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降魔経(マーラタッジャニヤ・スッタ)

仏教

モッガラーナの前世譚



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、長老マハーモッガラーナは、
スンスマーラギリの、べーサカラー林にある、
鹿の集う園に、バッガ族と共に、止まっていた。

その園で、モッガラーナが経行していると、
悪魔パーピマンが、彼の体の中に入り込んだ。
それを見とめて、モッガラーナは、こう言った。

「パーピマンよ、すぐに、出て来るが良い。
如来や、如来の弟子を、煩わせてはならない。
パーピマンよ、わたしは、汝を良く知っている。」

「私は、以前、ドーシンという悪魔だった。
このドーシンには、カーリーという妹がいた。
汝は、その妹の息子、すなわち、私の甥である。」

「その時には、カクサンダ仏が現れていた。
彼には、サンジーヴァと、ヴィドゥラという、
二人の偉大な弟子が居たが、汝は覚えているか。」

「サンジーヴァは、特に禅定に優れていた。
瞑想で死んだと思われ、火葬されたが蘇った。
それゆえ、蘇りし者、サンジーヴァと呼ばれた。」

「ヴィッドラは、非常に智慧に選れていた。
教えの説示に於て、彼に並ぶ者は居なかった。
それゆえ、類なき者、ヴィッドラと称えられた。」

 

第二章

「パーピマンよ、偉大なるカクサンダ仏の、
偉大なる弟子、二人の高弟の様子を見ながら、
前世の私である、悪魔ドーシンは、こう考えた。」

『戒を守り、戒に護られた、彼らの心には、
悪魔の自分が、付け入る隙が、何処にもない。
ひとつ、婆羅門を取り付き、彼らに取り入ろう。』

「パーピマンよ、そして、悪魔ドーシンは、
婆羅門を扇動して、彼らのことを罵倒させた。
様々な誹謗を受けて、比丘の間に動揺が走った。」

「パーピマンよ、比丘衆の動揺を見とめて、
僧伽の中にも、魔が入り込んだのを観とめて、
カクサンダ仏は、比丘衆に、このように説いた。」

『比丘達よ、婆羅門を、恨んではならない。
彼らは、悪魔に操られた、憐れな存在である。
四つの無量なる心を以って、彼らに接しなさい。』

『第一の心は、瞋恚を滅する、慈愛である。
自らを慈しむように、彼らを愛するのならば、
初禅天の梵天界に至り、魔の支配を越えられる。』

『第二の心は、愚痴を滅する、悲哀である。
自らを悲しむように、彼らを哀するのならば、
二禅天の光音天に至り、魔の支配を越えられる。』

『第三の心は、憂苦を滅する、歓喜である。
自らを歓べるように、彼らを喜べるのならば、
三禅天の遍浄天に至り、魔の支配を越えられる。』

『第四の心は、貪欲を滅する、超越である。
自らを超えるように、彼らを越えるのならば、
四禅天の広果天に至り、魔の支配を越えられる。』

「パーピマンよ、カクサンダ仏の法により、
四つの心を修めて、比丘衆の動揺は収まった。
彼らの心は、今までよりも、広大となったのだ。」

 

第三章

「パーピマンよ、偉大なるカクサンダ仏の、
偉大なる弟子、諸々の比丘の様子を見ながら、
前世の私である、悪魔ドーシンは、こう考えた。」

『戒を守り、戒に護られた、彼らの心には、
悪魔の自分が、付け入る隙が、何処にもない。
ひとつ、婆羅門を取り付き、彼らに取り入ろう。』

「パーピマンよ、そして、悪魔ドーシンは、
婆羅門を扇動して、彼らのことを供養させた。
様々な供養を受けて、比丘の間に慢心が生じた。」

「パーピマンよ、比丘衆の慢心を見とめて、
僧伽の中にも、魔が入り込んだのを観とめて、
カクサンダ仏は、比丘衆に、このように説いた。」

『比丘達よ、比丘衆は、驕ってはならない。
自らは、悪魔に操られた、憐れな存在である。
四つの正しい念処を以って、自らに接しなさい。』

『第一の念は、身を念じる、身念処である。
我が身は不浄である、断じて捕われなければ、
身体の囚われを超えて、魔の支配を越えられる。』

『第二の念は、受を念じる、受念処である。
我が感覚は苦である、断じて捕われなければ、
感覚の囚われを超えて、魔の支配を越えられる。』

『第三の念は、心を念じる、心念処である。
我が心は無常である、断じて捕われなければ、
意識の囚われを超えて、魔の支配を越えられる。』

『第四の念は、法を念じる、法念処である。
世の法は無我である、断じて捕われなければ、
観念の囚われを超えて、魔の支配を越えられる。』

「パーピマンよ、カクサンダ仏の法により、
四つの念を修めて、比丘衆の慢心は鎮まった。
彼らの心は、今までよりも、寂静となったのだ。」

 

第四章

「さらに、パーピマンよ、カクサンダ仏が、
ヴィッドラと共に、托鉢に向かった時のこと、
私は、子供に取り付いて、彼の頭を殴り付けた。」

「ヴィッドラの頭から、血が噴いて流れた。
それを見て、この悪魔は、限度を知らないと、
如来が振り向いた途端、悪魔は大地獄に落ちた。」

「パーピマンよ、私は、大地獄の増地獄で、
一万年の期間、出起受という責め苦を受けた。
そのとき、私の体は人であり、頭は魚であった。」

「パーピマンよ、このように、如来は勿論、
如来の弟子を危める者は、地獄に落とされる。
パーピマンよ、汝は、私を、何も知っていない。」

「その昔、神通力で、鹿子母講堂を揺らし、
比丘衆を震え上がらせたのは、この私である。
如来の弟子を危めれば、どうなるか解かるのか。」

「その昔、神通力により、最勝殿を揺らし、
帝釈天を震え上がらせたのは、この私である。
如来の弟子を攻めれば、どうなるか分かるのか。」

「その昔、神通力により、梵天界に現われ、
大梵天を震え上がらせたのは、この私である。
如来の弟子を攻めれば、どうなるか分かるのか。」

「パーピマンよ、悪果がないと考えるのか。
誰であれ、悪を報いるならば、悪で酬われる。
仏に報いて、どうして、報われない事があろう。」

これを聞いて、パーピマンは、すぐ姿を消した。


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