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金持商人一枚起請文

中井源左衛門

文化2年(1805)、近江商人の第一人者・初代中井源左衛門が、長い商いの体験から得た人生訓を、浄土宗を開いた法然上人の一枚起請文にならって書き記した。



 諸の人の沙汰し申さるるハ 金溜る人とハ運のある 我は運のなき杯申ハ愚にして大なる誤也 運と申事ハ候ハ否 金持に成らむと思ハば 酒宴遊興の奢を禁じ 長寿を心がけ 始末第一に商売を励むより外に別の仔細ハ候ハ否 貧慾を思ハば先祖の憐みもはずれ 天理にもはずれ候べし 始末と吝(シワキ・けち)の違いあり 無智の輩は同じ事と思えし 吝き光消失ん 始末の光明満ぬれば 十万億土を照らすべし 斯心得て行ひなせる身には 五万十萬の金の出来るハ疑いなし 但し運と申事の候て 国の長者と呼るる事は 一代にては成りがたし 二代三代も続いて善人の生れ出る也 それを祈候には陰徳善事を成さんより 全別儀作らハ否 後の子孫の奢を防んため 愚老の所存を書記し畢
 
  文化二丑正月                   九十翁中井良祐識


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