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因縁相応 第四十七章

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あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、ラージャグリハの、
カランダカニヴァーパに、止まっておられた。
そこで、多くの賞賛と、供養を受けておられた。

一方、同じ処に住む、遊行者のスーシマは、
仏陀と比べて、布施が少ない事に悩んでいた。
そこで、一時的に出家し、法を盗もうと考えた。

こうして、スーシマは、出家が許されると、
解脱したと見とめられる、弟子達に近づいて、
恭しく挨拶を交わした後に、このように尋ねた。

「尊者方は、解脱を果たされたそうですが、
経典に説かれている、六つの神通を得た上で、
しっかり、解脱を果たされているのでしょうか。」

「友よ、我々は、智慧により無明を越えた。
すなわち、智によって、慧解脱したのであり、
定により貪欲を越え、心解脱したわけではない。」

この答について、納得が行かなかった彼は、
仏陀の居る処を訪ねて、これについて尋ねた。
すると、仏陀は、彼に対し、このように説いた。

「色は、無常であろうか、常住であろうか。」
「尊師よ、色は、無常であり、苦であります。」
「それゆえ、色は、我ではないと、知りなさい。」

「受は、無常であろうか、常住であろうか。」
「尊師よ、受は、無常であり、苦であります。」
「それゆえ、受は、我ではないと、知りなさい。」

「想は、無常であろうか、常住であろうか。」
「尊師よ、想は、無常であり、苦であります。」
「それゆえ、想は、我ではないと、知りなさい。」

「行は、無常であろうか、常住であろうか。」
「尊師よ、行は、無常であり、苦であります。」
「それゆえ、行は、我ではないと、知りなさい。」

「識は、無常であろうか、常住であろうか。」
「尊師よ、識は、無常であり、苦であります。」
「それゆえ、識は、我ではないと、知りなさい。」

「スーシマよ、このように見た、弟子達は、
色と受と想と行と識において、厭離を遂げて、
離貪するが故に解脱を果し、解脱智見に達する。」

『ああ、我が迷いの生涯は、既に終わった。
為すべきことを為して、清浄なる行を修めた。
もはや、私は、迷いの輪廻に嵌まることはない。』

「スーシマよ、このように見た、弟子達が、
果して、神通を得ている必要があるだろうか。」
「いいえ、尊師よ、その必要は全くありません。」

「スーシマよ、いまこそ、汝に言っておく、
汝は見とめないものを、我々は見とめていた。
この違いが、我らと汝の差、悟りの有無である。」

これでもかと、格の違いを、見せ付けられて、
スーシマは、仏陀の足元に平伏し、こう言った。

「尊師よ、私は、罪を犯してしまいました。
法を盗むため出家して、聖者を試そうとした。
この恐れ多い罪の懺悔を、どうか受けて下さい。」

「スーシマよ、確かに、法を盗む罪は重い。
しかし、汝は罪を見とめて、罪を悔い改めた。
それこそ、悟りであろう、汝の懺悔を受けよう。」


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