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加速装置

Wikipediaより

加速装置(かそくそうち)は、サイボーグ、アンドロイドなど架空の人型機械体に搭載される、架空の機体制御システム。機体制御知能の知覚・思考・運動速度をモード切替によって高速化する機構。日本では石ノ森章太郎の漫画『サイボーグ009』に登場するものが最も有名で、日本における知名度はこの作品によるところが大きい。



【小説に登場する加速装置】

人間の反応速度を加速するというアイデアが使われた最も古いSF作品は、H・G・ウェルズの短編小説『新加速剤』である。ただし、この作品では加速能力を得るために薬物が使われる。

水滸伝に登場する梁山泊の好漢の一人戴宗は足にお札を貼ることで一日五百里を走って移動でき、戴宗にお札を貼ってもらえば同行している一般人にも同じ能力が使えるようになる。もっとも、お札という手段ゆえに戴宗及びその同行者しか使えず、戴宗に持たせた文書に間違いがあった際には追いつける者がおらず梁山泊軍が収拾のため出動する騒ぎとなった。

機械としての加速装置が初めて登場したのは、アルフレッド・ベスターの小説『虎よ、虎よ!』(1956年、日本語訳は1964年、中田耕治訳)である。宇宙空間に置き去りにされた主人公が、置き去りにした者たちへの復讐に立ち上がるという物語であり、復讐のための武器の一つとして、主人公が自らの体に加速装置を埋め込む。この物語では、奥歯に隠されたスイッチで装置を起動するなど、その後の『009』におけるスタイルの原型が見られる。

【『サイボーグ009』に登場する加速装置】

加速装置のスイッチは奥歯の内側に設けられ、舌によりこれを操作する。ブラックゴースト製ハイエンド戦闘サイボーグの基本装備の一つで、構想も最も早く、最初の実験体である002(ジェット・リンク)が既に最初期型を搭載している。その有効性が認められ、標準装備モデルの試作体である009(島村ジョー)以降に改造されたサイボーグ体はほぼ全機これを標準搭載し、その上で各機体に特徴的な装備を持たされている。

加速装置の使用中、使用者の体感では、世界がゆっくり動く、あるいはほぼ静止し、「加速」に応じて音は低音域にシフトする(色覚への影響が演出されたことはない)。周囲から見て加速された機体の運動は目にも留まらぬ速度となり、瞬時に移動したかに見えることもある。発する音声は可聴域を超えて超音波帯にシフトする。そのため、加速中の個体との意思疎通は音声会話ではなく内蔵無線機あるいはテレパシー(001の中継による)によって行われている。

基本的に時間を操作するテクノロジーではないため、使用によって加齢が進むことはない。加速装置そのものの使用制限は時間、回数共に特に設定されていないが、「加速」中の機体は基本的に超高速高負荷運動を行っているため、エネルギーと各部機構を急速に消耗し、放熱が追いつかず過熱する(戦闘用でない服を着ていた場合、空気との摩擦熱も加わって燃えてしまうほどである)。そのため機体の連続高負荷限界が加速行動を制限し「加速装置の使用限界」と俗称される。加速モードに入ったまま静止などの緩慢な動作をしている分には、この制限はいくらでも伸びて行く。

加速装置の基本コンセプトとしては、機体の高出力を生かした高速・高機動行動を行わせる際に、特殊な訓練を要さず機体の制御精度を確保するため、何らかの方法(補助電脳の援用、もしくは完全スイッチング)で思考速度を上げる機構と機体の出力リミッタとを連動させたものと考えられる。原作漫画には、加速装置を起動することにより通常モードでは壊せなかった隔壁を破壊して脱出するシーンを、運動方程式を引用して「高速で衝突すると強い力になる」と解説したエピソードがある。しかし、本来は高速で衝突することで強い衝撃を発生する以前に、高出力を発揮して高加速度を得る必要があるので、単純に加速装置の起動によって開放された出力による物理破壊、と理解してなんの差し支えもない。

アニメ版『スカルマン』によって示唆されたところによれば、古代の遺物であるスカルマスクに加速装置らしき機構が内蔵されていた。しかし装着者が生身であるため、使用可能時間はきわめて短く、肉体に重度の損傷を被るというデメリットが存在する。これをサイボーグ化することで克服したのが、ブラックゴースト首領のスカールであり、その再現装置が後の00シリーズサイボーグへと受け継がれたとされている。

加速装置の演出上の問題

加速装置は時間を操作するものではないため、加速中の物体に対する物理法則は通常と同じものが適用される。従って平面の走行は加速できても、何らかの推進装置を用いない限り、重力下での上下動を加速することは出来ない。具体的には飛び降りた場合の自由落下速度は変わらないし、跳躍を加速することも出来ない(初速を上げると目標点を通り過ぎて高く跳んでしまう)。従って、加速中の機体が全方向に高速に運動するありがちな描写は、壁や天井などの足場がない限りは基本的にあり得ない。加速者は加速に応じて重力加速度が減じていると感じ、具体的には6倍速の状態で月面上に等しい体感と運動になるはずである。

そのため実用上、上下動にも推進器(と逆噴射のブレーキ)を用いることの出来る002のコンセプトが、加速装置を搭載する高速機動戦用の機体設計としては正解であり、009のような加速装置のみの搭載(「黒い幽霊」基地脱出の際のギルモアの発言によれば、002ほどではないが多少の飛行能力はある)は、出力制御の面はともかく、開けた場所での高速機動戦においては大きな制限を課せられる。具体的には、跳んだ瞬間に投げ上げられた石同様に狙いやすい的になってしまうため、上下動に関しては何らかの工夫が必要と思われる。逆に極端に前傾したマンガ的な走行姿勢には、空気抵抗を減らすなどの観点から鑑みても必然と根拠が与えられる。そのようにして、脚力のベクトルを上より前に多く振り向けないと、月面跳びよろしくぴょんぴょん飛び上がってしまうからである。


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