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大善見王経(マハースダッサナ・スッタンタ)

仏教



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

仏陀は、ウパヴァッタナの沙羅双樹の間で、
完全な涅槃に入るため、クシナガラに赴いた。
アーナンダは、仏陀に対し、このように言った。

「尊師よ、クシナガラという、辺境の地で、
完全な涅槃に入るのは、どうか止めて下さい。
支援者の多い都市が、他に幾らもありましょう。」

「アーナンダよ、このクシナガラの都市を、
涅槃の地に選んだのは、それなりの訳がある。
その昔、マハースダッサナという名の王が居た。」

「アーナンダよ、当時、このクシナガラは、
彼の都であり、クサーヴァティーと呼ばれた。
そこは、繁栄し、富裕であり、民衆が集まった。」

「クサーヴァティーの都は、七壁が存在した。
それでは、この七つの壁とは、如何なるものか。

第一に、王都を黄金で巡っている、城壁であり、
第二に、王都を白銀で巡っている、城壁であり、
第三に、王都を瑠璃で巡っている、城壁であり、
第四に、王都を水晶で巡っている、城壁であり、
第五に、王都を紅玉で巡っている、城壁であり、
第六に、王都を石英で巡っている、城壁であり、
第七に、王都を宝石で巡っている、城壁である。」

「クサーヴァティーの都は、四門が存在した。
それでは、この四つの門とは、如何なるものか。

第一に、王都を黄金で支えている、城門であり、
第二に、王都を白銀で支えている、城門であり、
第三に、王都を瑠璃で支えている、城門であり、
第四に、王都を水晶で支えている、城門である。」

「マハースダッサナは、七宝を所有していた。
それでは、この七つの宝とは、如何なるものか。

第一に、四方に法の輪が転がる、金輪宝であり、
第二に、王の賢い乗り物となる、白象宝であり、
第三に、王の賢い乗り物となる、紺馬宝であり、
第四に、夜が昼になるほど輝く、神珠宝であり、
第五に、最上の容姿を所有する、玉女宝であり、
第六に、最大の財宝を所有する、居士宝であり、
第七に、最高の智慧を所有する、将軍宝である。」

「マハースダッサナは、四神通を有していた。
それでは、この四つの力とは、如何なるものか。

第一に、容姿が神のように優れる、神通であり、
第二に、寿命が神のように優れる、神通であり、
第三に、身体が神のように優れる、神通であり、
第四に、環境が神のように優れる、神通である。」

 

第二章

「マハースダッサナ王が、斎戒を行なうと、
十五日の満月の日、天の輪宝が忽然と現れた。
それを見ると、王は満足しながら、こう言った。」

『これで、漸く、私は、転輪聖王になった。
天の輪宝がある限り、私は天下を治められる。
あの天に輝ける輪宝こそ、転輪聖王の証である。』

「そのとき、転輪王は、玉座を立ち上がり、
左手に金瓶を持ち、右手に金輪を撫でながら、
一方の肩を露にして、このように臣下に言った。」

『輪宝よ、転がれ、転がって、一切を征服せよ。』

「第一に、輪宝は、東方に転がって行った。
すると、東勝身洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「東方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「第二に、輪宝は、南方に転がって行った。
すると、南贍部洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「南方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「第三に、輪宝は、西方に転がって行った。
すると、西牛貨洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「西方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「第四に、輪宝は、北方に転がって行った。
すると、北倶盧洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「北方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「それから、王は、蓮池と布施堂を建てた。
そして、食を求める人には、食べ物を与えて、
財を求める人には財を与えて、人々を喜ばせた。」

「その様子を見ていた、神々の主人である、
帝釈天サッカは、ヴィッサカンマ天子を呼び、
王のために、ダンマ宮殿を建てるように命じた。」

「神々の贈り物、ダンマ宮殿が完成した時、
マハースダッサナは、沙門の中の沙門として、
婆羅門の中の婆羅門として、民から尊敬された。」

 

第三章

「マハースダッサナは、ダンマ宮殿にある、
マハーヴューハ塔に入り、四つの禅を修めた。
それでは、この四つの禅定は、如何なるものか。」

「第一の禅とは、思いが有り、考えが有り、
欲を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
その時、全身は、無欲の歓喜で満たされている。」

「喩えるなら、乾いた粉に水を含ませれば、
水を含んだ粉は、容易に崩れ落ちる事が無い。
彼らは、離欲の歓喜で、透き通らない事が無い。」

「その時、大王の心は、慈愛に満たされた。
大王は、自らを慈しむよう、他を愛するため、
色界の初禅天である、梵天界に止まるのである。」

「第二の禅とは、思いが無く、考えが無く、
想を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
その時、全身は、無想の喜楽で満たされている。」

「喩えるなら、外から水は入り込まないが、
内から湧き出る水で、深泉は遍く広がり渡る。
彼らは、無想の歓喜で、透き通らない事が無い。」

「その時、大王の心は、悲哀に満たされた。
大王は、自らを悲しむよう、他を哀れむため、
色界の二禅天である、光天界に止まるのである。」

「第三の禅とは、正念が有り、正知が有る
喜を捨てて生じる、大楽を体験する禅である。
その時、全身は、無喜の大楽で満たされている。」

「喩えるなら、泉に咲いている蓮華の花は、
下から上に至るまで、冷水で遍く広がり渡る。
彼らは、無喜の大楽で、透き通らない事が無い。」

「その時、大王の心は、称賛に満たされた。
大王は、自らを称えるよう、他を賛するため、
色界の三禅天である、浄天界に止まるのである。」

「第四の禅とは、大楽が無く、清浄が有る、
楽を捨てて生じる、空性を体験する禅である。
その時、全身は、無楽の空性で満たされている。」

「喩えるなら、白衣を頭から被ってしまい、
上から下に至るまで、白衣で覆い尽している。
彼らは、無楽の清浄で、透き通らない事が無い。」

「その時、大王の心は、平等に満たされた。
大王は、自らを捉えるよう、他を捕えるため、
色界の有頂天である、色究竟天に至るのである。」

 

第四章

「こうして、ダンマ宮殿に王が篭ってから、
スバッダー王妃は、何百年間も会えなかった。
今日こそは会おうと、王妃は王の処に向かった。」

「何百年振りに見た、王の顔は清浄であり、
まさに、この世に存在しない者のようであり、
王の最期を悟った、王妃は、泣き叫んで言った。」

『王よ、どうか、愛着を断たないで下さい。
私が居る、この生存に、愛着を感じて下さい。
私を置いて、他の世界に、旅立たないで下さい。』

『王妃よ、いつでも、相応しい言葉を語り、
私を愛してくれた君に、相応しくない言葉だ。
すべての出会いには、別れがあると知りなさい。』

『王よ、従います、あなたを愛しています。
それでは、どのように、語れば良いのですか。
愛する王よ、どのように、愛せば良いのですか。』

「何百年振りに聞く、王の法は清浄であり、
まさに、この世に存在しない神のようであり、
王の真意を悟った、王妃は、泣き叫んで言った。」

『王よ、どうか、愛着を断ち切って下さい。
私が居る、この生存の、愛着を断じて下さい。
私を置いて、他の世界に、先に立たれて下さい。』

「それから、間もなく、王は最期を迎えた。
その様は、あたかも、食後に眠くなるようで、
安らかな姿であり、それを見た者を幸せにした。」

「大王は、善趣である、梵天界に転生した。
王子、副王、大王、出家者として、それぞれ、
八万四千年ずつ、彼は、天の努めを果し切った。」

「アーナンダよ、マハースダッサナ王とは、
他でもない、まさしく、わたしの前世である。
それゆえ、この地は、涅槃の地として相応しい。」

「過去に、この地で死ぬこと、六回であり、
その度、私は転輪王として、全世界を治めた。
それゆえ、この地は、涅槃の地として相応しい。」

説き終えると、仏陀は、次の詩句を唱えられた。

「すべては、生と滅を繰り返し、常ではない。
生と滅を越えること、それだけが、寂滅である。」

 


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