンマ

Wikipediaより



囚人のジレンマ(英:Prisoner's Dilemma)は、ゲーム理論や経済学において、協調したほうが互いにとってよい結果をもたらすのにも関わらず、独立して行動を決定する個人の間では協調を実現することができず、お互いにとって望ましくない結果をもたらしてしまうような状況を指す。このような状況は経済現象以外でも頻繁に見られるため(値下げ競争、環境保護など)、ゲーム理論における重要な研究対象とされた。

1950年、アメリカ合衆国ランド研究所のメリル・フラッド (Merrill Flood) とメルビン・ドレシャー (Melvin Dresher) が考案し、顧問のアルバート・W・タッカー (A.W.Tucker) が定式化した。

【問題】

共同で犯罪を行った(と思われる)2人が捕まった。警官たちはこの犯罪の原因たる証拠などをまったく掴めていない為、この現状のままでは2人の罪は重くても2年である。そこで警官はこの2人の囚人に自白させる為に、彼らの牢屋を順に訪れ、自白した場合などの司法取引について以下の条件を伝えた。

・もし、お前らが2人とも黙秘したら、2人とも懲役2年だ。
・だが、共犯者が黙秘していても、お前だけが自白したらお前だけはその場で釈放してやろう(つまり懲役0年)。ただし、共犯者の方は懲役10年だ。
・逆に共犯者だけが自白し、おまえが黙秘したら共犯者がその場で釈放される事になる。ただし、お前の方は懲役10年だ。
・ただし、お前らが2人とも自白したら、2人とも懲役5年だ。

なお、2人は双方に同じ条件が提示されている事を知っているものとする。また、彼らは2人は別室に隔離されていて、2人の間で強制力のある合意を形成できないとする(すなわち、事前に2人が会って相談したり、自分だけが釈放されるように相方を脅迫したりする事はできないと言う事)。
この時、2人の囚人は共犯者と協調して黙秘すべきか、それとも共犯者を裏切って自白すべきか、というのが問題である。

2人の囚人の名前をA、Bとして表にまとめると、以下のようになる。表内の左側が囚人Aの懲役、右側が囚人Bの懲役を表す。たとえば右上の欄は、Aが懲役10年、Bがその場で釈放される事を意味する。

          囚人B 協調    囚人B 裏切り
  囚人A 協調   (2年、2年)   (10年、0年)
  囚人A 裏切り  (0年、10年)   (5年、5年)

【解説】

囚人2人にとって、互いに裏切り合って5年の刑を受けるよりは互いに協調し合って2年の刑を受ける方が得である。しかし囚人達が自分の利益のみを追求している限り、互いに裏切り合うという結末を迎える。この条件をAの立場で考えると、Aは以下のように考えるだろう。

1.Bが協調した(黙秘した)場合、もし自分 (=A) がBと協調すれば自分は懲役2年だが、逆に自分がBを裏切ればその場で釈放される。だからBを裏切った方が得だ。
2.Bが自分を裏切った(自白した)場合、もし自分がBと協調すれば自分は最悪の懲役10年だが、逆に自分がBを裏切れば懲役は5年で済む。だからやはりBを裏切った方が得だ。

以上の議論により、AはBがどのような行動をとるかにかかわらず、Bを裏切るのが最適な選択と言える。よってAはBを裏切る事になる。しかし、それはBにも同じ事が言える(Bにも同じ条件が与えられている)ので、BもAと同様の考えにより、Aを裏切る事になる。よって実現する結果は(裏切り, 裏切り)となる。

重要なのは、相手に裏切られるかもしれないという懸念や恐怖から自分が裏切るのではなく、相手が黙秘しようが裏切ろうが自分は裏切ることになるという点である。なので、仮に事前に相談できたとしてお互い黙秘をすると約束したとしても、(それに拘束力が無い限りは)裏切ることになる。

よって両者は、互いに裏切り合うよりは互いに協調し合った方が得である事を知っていたにもかかわらず、互いに裏切り合って中途半端な5年の刑を受ける事になる。このように裏切り合った時の結果(5年,5年)の方が協調する時の結果(2年,2年)の方が双方にとってよい結果であるのにも関わらず、協調を実現することができない事がジレンマと言われる所以である。

【現実における囚人のジレンマ】

現実世界でも囚人のジレンマないしそれに類似した例を見つける事ができる。例えば核兵器開発では、A国とB国が両方とも核兵器開発を止めれば平和が維持できるにもかかわらず、相手国が裏切って核兵器開発をはじめる恐怖に耐え切れず、双方とも核兵器開発をはじめてしまう(恐怖の均衡)。

また低価格競争でも、A社とB社が両方とも値下げを止めれば利益を維持できるにもかかわらず、相手企業の値下げによりシェアが奪われる恐怖に耐え切れず、双方ともに値下げ合戦をして利益を圧縮してしまう。このように囚人のジレンマは政治・経済の解析にかかせない。

その一方で囚人のジレンマのような状況であるのにも関わらず、協調が実現しているような経済現象も存在する。例えば談合など、相手の行動に関わらず自分が裏切れば高い利得を得ることができるのにも関わらず、実際には協調し続けるような状況があげられる。このような状況は、談合はいつ終わるか分からないので無限回繰り返しゲームと解釈することで協調を説明することができる。


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