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削減経(サッレーカ・スッタ)

仏教



目次

第一章 |  第二章 |  第三章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、サーヴァッティの、
アナータピンディカ園に、止まっておられた。
そこに、チュンダが訪れて、このように尋ねた。

「尊師よ、世の中には、種々の誤った見解、
世界に関する、誤った観念が存在しています。
これらの見解を、捨てることは可能でしょうか。」

「チュンダよ、比丘は、八つの段階を経て、
誤った世界観を離れ、正しい世界観に達する。
それでは、この八つの段とは、如何なるものか。」

「第一の段とは、思いが有り、考えが有り、
欲を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
しかし、ここは、現状に住しているに過ぎない。」

「第二の段とは、思いが無く、考えが無く、
想を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
しかし、ここは、現状に住しているに過ぎない。」

「第三の段とは、正念が有り、正知が有る
喜を捨てて生じる、大楽を体験する禅である。
しかし、ここは、現状に住しているに過ぎない。」

「第四の段とは、大楽が無く、清浄が有る、
楽を捨てて生じる、清浄を体験する禅である。
しかし、ここは、現状に住しているに過ぎない。」

「第五の段とは、有辺であり、無辺である、
有辺と無辺の対立を越えた、空無辺処である。
しかし、ここは、静寂に住しているに過ぎない。」

「第六の段とは、有識であり、無識である、
有識と無識の対立を越えた、識無辺処である。
しかし、ここは、静寂に住しているに過ぎない。」

「第七の段とは、有我であり、無我である、
有我と無我の対立を超えた、無所有処である。
しかし、ここは、静寂に住しているに過ぎない。」

「第八の段は、非想であり、非非想である、
非想と非非想を越えた、非想非非想処である。
しかし、ここは、静寂に住しているに過ぎない。」

「四つの色界を越え、四つの無色界を超え、
あらゆる想を滅し、滅想受定に入るのである。
そのとき、彼は、迷妄を離れて、智慧に達する。」

 

第二章

「チュンダよ、種々の世界を捉えようとも、
種々の安住に捕われることなく、涅槃に至る。
それでは、この種々の観念は、如何なるものか。」

「第一に、殺生が現れている、世界を見て、
殺生しようと捕らえず、殺生しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第二に、偸盗が現れている、世界を見て、
偸盗しようと捕らえず、偸盗しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第三に、邪淫が現れている、世界を見て、
邪淫しようと捕らえず、邪淫しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第四に、妄語が現れている、世界を見て、
妄語しようと捕らえず、妄語しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第五に、綺語が現れている、世界を見て、
綺語しようと捕らえず、綺語しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第六に、悪口が現れている、世界を見て、
悪口しようと捕らえず、悪口しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第七に、両舌が現れている、世界を見て、
両舌しようと捕らえず、両舌しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第八に、貪欲が現れている、世界を見て、
貪欲しようと捕らえず、貪欲しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第九に、瞋恚が現れている、世界を見て、
瞋恚しようと捕らえず、妄語しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「第十に、愚痴が現れている、世界を見て、
愚痴しようと捕らえず、愚痴しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十一に、邪なる見が現れた、世界を見て、
邪なる見解を捕らえず、正しい見解を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十二に、邪なる思が現れた、世界を見て、
邪なる思惟を捕らえず、正しい思惟を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十三に、邪なる語が現れた、世界を見て、
邪なる言葉を捕らえず、正しい言葉を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十四に、邪なる業が現れた、世界を見て、
邪なる行為を捕らえず、正しい行為を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十五に、邪なる命が現れた、世界を見て、
邪なる生活を捕らえず、正しい生活を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十六に、邪なる進が現れた、世界を見て、
邪なる精進を捕らえず、正しい精進を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十七に、邪なる念が現れた、世界を見て、
邪なる集中を捕らえず、正しい集中を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十八に、邪なる定が現れた、世界を見て、
邪なる禅定を捕らえず、正しい禅定を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「十九に、邪なる智が現れた、世界を見て、
邪なる智慧を捕らえず、正しい智慧を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二十に、邪なる離が現れた、世界を見て、
邪なる解脱を捕らえず、正しい解脱を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二一に、己に対し恥じない、世界を見て、
慚の無い者を捕らえず、慚の有る者を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二二に、他に対し恥じない、世界を見て、
愧の無い者を捕らえず、愧の有る者を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二三に、悪友が現れている、世界を見て、
邪なる交際を捕らえず、正しい交際を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二四に、嫉妬が現れている、世界を見て、
嫉妬しようと捕らえず、嫉妬しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二五に、慳貪が現れている、世界を見て、
慳貪しようと捕らえず、慳貪しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二六に、詐欺が現れている、世界を見て、
詐欺しようと捕らえず、詐欺しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二七に、放逸が現れている、世界を見て、
飲酒しようと捕らえず、飲酒しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二八に、報復が現れている、世界を見て、
報復しようと捕らえず、報復しまいと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「二九に、怠惰が現れている、世界を見て、
倦怠しようと捕らえず、精進しようと捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

「三十に、疑念が現れている、世界を見て、
邪なる疑問を捕らえず、正しい質問を捉える。
そのとき、彼は、輪廻を離れて、涅槃に達する。」

 

第三章

「チュンダよ、自らが沼に嵌っている者が、
他の沼に陥っている者を、引き上げられるか。
引き上げるには、嵌らない事が、不可欠である。」

「第一に、周りを、殺生から救い出すには、
何より、自らが、殺生から引き上がることだ。
殺生に嵌った者は、殺生の世界に引き摺り込む。」

「第二に、周りを、偸盗から救い出すには、
何より、自らが、偸盗から引き上がることだ。
偸盗に嵌った者は、偸盗の世界に引き摺り込む。」

「第三に、周りを、邪淫から救い出すには、
何より、自らが、邪淫から引き上がることだ。
邪淫に嵌った者は、邪淫の世界に引き摺り込む。」

「第四に、周りを、妄語から救い出すには、
何より、自らが、妄語から引き上がることだ。
妄語に嵌った者は、妄語の世界に引き摺り込む。」

「第五に、周りを、綺語から救い出すには、
何より、自らが、綺語から引き上がることだ。
綺語に嵌った者は、綺語の世界に引き摺り込む。」

「第六に、周りを、悪口から救い出すには、
何より、自らが、悪口から引き上がることだ。
悪口に嵌った者は、悪口の世界に引き摺り込む。」

「第七に、周りを、両舌から救い出すには、
何より、自らが、両舌から引き上がることだ。
両舌に嵌った者は、両舌の世界に引き摺り込む。」

「第八に、周りを、貪欲から救い出すには、
何より、自らが、貪欲から引き上がることだ。
貪欲に嵌った者は、貪欲の世界に引き摺り込む。」

「第九に、周りを、瞋恚から救い出すには、
何より、自らが、瞋恚から引き上がることだ。
瞋恚に嵌った者は、瞋恚の世界に引き摺り込む。」

「第十に、周りを、愚痴から救い出すには、
何より、自らが、愚痴から引き上がることだ。
愚痴に嵌った者は、愚痴の世界に引き摺り込む。」

「十一に、周りを、邪見から救い出すには、
何より、自らが、邪見から引き上がることだ。
邪見に嵌った者は、邪見の世界に引き摺り込む。」

「十二に、周りを、邪思から救い出すには、
何より、自らが、邪思から引き上がることだ。
邪思に嵌った者は、邪思の世界に引き摺り込む。」

「十三に、周りを、邪語から救い出すには、
何より、自らが、邪語から引き上がることだ。
邪語に嵌った者は、邪語の世界に引き摺り込む。」

「十四に、周りを、邪業から救い出すには、
何より、自らが、邪業から引き上がることだ。
邪業に嵌った者は、邪業の世界に引き摺り込む。」

「十五に、周りを、邪命から救い出すには、
何より、自らが、邪命から引き上がることだ。
邪命に嵌った者は、邪命の世界に引き摺り込む。」

「十六に、周りを、邪進から救い出すには、
何より、自らが、邪進から引き上がることだ。
邪進に嵌った者は、邪進の世界に引き摺り込む。」

「十七に、周りを、邪念から救い出すには、
何より、自らが、邪念から引き上がることだ。
邪念に嵌った者は、邪念の世界に引き摺り込む。」

「十八に、周りを、邪定から救い出すには、
何より、自らが、邪定から引き上がることだ。
邪定に嵌った者は、邪定の世界に引き摺り込む。」

「十九に、周りを、無智から救い出すには、
何より、自らが、無智から引き上がることだ。
無智に嵌った者は、無智の世界に引き摺り込む。」

「二十に、周りを、魔境から救い出すには、
何より、自らが、魔境から引き上がることだ。
魔境に嵌った者は、魔境の世界に引き摺り込む。」

「二一に、周りを、高慢から救い出すには、
何より、自らが、高慢から引き上がることだ。
高慢に嵌った者は、高慢の世界に引き摺り込む。」

「二二に、周りを、傲慢から救い出すには、
何より、自らが、傲慢から引き上がることだ。
傲慢に嵌った者は、傲慢の世界に引き摺り込む。」

「二三に、周りを、悪友から救い出すには、
何より、自らが、悪友から引き上がることだ。
悪友に嵌った者は、悪友の世界に引き摺り込む。」

「二四に、周りを、嫉妬から救い出すには、
何より、自らが、嫉妬から引き上がることだ。
嫉妬に嵌った者は、嫉妬の世界に引き摺り込む。」

「二五に、周りを、慳貪から救い出すには、
何より、自らが、慳貪から引き上がることだ。
慳貪に嵌った者は、慳貪の世界に引き摺り込む。」

「二六に、周りを、詐欺から救い出すには、
何より、自らが、詐欺から引き上がることだ。
詐欺に嵌った者は、詐欺の世界に引き摺り込む。」

「二七に、周りを、放逸から救い出すには、
何より、自らが、放逸から引き上がることだ。
放逸に嵌った者は、放逸の世界に引き摺り込む。」

「二八に、周りを、報復から救い出すには、
何より、自らが、報復から引き上がることだ。
報復に嵌った者は、報復の世界に引き摺り込む。」

「二九に、周りを、怠惰から救い出すには、
何より、自らが、怠惰から引き上がることだ。
怠惰に嵌った者は、怠惰の世界に引き摺り込む。」

「三十に、周りを、疑念から救い出すには、
何より、自らが、疑念から引き上がることだ。
疑念に嵌った者は、疑念の世界に引き摺り込む。」

これを聞いた、チュンダは、歓喜して実践した。


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