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仙台空港でのバイデン副大統領の演説

ジョセフ・ロビネット “ジョー” バイデン・ジュニア (Joseph Robinette "Joe" Biden, Jr.)

2011年8月23日。バイデン副大統領はアメリカ合衆国の第47代副大統領。



 ありがとうございます。(村井嘉浩・宮城県)知事、どうもありがとうございます。デラウェア州にもいらしてください。素晴らしいところです。この中に私の故郷デラウェア州へ行く予定だった生徒さんは何人いますか。手を挙げてください。今からでもぜひいらてください。孫娘たちが楽しみに待っています。(注 宮城県岩沼市は毎年10人程度の中学生を研修目的でデラウェア州に派遣している。2011年は3月12日に出発予定だったが、前日に地震が発生したため出発できなくなった)
 
 知事の温かいご紹介の言葉に感謝します。あれほどすさまじい破壊と悲劇を経験しながらも、あのような勇敢さ、勇気、意思、無私無欲さを世界中に示したこの地を訪問する機会を得て、私は光栄に思うと同時に身が引き締まる思いがします。
 
 日本人の本質――その意思、決意、同胞愛――を世界が理解する出来事がこれまでにひとつでもあったとすれば、それは皆さんが経験せざるを得なかったこの大惨事です。私がここへ来たのは、できる限りの援助を約束するためだけでなく、オバマ大統領が、私が、そして米国民がいかに日本人の人間性に敬意を抱いているかを伝えるためです。
 
 3月11日に地震と津波が発生した際には、全世界が日本を思い、日本のために祈りました。日本は他国から必要とされている時に必ず支援してきた平和を愛する偉大な国だからです。時々思うのですが、日本の人々は米国や他の国々に感謝の意を表わす一方で、自分たちが常に災害の現場で支援したことを忘れてしまうようです。他国が自然の猛威による被害を受けた時、日本の皆さんは必ず支援に来てくれました。

 ですから皆さんがこれまで耐えてきた苦難、特に亡くなった方々のご家族、友人、大切な方々に対し、私だけでなくオバマ大統領や全米国民から心から哀悼の意を表したいと思います。

 私がここへ来たもうひとつの目的は、日本人の素晴らしい精神をたたえるためです。皆さんは自然の威力に匹敵する力の存在を世界に思い出させてくれました。それは人間の精神の本質が持つ力であり、特に私たちが最大の試練に直面し団結した時に、自然の力と同じくらい大きな威力を発揮します。
 
 私は今日これから、この震災で家を失った多くの世帯が住む仮設住宅を訪問する予定です。ぜひ被災した方々にお会いし、お話を伺いたいと思っています。そして米国はここにとどまると伝えたいと思っています。皆さんが私たちの支援を望む限り、私たちはここで支援を続けます。
 
 しかし私は、日本人の有名な勤勉さと不屈の忍耐力にはこの災害と同じくらい大きな力があることをすでに知っています。
 
 東北の被災地では、隣人同士も見知らぬ人同士も生きるために不可欠な作業を分担しました。例えば場所を問わず食料を集める、携帯電話が不通であっても掲示板、無線、人を介して連絡を取り合う、大破したモーターボートや自動車のタンクから燃料を集めるなどの作業です。
 
 同じ精神は日本中で見られます。その一例が、最近米国民の心をとらえた日本の素晴らしい若きゴルファー、石川遼さんです。遼さんがあの堂々としたスイングを見せている時、彼が獲得賞金の全額を被災地の復興のために寄付すると約束したとアナウンサーが告げたのです。
 
 また私が聞いた話では、中学2年生に英語を教えているある先生は、学校が再開した時生徒たちにこう言ったそうです。「私たちの多くは一瞬にして家や財産を失いました。今大事なのは1歩を踏み出すことです」
 
 アイルランド系だった私の母は、妻と娘を亡くした時など私が最も困難な状況にある時に、よくこう言いました。「ジョーイ、どんなに悪いことが起きてもよく見れば良いことがあるよ」。(そのような状況にある時に)良いことを探すのは難しく、母が言ったことは受け入れがたくもありますが真実です。そして日本人のDNAには、それが真実であるという信念が刻まれています。

 あの震災から5カ月たち、まだ遠い道のりが待ち受けていることは間違いありませんが、一方で学校や経済活動の再開、住宅の再建など、皆さんはこれまでに驚異的な前進を遂げてきました。
 
 ここ仙台で前進に向け最初の大きな一歩を踏み出したのがこの空港でした。3月11日にこの空港ビルは浸水し、もう少しでこの2階に届くところまで水が迫ってきたと聞いています。水が引くと、この建物は難を逃れたものの行き場のなくなった1000人以上の疲れ切った人々の避難場所になりました。
 
 今この空港に立ち――自衛隊幹部の皆さんにもお話ししましたが――米軍が自衛隊と協力する名誉を与えられたことを誇りに思っています。地震から1週間たたないうちに滑走路を再開させ、多くの救援隊員および200万トン以上の人道支援物資の到着が可能になりました。
 
 また地震からわずか1カ月後の4月13日には、民間航空機の運航が再開しました。実際、震災対応について、あまり報道されていないけれども注目すべき点のひとつとして、日本が通常通りであり続けてきたことがあります。日本は今も通常通りです。

 米国民も日本を援助できたことを誇りに、そして光栄に思っています。皆さんが望む復興支援を今後も続けることを誇りとしています。理由は簡単です。政府間の関係や米軍と自衛隊の関係が理由ではありません。米国民が日本国民に心から親愛の気持ちを感じているからです。私の故郷デラウェア州を訪問する予定だった生徒さんたちは、実際に来てみればそれが分かります。それを感じ、理解できます。もうひとつの理由は、もし逆の状況になったならば、皆さんが私たちを助けてくれると分かっているからです。皆さんはできる限りのことをしてくれるでしょう。ハリケーン・カトリーナの時、またパキスタンなど世界各地で災害が起きた時のように。
 
 だからこそ米軍は地震発生後何時間もたたないうちに、「トモダチ作戦」という米国史上最大の人道救援活動を開始しました。そのために米国民を説得する必要は全くなく、自発的に始まりました。日本国民に対する親愛の気持ちから始まったのです。日米のパートナーシップと同盟関係はこうした基盤の上に築かれています。

 しかしこれは単に危機に対応した一時的な取り組みではありません。日本の景気回復に向けた米国の継続的な援助も同様に重要です。日本だけでなく米国にとっても重要です。日本が通常通りの業務を続け、成長と繁栄を続けることは米国にとって重要です。世界有数の経済大国であり、世界史上有数の強く活力に満ちた経済を持つ2つの国が力を合わせれば、達成できないことはないと私たちは考えています。強調したいのは「力を合わせる」という点です。
 
 4月にヒラリー・クリントン国務長官は、この地域と世界経済との結び付きを深め経済の再活性化を図る幅広い官民パートナーシップの設立を支援するため日本を訪れました。
 
 このパートナーシップは実質的にトモダチ作戦に続くものとして、教育や革新的なビジネス・プロジェクトを支援する奨学金や補助金制度など、さまざまな方法により日本の復興を支援するための官民の友好イニシアチブの形で具体化しつつあります。これは明日のリーダーたちへの投資であると私たちは考えています。
 
 私たちは日米の国同士、企業同士、市民社会団体同士、公務員同士の協力の強化に努めています。これには日本と姉妹都市関係を結んでいる180以上の米国の地方自治体も含まれています。
 
 例えば(8月8日からの)2週間、東北から16人の若い野球選手が米国を訪問しました。これは野球殿堂入りしている私の友人カル・リプケンが、国務省の日米スポーツ交流プログラムの一環として主催したものです。
 
 友好国であり同盟国である日本に対する米国の関与は緊急時の支援にとどまりません。これは米国にとっての対日関係の重要性とこの地域との深いつながりを反映しています。
 
 米国は太平洋国家であり、それは今後も変わりません。世界経済と国際情勢におけるアジアの役割が拡大するにつれ、米国は今後この極めて重要な地域をますます重視するようになるでしょう。そしてその関係の要となるのは日本です。
 
 オバマ大統領は大統領就任後初のアジア訪問で東京を訪れた時、次のように語っています。「米国は大西洋沿岸のいくつかの港湾都市から始まった国かもしれませんが、何世紀にもわたり太平洋国家でもありました。アジアと米国はこの大洋により分断されているのではなく、つながっているのです」
 
 ですから2年半前に就任した時、オバマ大統領と私は、半世紀以上もこの地域の安全保障と繁栄の基盤となってきた日本とのパートナーシップと同盟関係を強化すると決意していました。
 
 この地域の国々は繁栄し成長しており、私たちもそれを望んでいます。そうした成長を可能にしたのは、日本と米国が過去50年間にわたり提供してきた安定と揺るぎなさです。
 
 共通の利害、そして民主主義の理想、人権の尊重、法の支配などの共通の価値観に基づくこの同盟関係は、日本と米国だけでなく、率直に言ってアジア太平洋地域全体の安全保障と繁栄の確保に不可欠な役割を常に果たしています。
 
 私たちは、この同盟関係が21世紀の課題に今後も効果的に対処できるようにするために力を尽くしています。この目的のため、今後日本との安全保障面での協力を強化する努力の一環として、6月に日本の防衛大臣および外務大臣と米国の国防長官および国務長官が4年ぶりにいわゆる「2プラス2」会合で話し合うことができ、私はうれしく思います。
 
 日米のパートナーシップは繁栄し続けます。日本は地震と津波からの復興とともに、引き続き国際情勢で重要かつ積極的な役割を果たします。
 
 地球上のどこでいかなる災害が発生しようとも、復興支援の提供、救援隊員の派遣、多額の寄付、必要な援助物資の提供で、日本は常に最も早く行動した国のひとつでした。そのことを私たちは忘れません。
 
 インド洋の津波で地域の多くの住民が亡くなったり家を失った時も、ハイチのポルトープランスが地震で破壊された時も、パキスタンが洪水で大きな被害を受けた時も、ハリケーン・カトリーナが米国のメキシコ湾岸に壊滅的な爪痕を残した時も、今挙げなかったその他無数の災害の時にも、日本の人々は支援の要請を待たずに援助の手を差し伸べました。
 
 しかし日本が困難に直面している今、米国は必要な限り日本を支援していきます。本日私がここを訪問したのは、同盟国から同盟国へ、友人から友人へのその約束をさらに強固にし、重ねて言明するためです。
 
 最後にもうひとつ申し上げます。世界には、米国は衰退し、日本は復活できないと考えている人たちがいます。しかしそれは見当違いです。両国はいずれも成長と繁栄を続けます。そして共に、世界の景気回復を可能にする原動力として大きな役割を果たしています。
 
 皆さんの友情にお礼を申し上げます。これまで支援する名誉を与えてくれたことにお礼を申し上げます。日米関係の真の基盤となっている両国民に神の恵みがありますように。
 
 どうもありがとうございました。


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