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波梨経(パーティカ・スッタンタ)

仏教



目次

第一章 |  第二章 |  第三章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

仏陀が、マッラ国のアヌピヤーに止まると、
リッチャヴィ族の、スナカッタが遣って来た。
彼は、仏陀の傍らに坐ると、このように言った。

「これから、還俗しようと、考えています。
もはや、ここに、止まるつもりはありません。
何もしてくれなかった、あなたに非があります。」

「スナカッタよ、私の何が悪いと言うのか。」
「あなたは、神通を見せてくれませんでした。
それゆえ、私は還俗を考えざる得ませんでした。」

「神通を見せようと、神通を見せまいとも、
苦悩を滅尽できることに、変わりは無い筈だ。」
「そうです、しかし、見せてくれませんでした。」

「その昔、コーラッカッティヤという名の、
裸の行者が存在したのを、汝は覚えているか。
獣のように、這いずり回り、裸で暮らしていた。」

「ああ、ウッタラカーの町の苦行者ですね。
良く覚えています、私は彼を褒め称えました。
彼ほどの聖者はいない、彼は真の聖者であると。」

「その彼は、腹が膨れ上がって死ぬだろう。
そして、阿修羅の最下層に生まれるだろうと、
私が、予言しておいたのを、汝は覚えているか。」

「ええ、カーラカンジャという修羅ですね。
良く覚えています、私は彼と巡り合いました。
生まれ変わった彼と、私は、墓地で会いました。」

「それより昔、カンダラマスカという名の、
裸の行者が存在したのを、汝は覚えているか。
神に対し七つの誓いを守り、裸で暮らしていた。」

「ああ、ヴェーサーリーの町の沙門ですね。
良く覚えています、私は彼を褒め称えました。
彼ほどの聖者はいない、彼は真の聖者であると。」

「その彼は、まもなく、誓いを破るだろう。
そして、彼の名声は、直ぐに落ちるだろうと、
私が、予言しておいたのを、汝は覚えているか。」

「ええ、ヴァッジの村で起きた事でしたね。
良く覚えています、彼は、誓いを破りました。
妻を娶り、酒を飲み、彼の権威は失墜しました。」

「それより昔、パーティカの子という名の、
裸の行者が存在したのを、汝は覚えているか。
仏陀に対して敵意を抱いて、裸で暮らしていた。」

「ああ、マハーヴァナの町の婆羅門ですね。
良く覚えています、私は彼を褒め称えました。
彼ほどの聖者はいない、彼は真の聖者であると。」

「その彼が、神通で挑んで来たことがある。
彼が日時を決めて、公開の場で挑もうとした。
それを、神通で返したのを、汝は覚えているか。」

「ええ、ヴァッジの村で起きた事でしたね。
仏陀の神通により、彼は動けなくなりました。
約束の所に来る事さえ、彼は出来ませんでした。」

「こうして、わたしは、神通を見せている。
スナカッタよ、それでも、私に非が有るのか。
汝の還俗は、汝の非に拠るものと、知りなさい。」

 

第二章

仏陀が、マッラ国のアヌピヤーに止まると、
リッチャヴィ族の、スナカッタが遣って来た。
彼は、仏陀の傍らに坐ると、このように言った。

「これから、還俗しようと、考えています。
もはや、ここに、止まるつもりはありません。
何もしてくれなかった、あなたに非があります。」

「スナカッタよ、私の何が悪いと言うのか。」
「あなたは、起源を説いてくれませんでした。
それゆえ、私は還俗を考えざる得ませんでした。」

「起源を説こうとも、起源を説くまいとも、
苦悩を滅尽できることに、変わりは無い筈だ。」
「そうです、しかし、説いてくれませんでした。」

「スナカッタよ、梵天による創造説がある。
長い期間の後、欲界と梵天界が破壊されると、
生きとし生ける者は、極光浄天に生まれ変わる。」

「彼らは形だけを持つ、色界の神々であり、
歓喜を食べ物として、長い間、そこに止まる。
しかし、その中で独り、徳が尽きる神が現れる。」

「徳が尽きた神は、光音天から落ちて行き、
誰も生まれていない、梵天界に生まれ変わる。
彼は、他の者が生まれて来ないか、願い続ける。」

「そして、次に、梵天に落ちる神が現れる。
最初の梵天よりも、光音天に長く居たために、
彼の徳は、最初の梵天より、少なくなっている。」

「こうして、二番目に生まれた梵天を見て、
最初の梵天は、私は彼の創造をしたと考える。
二番目の梵天は、私は彼に創造されたと考える。」

「こうして、大梵天と梵衆天の差が生じる。
光音天に於いて、身分の違いが無かったのに、
梵天界に於いては、身分の違いが生まれるのだ。」

「私は、世界の起源について、知っている。
知っているばかりか、それ以上を知っている。
それでいて、なお、それに言及することはない。」

 

第三章

「スナカッタよ、天人による創造説がある。
彼らは、天人界に於いて、享楽に耽っている。
楽に囚われるため、徐々に、徳が尽きてしまう。」

「徳が尽きた者は、天人界から落ちて行き、
天より苦しみが多い、人間界に生まれ変わる。
彼らは、苦しみを覚え、出家して天を思い出す。」

「天を思い出して、このように彼は考える。
楽に囚われた天人は、いつかしら地に落ちて、
楽に囚われない天人は、いつまでも天に止まる。」

「スナカッタよ、修羅による創造説がある。
彼らは、修羅界に於いて、闘争に耽っている。
苦に囚われるため、徐々に、徳が尽きてしまう。」

「徳が尽きた者は、修羅界から落ちて行き、
天より苦しみが多い、人間界に生まれ変わる。
彼らは、苦しみを覚え、出家して天を思い出す。」

「天を思い出して、このように彼は考える。
苦に囚われた修羅は、いつかしら地に落ちて、
苦に囚われない修羅は、いつまでも天に止まる。」

「スナカッタよ、無想有情の創造説がある。
彼らは、無想定を修めて、無想に陥っている。
無に囚われるため、徐々に、徳が尽きてしまう。」

「徳が尽きた者は、無想天から落ちて行き、
天より苦しみが多い、人間界に生まれ変わる。
彼らは、苦しみを覚え、出家して無を思い出す。」

「無を思い出して、このように彼は考える。
この世は、何も無い世界、無から生じている。
この世界は、必然に生じず、偶然に生じている。」

「こうして、わたしは、起源を説いている。
スナカッタよ、それでも、私に非が有るのか。
汝の還俗は、汝の非に拠るものと、知りなさい。」

「いいえ、あなたは、解脱に到達した者は、
すべてを不浄と見ると、説いた事があります。
すべてが清浄に見えると、説くのが正しいです。」

「一元に至った者は、清浄にも、不浄にも、
どちらにも見える、それが解脱の境地である。
その解脱に至るには、不浄と捉えるのが正しい。」

このように、仏陀は、様々に説き明かしたが、
スナカッタは、戒律を捨ててしまったのである。


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