神のこうき 和歌体十四年本(山澤本・37)



  この世ハ本元なるハ泥の海  元なる神ハ月日様なり

  それよりも月様先へ国床を  見定め付けて日様に談じ

  それ故にくにとこたちの命様  この神様は元の親なり

  これからに世界拵ゑ人間を  拵え様と相談決まり

  人間を拵えるには其々の  道具雛形見出す模様を

  見澄ませば泥海中に見えてある  うを(魚)とみい(巳)とが混じりいるなり

  このうをハ顔は人間身体にハ  鱗なしなる人間の肌

  それ故に人魚と言ううをなるぞ  見澄ますところ一筋なるの

  心見て承知をさして貰い受け  これに仕込むる道具なるのハ

一〇  見澄ませば鯱ほことて偏なるの  勢い強きこのせいをみて

一一  貰い受け喰てしもをハはこの者の  心味わい引き受けなして

一二  男の一の道具に仕込みあり  人間なるの骨の守護

一三  このうをにくにとこたちが入込んで  夫婦始め人間の種

一四  それ故に神名を付けてだいじんぐ(大神宮)  これなる神ハいざなぎの神

一五  この神ハ何処に居るとな思うなら  当年巳の十六才

一六  存命で御座(おわ)しますなりこの神ハ  元の屋敷の一の神なり

一七  みい(巳)様は白ぐつなとて肌合いハ  人間なるの如くなるなり

一八  その心真直ぐなるを見定めて  これを引き寄せ承知をさして

一九  また他を見澄ますれゑば亀がいる  この亀なるは皮強くにて

二〇  踏ん張りも強くてこけぬこの者を  承知をさして喰てしまうなり

二一  その心味ハいを見ておなごふの  一の道具に仕込み給いて

二二  みい(巳)様へ日様心入込んで  夫婦始め人間なるの

二三  苗代(なわしろ)に使こふたこれで一の神  いざなみの神伊勢では外宮

二四  この神ハ人間なるの元の親(をや)  この親様(をやさま)はどこに御座ると

二五  思うなら当年巳の八十と  四才にてこそ山辺の郡り

二六  庄屋敷(しょやしき)中山氏(なかやまうじ)と言う屋敷  存命にてぞ御座しますなり

二七  現れて御座しますなりこの親ハ  この世にいる人間の親

二八  また亀ハ人間の皮つなぎにも  使ふた道具これに神名を

二九  くにさづちこの神様は親さまの  体内篭り抱きしめ御座る

三〇  今年から三十年経ちたなら  名あハたまひめ元のやしきへ

三一  連れ帰りその上なるハいつまでも  万(よろづ)たすけの守護下さる

三二  つきよみハ鯱ほこなりこれなるハ  人間骨の守護ふの神

三三  この神は当年巳の六十と  一才にてぞ現れ御座る

三四  くもよみは鰻なるなりこの神ハ  人間の食い飲みの守護神(かみ)

三五  この神ハ当年巳の五才にて  存命にてぞ御座しますなり

三六  かしこねハ鰈なるなりこの神は  人間息の守護ふの神

三七  この神は当年巳の八才で  存命にてぞ御座しますなり

三八  たいしょく天の命はふぐなるぞ  このもの心味わいをみて

三九  人間の死に生きの時縁を切る  これはこの世のはさみ(鋏)なる神

四〇  この神ハ当年巳の三十と  二才にてこそ御座しますなり

四一  をふとのべ食物(じきもつ)の神これ神ハ  黒ぐつなとて引出しの神

四二  この神は当年巳の十六  存命にてぞ御座しますなり

四三  人間の魂なるハ泥海に  いたるどじょう(泥鰌)の心みて

四四  皆の者承知をさして貰い受け  く(食)てその心味わいをみて

四五  この八つ人間魂道具なり  これに皆々神名をつけて

四六  人間の子数は九億九万人  九千九百九十九人や

四七  この年(ねん)を経ちたるならば因縁の  元の屋敷へ連れて帰りてぞ

四八  陽気なる遊山遊びをさしますと  月日様より約束を成し

四九  今ここで元の神々人間で  皆存命で現れている

五〇  これまでハこの親様へ出るまでは  我が身体あハ我が物なると

五一  思ていた心違いやこの度ハ  親様よりの教えを聞いて

五二  初めして真実心誠ふと  思う心ハ家内残らず

五三  かりもの(借物)ハ目潤いと温みいと  皮繋ぎいに芯の骨なる

五四  飲み食いや出ゑ入りなるも息なるも  これ皆神のかりものなるぞ

五五  この事を疑う者ハ更になし  これ疑えば御利益薄し

五六  かりものを誠真実思うなら  何叶わんと云う事ハ無し

五七  このやしき人間始め元の地場  ここハこの世の親里(おやざと)なるぞ

五八  この世ふの元の屋敷の因縁で  元の道具を生まれ御座るで

五九  それをばな見澄まし給え四十  五年以前に天下りあり

六〇  日々にお話しありたその事を  詳しく筆に記すものなり

六一  人間の一の道具は亀なると  鯱ほことふこれ身の内へ

六二  これよりも九億九万と九千人  九百九十九人子数を

六三  この地場で三日三夜(よさ)に宿し込み  三年三月留まりありて

六四  これよりな大和の国の奈良・初瀬の  七里のあいだ七日かかりて

六五  産み降ろし残る大和ハ四日にて  産み降ろしありこれでかみがた(神館)

六六  山城に伊賀・河内いと三国に  十九日にて産み降ろしあり

六七  そのあとは四十五日他なるの  残る国々産み降ろしあり

六八  これ故に七十五日帯や中  産み降ろしたる地場ハ宮々

六九  人間は五分から生まれ五分五分と  成人をして三寸にてハ

七〇  果てましていざなぎ様ハこれにてぞ  おすぎましますこのあとなるハ

七一  いざなみのみこと様なりその腹に 一度教えたこの守護で

七二  また親に元の人数宿り込み  十ふ月経ちた事なるならば

七三  このにん(人)も五分から生まれ五分五分と  成人をして三寸五分で

七四  果てまして又もや同じ胎内に  元の人数三度宿りた

七五  この者も五分から生まれ段々と  四寸なりてまた果てました

七六  その時にいざなみ様も喜んで  にいこり笑てもふこれからハ

七七  五尺の人にハなると思召し  お隠れましたその年限は

七八  この年は九十九年の間なり  三度ながらも九十九年や

七九  二度目いの産み降ろしたる場所ふは  墓所(はかしよふ)なり三度目いハ

八〇  三原(はら)やそこで一宮二墓なり  三度三原これまいりしよ(詣所)

八一  これよりハ鳥獣(けだもの)や畜類に  八千八度生まれ代ハりて

八二  それ故に人なる者は何なりと  真似を出来ます事であるなり

八三  この間経ちたるならバその後ハ  月日様よりまた御守護で

八四  猿なるを一人(いちにん)残りこれなるは  くにさづち様この腹にてぞ

八五  人間を男五人とおなごふを  五人と都合十人ずつ

八六  宿(やど)まりてこれも五分から生まれ出て  八寸の時水土(みずつち)分かり

八七  一尺八寸の時海山も  天地日月(じつげつ)分りかけたり

八八  一尺八寸までは一腹に  十人ずつ生まれ出るなり

八九  これよりは三尺まで一腹に  男一人におなご一人と

九〇  二人ずつ生まれ出たなりこの人を  三尺にて物を言いかけ

九一  これ故に今人間も三歳で  物も言いかけ知恵も出けます

九二  これよりな今においても一腹に  一人ずつと定まり成りし

九三  この人を五尺なるに海山も  天地世界も皆出けました

九四  水中(みずなか)を放れ出まして地の上に  上がりましたるその時までに

九五  成人に応じじき(食)もつ立毛も  不自由なきよふ与えあるなり

九六  段々と食もつにてハ食い廻り  唐天竺へ上がり行くなり

九七  人間を授けた神の証拠は  をび(産)や一條現れてある

九八  この話し宿り込むのも月日様  生まれ出るのも月日御苦労

九九  産む時の守護下さる神様は  大食天これなる神ハ

一〇〇  胎内の縁切る神でほふけ(法華)様  をふとのべの神様なるハ

一〇一  産む時に引き出しの神真言(しんごん)で  生み出した後しまい繋ぎハ

一〇二  くにさづちこの神様は禅宗(ぜんしゆ)で  この三神(さんじん)ハあつけん明王(みよふ)

一〇三  この三神をびや一切御苦労で  をびや許しは腹帯入らず

一〇四  もたれ物七十五日この間  毒忌み要らずこのさんしき(産式)を

一〇五  許しあり常の身体で汚れなし  をびや許しはこの屋敷で

一〇六  許し出すこれハこの世の人間を  始め掛けたる親の屋敷で

一〇七  この許し三千世界この世ふに  他にあるまい生まれ故郷

一〇八  人間を宿し込みたる屋敷なる  証拠現すたすけ道明け

一〇九  人間に病と言うてなけねども  心違いの道がある故

一一〇  この道は凡夫心に八ツあり  欲しい惜しいと可愛い憎いと

一一一  恨めしと腹立ち欲と高慢と  これが八ツの心違いや

一一二  この違い身の内なるの悪しきいの  譬え話しの胸のほこり(埃)や

一一三  この埃積り重なるそれ故に  病悩みも憂い災難も

一一四  何もかも身の内守護神様の  心治しの意見立腹

一一五  一れつに天りん様を念じるハ  八つの埃十五才より

一一六  今までに埃付けたと思う事  心真実さんげ(懺悔)を致し

一一七  埃さいすみやか洗た事ならば  病の根へハ切れてしまうで

一一八  他なるのよろづたすけも同じ事  家内残らず心澄まして

一一九  願うなら家内睦まじ人間を  互いにたすけ心あるなら

一二〇  この心神様より見分けして  よろづたすけやご利益深く

一二一  この世ふも人間なるも出けたのは  月日様より御守護ふなり

一二二  この元を知りたる者ハ更になし  天ハ月様地いハ日い様や

一二三  この世界天地日月(じつげつ)同じ事  地いと天とは実の親なり

一二四  父母(ちちはは)と云うのハ天地夫婦や  南無と云うのも同じ事なり

一二五  後なるハ道具衆なり人間の  五体残らず神の借物

一二六  神様の借物なるハ一に眼(がん)  これハ月様借物なるぞ

一二七  身の内の温み一切日様の  借物なるやこれ南無と云う

一二八  皮つなぎくにさづちなる神様の  借物なるぞ芯なる骨ハ

一二九  つきよみのみこと様の借物や  これで阿弥(あみ)なり飲み食い出入り

一三〇  くもよみのみこと様の借物や  これで五倫と五体と云うなり

一三一  息吹くハかしこね様の借物や  息で物言う風で吹き分け

一三二  これこそハなむあみだぶと六台や  つなる神様大食天

一三三  後なるのをふとのべの神様ハ  立毛引き出し百姓神(かみ)

一三四  この神を寄り集まりて御座るゆえ  方位八方許します

一三五  この内に東三神(さんじん)おなご神  西三神は男神なり

一三六  辰巳いハくにさづち様仏法の  普賢菩薩に達磨弁天

一三七  戌亥ハつきよみの神仏法の  八幡菩薩聖徳太子

一三八  東いハくもよみの神仏法の  文殊菩薩竜王神農

一三九  薬師様薬の守護す医者も  書物文字知恵も御守護

一四〇  未申かしこ根の神仏法の  大日様に法然様と

一四一  丑寅ハたいしょく天仏法の  虚空蔵菩薩妙見様に

一四二  鬼子母神橋詰様と儒来と  縣様とハ同じ方なり

一四三  西こそハをふとのべ様仏法の  不動明王に弘法大師

一四四  この屋敷人間創め元の神  御座(おわ)します故よろづたすけを

一四五  この世ふを創めてからに今までハ  このたすけをバ出けぬ事から

一四六  これまでハ医者薬も人間の  修理肥にて拵へありた

一四七  これからハ医者薬も呪(まじな)いも  拝み祈祷もいらん事やで

一四八  神々の拝み祈祷や占いや これ人間の恩の奉じ場

一四九  神様のお話し聞いて思案して  真実心叶た事なら

一五〇  何にても叶ハん事はなけれども  心違えば薬飲むなり

一五一  人間ハ死に行くなぞと言うけれど  死に行くやない借物返す

一五二  返すのハ身の内埃積もる故  身の内神が退(しりぞ)きなさる

一五四  この事を着物に譬へ話しする  心のよごれはらさぬ者は

一五四  洗ハずバ着てる事をが出けんから  なんぼ惜しても脱ぎ捨てるなり

一五五  着物でもなんぼよごれてあるとても  水で洗えば着て気がよろし

一五六  人間も心のよごれはろたなら  神も喜び守護下さる

一五七  人間ハ死ぬると云うハ着物ふを  脱ぎ捨てるのも同じ事なり

一五八  神様ハ話しばかりで人間の  心よごれを洗いなさるで

一五九  この話し水と神様同じ事  よごれたるもの洗い澄まする

一六〇  たすかるも心次第や一れつに  早く心を澄ます事なり

一六一  心さいすみやか澄んだ事ならバ  親様よりハすぐにあたゑを


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