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マッカーサーのお膝元にいた女性二人が「日本」について本を書いた

週刊新潮2003年3月27日号 『変見自在』高山正之



 マッカーサーのお膝元にいた女性二人が「日本」について本を書いた。
一つはルース・ベネディクトの『菊と刀』。白人キリスト教徒らしい視点でアミニズム日本の不思議をかなり見下して書いている。
もう一つがヘレン・ミアーズの『アメリカの鏡・日本』だ。彼女の視点はベネディクトよりはるかに高く、世界全体を見下ろして「日本は欧米を見習い近代化のステップを歩んだだけ。日本は我々を映す鏡だった」と主張する。

 例えば米国はフィリピンを植民地にするのに二十二万人も殺した。ハワイ王朝も詐術と暴力で乗っ取った。日本はそんなひどい国とそっくりなんて言われたくない気分だが、マッカーサーは別の理由でこの本の日本での翻訳出版を禁止した。
彼は「米国は正義の国。日本は生まれつき残虐な侵略国家」としたかったからだ。
彼女の本は最近やっと日の目を見たが、歴史はどうやって見るべきかの示唆を多く含んでいる。
 例えばこんなくだりがある。「日本は有色人種の中でただ一人、完全平等の地位を与えられていた。中国人は自分の国にいながらクラブや租界に入れなかったのに日本人は白人として受け入れられた。インドシナの住民登録には日本人は『ヨーロッパ人』と記載されたが、中国人は『原住民』だった」
 ムーディーズの格付けみたいなものだが、最下位にランクされた中国人が「ハングオレン」と言ってさらに見下していたのが朝鮮人だった。ハングオレンとは「韓国人」の中国語読みである。
 日本は明治末、その朝鮮を併合した。そのころの朝鮮は道路も下水も満足な学校もなかった。あるのは儒教原理主義に基づく強烈な身分差別で最上層の両班はともかく小作人やその下の奴婢は人権もなかった。女性はさらに見下され名前のない者もいた。

 それで日本は身分差別を廃し戸籍を作って名無しの女性には名前をつけさせた。
女性の名は金賢妃の「妃」とか「淑」が形だったが、日本風の「子」もこのときに普及した。今の人気歌手、李美子もその一例になる。
 日本は内鮮一体、つまり朝鮮人も日本人と同じ扱いにする政策をとり、国内並みに鉄道、港湾などのインフラを整備し、政府、軍にも人材を登用した。朝日新聞が強制連行だと騒ぐ徴用が行われたのは昭和19年。同じ時期に徴用の何倍もの朝鮮人が日本に流れ込んでいる。内も鮮も同じ、引越しの自由のおかげと言える。
 しかし彼らは日本以外の例えば中国に行けばハングオレンのまま。それで日本名を勝手に名乗る者が出て来た。そうすればもう中国人から見下されないからだ。
これがブームになる。日本政府は勝手な改名を禁じて日本名にしたいなら役所に届け出ることを義務付けた。昭和15年に半年を限りに行われた「創氏改名」である。
朝鮮人は新羅の昔に金さんとか朴さんとかの中国名に改めていた。だから二度目の創氏改名になるが、その理由を著名な作家、香山光郎こと李光洙は「我々の姓名は支那を崇拝した祖先の遺物。支那人と混同される姓名を持つよりも日本人と混同される氏名をもつのがもっとも自然だと信ずる」(『創氏とわたし』より)と書いている。
 ちなみにもう一つの日本統治領、台湾での創氏改名は朝鮮の届出制とは違って許可制が取られ「滅多に許可されなかった」と『台湾人と日本精神』にある。許可制にしたのは、中国人は今でこそ「原住民」扱いだけど、日本人も尊敬する栄光の文化がある。明日のためにも中国古来の名を守るべきだという配慮からだった。
しかし、その日本は米国に負けて最下位ランクの国にされた。途端に朝鮮は手のひら返し。今は強くなった中国風の名に戻って、創氏改名は日本に強制されたの何の。分かりやすい国ではある。


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