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優波離経(ウパーリ・スッタ)

仏教

ニガンタ派の罰の教えと仏教の業の教え



目次

第一章 |  第二章 |  第三章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、ナーランダにある、
パーヴァーリカンバ林に、止まっておられた。
そこに、ディーガタパッシンが訪れて、言った。

「ゴータマよ、どれが、一番、重たい罪か。
身の罪か、口の罪だろうか、意の罪だろうか。
最も重い罪とは、身の罪であると、私は考える。」

「タパッシンよ、どれが、一番、重い業か。
身の業か、口の業だろうか、心の業だろうか。
最も重い業とは、心の業であると、私は考える。」

「ゴータマよ、どれが、一番、重たい罪か。
身の罪か、口の罪だろうか、意の罪だろうか。
最も重い罪とは、身の罪であると、私は考える。」

「タパッシンよ、どれが、一番、重い業か。
身の業か、口の業だろうか、心の業だろうか。
最も重い業とは、心の業であると、私は考える。」

「ゴータマよ、どれが、一番、重たい罪か。
身の罪か、口の罪だろうか、意の罪だろうか。
最も重い罪とは、身の罪であると、私は考える。」

「タパッシンよ、どれが、一番、重い業か。
身の業か、口の業だろうか、心の業だろうか。
最も重い業とは、心の業であると、私は考える。」

タパッシンは、三度まで、この論点を確かめた。

 

第二章

タパッシンは、これに満足し、立ち去った。
そして、彼の師匠である、ニガンダ派の開祖、
ナータプッタを訪れて、この事を総て報告した。

これを聞いた、ウパーリが、このように言った。

「尊師よ、タパッシンは、良く遣りました。
心の罪など、どうして、身の罪に優りますか。
身の罪が、最も重いのは、当たり前のことです。」

「尊師よ、次は、私が行って参りましょう。
この論点について、二度と立てないぐらいに、
沙門ゴータマを、叩きのめして、遣りましょう。」

ウパーリは、仏陀を訪れて、このように言った。

「ゴータマよ、どれが、一番、重たい罪か。
身の罪か、口の罪だろうか、意の罪だろうか。
最も重い罪とは、身の罪であると、私は考える。」

「ウパーリよ、どれが、一番、重たい業か。
身の業か、口の業だろうか、心の業だろうか。
最も重い業とは、心の業であると、私は考える。」

「たとえば、これを、どのように考えるか。
殺そうとして、殺す方が、重い罪になるのか。
殺そうとせずに、殺す方が、重い罪になるのか。」

「ゴータマよ、我が師の、ナータプッタは、
殺そうとして殺す方が、重い罪になると説き、
殺そうとせずに殺す方は、軽い罪になると解く。」

「ウパーリよ、これは、矛盾ではないのか。
身の罪を重く説き、裏で、心の罪を重く解く。
ナータプッタは、実に、口の罪を積んでいよう。」

「たとえば、これを、どのように考えるか。
我が為を思い、殺す方が、重い罪になるのか。
他の為を想って、殺す方が、重い罪になるのか。」

「ゴータマよ、我が師の、ナータプッタは、
我が為を思い殺す方が、重い罪になると説き、
他の為を想って殺す方は、軽い罪になると解く。」

「ウパーリよ、これは、矛盾ではないのか。
身の罪を重く説き、裏で、心の罪を重く解く。
ナータプッタは、実に、口の罪を積んでいよう。」

「たとえば、これを、どのように考えるか。
善き心の人を、殺す方が、重い罪になるのか。
悪しき心の人を、殺す方が、重い罪になるのか。」

「ゴータマよ、我が師の、ナータプッタは、
善き心の人を殺す方が、重い罪になると説き、
悪しき心の人を殺す方は、軽い罪になると解く。」

「ウパーリよ、これは、矛盾ではないのか。
身の罪を重く説き、裏で、心の罪を重く解く。
ナータプッタは、実に、口の罪を積んでいよう。」

法悦が湧き上がった、彼は、このように言った。

「ああ、これは、とても、妙なる教えです。
さながら、暗闇の中で、灯火を掲げるように、
仏陀は、私の見えない目に、見せてくれました。」

「仏陀よ、これより、この命が尽きるまで、
私は、心から、仏と法と僧に帰依し奉ります。
三宝の帰依者として、どうか受け容れて下さい。」

 

第三章

ウパーリが、仏弟子となったことを聞いて、
ナータプッタは、彼の家の中まで押し掛けた。
そして、怒り狂って、彼に、このように叫んだ。

「ウパーリよ、愚か者め、気でも狂ったか。
説き伏せようとして、説き伏せられて来たか。
おまえは、ゴータマの幻術に惑わされただけだ。」

「愚か者を、酔わせることは、出来ますが、
明らかな者を、酔わせることは、出来ません。
確かに、汝の術に酔わされた、私は愚かでした。」

「仏の法は、覚ませることが、出来ますが、
外なる教えは、覚ませることが、出来ません。
確かに、仏の法に覚まされた、私は幸いでした。」

「一度、目が覚めれば、二度と酔えません。
ナータプッタよ、どうぞ、お帰り下さいませ。
愚か者に説く法は、もはや、必要を感じません。」

このように応えると、彼は、このように唄った。

「智慧があり、功徳があり、明行足である、
偉大なる導師に、賢者は、心から帰依し奉る。
至高の存在よ、弟子として、受け容れて下さい。」

「応供であり、善逝であり、無上士である、
偉大なる仏陀に、賢者は、心から帰依し奉る。
無比の存在よ、弟子として、受け容れて下さい。」

「如来であり、覚者であり、世間解である、
偉大なる世尊に、賢者は、心から帰依し奉る。
無上の存在よ、弟子として、受け容れて下さい。」

聞くに耐えない、ナータプッタは、血を吐いた。


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