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大般涅槃経だいはつねはんぎょう(マハーパリニッバーナ・スッタンタ)

仏教

大般涅槃経とは、釈迦の入滅(=大般涅槃(だいはつねはん))を叙述し、その意義を説く経典類の総称である。



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章 |  第五章 |  第六章 |  第七章 |  第八章 |  第九章 |  第十章 |  第十一章 |  第十二章 |  第十三章 |  第十四章 |  第十五章 |  第十六章 |  第十七章 |  第十八章 |  第十九章 |  第二十章 |  第二十一章 |  第二十二章 |  第二十三章 |  第二十四章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀が、ラージャグリハの、
ギッジャクータ山に、止まっておられるとき、
王子のアジャータサッツは、このように考えた。

“強いヴァッジ族を滅ぼすのは、今しかない。
今こそ、ヴァッジ族と戦って、全滅させる時だ”

マガダ国の王子である、アジャータサッツは、
同じ国の祭司である、ヴァッサカーラに言った。

「私は、ヴァッジ族と戦おうと思っている。
仏陀を訪ねて、どう思うか、尋ねて来なさい。
仏陀ならば、間違ったことは、言わないものだ。」

ヴァッサカーラは、この言い付けに応えて、
多くの御車を随えて、仏陀の所に辿り着いた。
彼は恭しく挨拶し、仏陀に、このように告げた。

「我が君が、ヴァッジ族の全滅を考えている。
友ゴータマよ、彼方は、どのように考えますか。」

仏陀は、アーナンダに対し、このように言った。

「ヴァッジ族は、頻繁に会合を開くと聞いた。
アーナンダよ、汝も、聞いた事があるだろうか。」

アーナンダは、仏陀に対し、このように答えた。

「尊師よ、ヴァッジ族は、繁栄を得るために、
頻繁に会合を開いていると、私も聞いています。」

「アーナンダよ、彼らが、会合を持つ限り、
彼らが滅びることがないと、よく知りなさい。
彼らが会合する限り、彼らの繁栄は約束される。」

仏陀は、アーナンダに対し、このように言った。

「ヴァッジ族は、全体の和合を貴ぶと聞いた。
アーナンダよ、汝も、聞いた事があるだろうか。」

アーナンダは、仏陀に対し、このように答えた。

「尊師よ、ヴァッジ族は、繁栄を得るために、
全体の和合を貴んでいると、私も聞いています。」

「アーナンダよ、彼らが、和合を貴ぶ限り、
彼らが滅びることがないと、よく知りなさい。
彼らが和合する限り、彼らの繁栄は約束される。」

仏陀は、アーナンダに対し、このように言った。

「ヴァッジ族は、堅固に法律を守ると聞いた。
アーナンダよ、汝も、聞いた事があるだろうか。」

アーナンダは、仏陀に対し、このように答えた。

「尊師よ、ヴァッジ族は、繁栄を得るために、
堅固に法律を守っていると、私も聞いています。」

「アーナンダよ、彼らが、法律を守る限り、
彼らが滅びることがないと、よく知りなさい。
彼らが遵守する限り、彼らの繁栄は約束される。」

仏陀は、アーナンダに対し、このように言った。

「ヴァッジ族は、尊敬し先達に倣うと聞いた。
アーナンダよ、汝も、聞いた事があるだろうか。」

アーナンダは、仏陀に対し、このように答えた。

「尊師よ、ヴァッジ族は、繁栄を得るために、
尊敬し先達を倣っていると、私も聞いています。」

「アーナンダよ、彼らが、先達に倣う限り、
彼らが滅びることがないと、よく知りなさい。
彼らが尊敬する限り、彼らの繁栄は約束される。」

仏陀は、アーナンダに対し、このように言った。

「ヴァッジ族は、貞節な子女を護ると聞いた。
アーナンダよ、汝も、聞いた事があるだろうか。」

アーナンダは、仏陀に対し、このように答えた。

「尊師よ、ヴァッジ族は、繁栄を得るために、
貞節な子女を護っていると、私も聞いています。」

「アーナンダよ、彼らが、貞節を護る限り、
彼らが滅びることがないと、よく知りなさい。
彼らが節制する限り、彼らの繁栄は約束される。」

仏陀は、アーナンダに対し、このように言った。

「ヴァッジ族は、神仏を供養し祭ると聞いた。
アーナンダよ、汝も、聞いた事があるだろうか。」

アーナンダは、仏陀に対し、このように答えた。

「尊師よ、ヴァッジ族は、繁栄を得るために、
神仏を供養し祭っていると、私も聞いています。」

「アーナンダよ、彼らが、神仏を祭る限り、
彼らが滅びることがないと、よく知りなさい。
彼らが崇拝する限り、彼らの繁栄は約束される。」

仏陀は、アーナンダに対し、このように言った。

「ヴァッジ族は、羅漢を供養し祭ると聞いた。
アーナンダよ、汝も、聞いた事があるだろうか。」

アーナンダは、仏陀に対し、このように答えた。

「尊師よ、ヴァッジ族は、繁栄を得るために、
羅漢を供養し祭っていると、私も聞いています。」

「アーナンダよ、彼らが、羅漢を祭る限り、
彼らが滅びることがないと、よく知りなさい。
彼らが供養する限り、彼らの繁栄は約束される。」

仏陀は、ヴァッサカーラに、このように言った。

「その昔、この法を、ヴァッジ族に説いた。
祭司よ、この不滅の法に、彼らが従うかぎり、
彼らが滅びることはないと、彼方は知りなさい。」

ヴァッサカーラは、仏陀に、このように答えた。

「一つでも不滅、七つならば、もはや完璧。
すべて、彼らが守るなら、彼らは滅びません。
良く分かりました、我々は、ここで失礼します。」

こうして、仏陀に感謝し、立ち去ったのである。

 

第二章

ヴァッサカーラが、立ち去って、間もなく、
仏陀は、アーナンダに、比丘達を集めさせた。
比丘達が集まると、仏陀は、このように説いた。

「出家修行者よ、汝らが、会合を持つ限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが会合する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「出家修行者よ、汝らが、和合を保つ限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが和合する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「出家修行者よ、汝らが、戒律を持す限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが持戒する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「出家修行者よ、汝らが、先達を貴ぶ限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが尊敬する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「出家修行者よ、汝らが、智慧を愛す限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが覚醒する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「出家修行者よ、汝らが、精進に励む限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが精進する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「出家修行者よ、汝らが、梵行を為す限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが解脱する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「これらの、七つの不滅の法を存続する限り、
比丘達よ、汝らは、繁栄し衰退することがない。」

 

第三章

「ここで、別の七つの不滅の法を説き示そう。
よく聴いて、よく考えなさい、わたしは説こう。」

「出家修行者よ、汝らが、因縁を楽しまず、
因縁を持たず、因縁の喜びに囚われない限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「出家修行者よ、汝らが、談話を楽しまず、
談話を持たず、談話の喜びに囚われない限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「出家修行者よ、汝らが、惰眠を楽しまず、
惰眠を持たず、惰眠の喜びに囚われない限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「出家修行者よ、汝らが、交際を楽しまず、
交際を持たず、交際の喜びに囚われない限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「出家修行者よ、汝らが、邪念を楽しまず、
邪念を持たず、邪念の喜びに囚われない限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「出家修行者よ、汝らが、悪友を楽しまず、
悪友を持たず、悪友の喜びに囚われない限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「出家修行者よ、汝らが、俗世を楽しまず、
俗世を持たず、俗世の喜びに囚われない限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「これらの、七つの不滅の法を存続する限り、
比丘達よ、汝らは、繁栄し衰退することがない。」

 

第四章

「ここで、別の七つの不滅の法を説き示そう。
よく聴いて、よく考えなさい、わたしは説こう。」

「汝らが、帰依、慙愧、良心、多学を持ち、
精進に励み、課行を修めて、智慧を持つ限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「これらの、七つの不滅の法を存続する限り、
比丘達よ、汝らは、繁栄し衰退することがない。」

 

第五章

「ここで、別の七つの不滅の法を説き示そう。
よく聴いて、よく考えなさい、わたしは説こう。」

「比丘達よ、汝らが、念覚支を修める限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが持念する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝らが、択法覚支を修む限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが選択する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝らが、精進覚支を修む限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが精進する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝らが、喜覚支を修める限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが歓喜する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝らが、軽安覚支を修む限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが安心する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝らが、定覚支を修める限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが瞑想する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝らが、捨覚支を修める限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが捨離する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「これらの、七つの不滅の法を存続する限り、
比丘達よ、汝らは、繁栄し衰退することがない。」

 

第六章

「ここで、別の七つの不滅の法を説き示そう。
よく聴いて、よく考えなさい、わたしは説こう。」

「汝らが、無常、非我、不浄、禍患を知り、
捨断を為し、厭離を修めて、滅尽に至る限り、
汝らは、繁栄が与えられ、衰退を免れるだろう。」

「これらの、七つの不滅の法を存続する限り、
比丘達よ、汝らは、繁栄し衰退することがない。」

 

第七章

「ここで、別の六つの不滅の法を説き示そう。
よく聴いて、よく考えなさい、わたしは説こう。」

「比丘達よ、汝が、梵行に身を捧げる限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが正業する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝が、梵行に口を捧げる限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが正語する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝が、梵行に心を捧げる限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが正思する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝が、梵行を共に有する限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが正命する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝が、梵行の戒を守れる限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが正念する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「比丘達よ、汝が、梵行を正しく見る限り、
汝らが滅びることがないと、よく知りなさい。
汝らが正見する限り、汝らの繁栄は約束される。」

「これらの、六つの不滅の法を存続する限り、
比丘達よ、汝らは、繁栄し衰退することがない。」

 

第八章

そこで、仏陀は、ギッジャクータ山に止まり、
比丘達に向かって、このように説いたのである。

「戒に熟達した定に、大きな果報がある。
三昧に熟達した智には、大きな果報がある。
智に熟達した心は、四つの漏から離解脱する。
すなわち、欲漏、有漏、謬見漏、無明漏である。」

仏陀は、ラージャガハに心ゆくまで止まり、
その次に、アンバラッティカーの園に訪れた。
そして、比丘達に向かって、このように説いた。

「戒に熟達した定に、大きな果報がある。
三昧に熟達した智には、大きな果報がある。
智に熟達した心は、四つの漏から離解脱する。
すなわち、欲漏、有漏、謬見漏、無明漏である。」

第九章

仏陀は、アンバラティカーの園を立ち去って、
次に、ナーランダのバーヴァーリカに止まった。

そこで、長老サーリプッタは、仏陀を訪れた。
訪れると、仏陀を礼拝して、このように言った。

「私は、世尊に対して、浄信を抱いてます。
過去に於ても、現在に於ても、未来に於ても、
世尊より、勝れた者は無く、優る者は居ません。」

「サーリプッタよ、汝は確信を抱いた余り、
尊大な言葉を語って、ここに獅子吼を為した。
それは、過去の覚者の心を知った上でのことか。」

「過去の覚者方は、このような戒があった。
過去の覚者方には、このような智慧があった。
過去の覚者方には、このような離解脱があった。」

「このように、すべて知った上で言ったのか。」
「いいえ、尊師よ、確かめた訳ではありません。」

「サーリプッタよ、汝は確信を抱いた余り、
尊大な言葉を語って、ここに獅子吼を為した。
それは、現在の覚者の心を知った上でのことか。」

「現在の覚者方は、このような戒があろう。
現在の覚者方には、このような智慧があろう。
現在の覚者方には、このような離解脱があろう。」

「このように、すべて知った上で言ったのか。」
「いいえ、尊師よ、確かめた訳ではありません。」

「サーリプッタよ、汝は確信を抱いた余り、
尊大な言葉を語って、ここに獅子吼を為した。
それは、未来の覚者の心を知った上でのことか。」

「未来の覚者方は、このような戒があろう。
未来の覚者方には、このような智慧があろう。
未来の覚者方には、このような離解脱があろう。」

「このように、すべて知った上で言ったのか。」
「いいえ、尊師よ、確かめた訳ではありません。」

「このように、汝は、他心通を得ていない。
それならば、どうして、獅子吼を為したのか。
どうして、分かったようなことを、言えるのか。」

「尊師よ、私は、他人の心は読めませんが、
全ての時に通じる、法の帰結を読めるのです。
これを、譬えるなら、このように言えましょう。」

「堅固な城壁には、ひとつしか城門がない。
城壁を越えるときは、城門を過ぎるしかない。
門だけ良く見ていれば、通るものが全て見える。」

「尊師よ、過去でも、現在でも、未来でも、
煩悩を滅尽しなければ、覚者とは言えません。
覚者ならば、四念処や七覚支を修めるものです。」

 

第十章

仏陀は、ナーランダのバーヴァーリカにある、
マンゴーの林に止まって、このように説かれた。

「戒に熟達した定に、大きな果報がある。
三昧に熟達した智には、大きな果報がある。
智に熟達した心は、四つの漏から離解脱する。
すなわち、欲漏、有漏、謬見漏、無明漏である。」

仏陀は、ナーランダに心ゆくまで止まった後、
比丘の集団を引き連れて、パータリ村に入った。

村の在家信者たちは、仏陀の到来を知ると、
仏陀を訪れて、礼拝し、心から法則を求めた。
すると、仏陀は、彼らに、このように説かれた。

「長者達よ、戒律を具足しないことによって、
破戒者に五つの禍患がある、その五つとは何か。

第一の禍患とは、財産が減っていくことである。
第二の禍患とは、悪い評価を受けることである。
第三の禍患とは、反対の者が増えることである。
第四の禍患とは、迷いの一生を送ることである。
第五の禍患とは、地獄に生まれ変ることである。」

「長者達よ、戒律の具足をすることによって、
持戒者に五つの味著がある、その五つとは何か。

第一の味著とは、財産が増えていくことである。
第二の味著とは、良い評価を受けることである。
第三の味著とは、賛成の者が増えることである。
第四の味著とは、悟りの一生を送ることである。
第五の味著とは、天界に生まれ変ることである。」

これを聞くと、パータリ村の優婆夷は歓喜し、
仏陀を礼拝して、夜道を帰って行ったのである。

 

第十一章

さて、その頃、マガタの大臣、スニーダは、
同じく、大臣である、ヴァッサカーラと共に、
戦争に備えて、パータリ村に城壁を築いていた。

パータリ村に、数千の神々が住み始めたのを、
天眼通によって、仏陀は見とめて、こう言った。

「アーナンダよ、誰が城壁を築いているのか。
神々が、この地に、集ってきているではないか。」

「尊師よ、この村に、城壁を築いているのは、
マガタの大臣、スニーダとヴァッサカーラです。」

「アーナンダよ、ここが聖なる地である限り、
第一の都市となり、裕福な場所となるであろう。」

「しかし、穢れた地になれば、三種類の障害。
つまり、水と火と敵による、破壊があるだろう。」

さて、それを聞いた大臣は、仏陀を招いた。
そして、仏陀に、極妙の食べ物を供養すると、
仏陀は感謝の意を現わして、次の詩句を唱えた。

賢い持戒者は、己を律する聖者を供養する。
ここにおられる、数千の神々に供物を捧げよ。
人々は神々を供養して、神々は人々を供養する。

さらに、母が子を慈しむように、彼を慈しむ。
神々が慈しむ人々は、いつも幸福になるだろう。

これを聞くと、マガタの大臣たちは歓喜して、
仏陀を礼拝して、その座を立ち帰ったのである。

それからというもの、マガタの国の大臣達は、
仏陀の説く教えに、良く従う者になっていった。

「ゴータマが出る門を、ゴータマ門と名付け、
ガンジス河を渡った橋を、ゴータマ橋と名付る。」

ある日、仏陀は、ガンジス河に向っていた。
河は満たされていて、岸まで溢れていたため、
ある者は、筏を使って、対岸に向かおうとした。

その時、仏陀は、まるで肘を曲げるように、
いとも簡単に、対岸まで飛び移ったのである。
そして、現象の意味を悟り、この詩句を唱えた。

ある者は舟を使って、ある者は筏を使かって、
海や川を渡ろうとする、渡った者は聡明である。

 

第十二章

比丘たちを引き連れて、コーティ村に入ると、
仏陀は、出家修行者たちに、このように説いた。

「四つの絶対の真理、四諦を見とめないため、
衆生は輪廻を繰り返す、その四つの諦とは何か。

第一に苦諦、この世の中は、苦しみであること。
第二に集諦、その苦しみは、必ずや現れること。
第三に滅諦、その苦しみは、必ずや消えること。
第四に道諦、その苦しみを、消す道があること。」

「比丘達よ、それゆえ、四諦を明らめた者は、
愛着を諦めるため、二度と再生することがない。」

それから、仏陀は、次の詩句を唱えたのである。

「我らは、出口を知らず、輪廻を浮沈する。
しかし、この四つの真理を、明らめたならば、
苦の根本を断じて、二度と転生することがない。」

 

第十三章

また、そこで、仏陀は、コーティ村に止まり、
比丘達に対して、数々の法話を説いたのである。

「戒に熟達した定に、大きな果報がある。
三昧に熟達した智には、大きな果報がある。
智に熟達した心は、四つの漏から離解脱する。
すなわち、欲漏、有漏、謬見漏、無明漏である。」

仏陀は、コーティ村に心ゆくまで止まった後、
比丘の集団を引き連れて、ナーディカに入った。

そのとき、長老アーナンダは、仏陀を訪れた。
訪れると、仏陀を礼拝して、このように言った。

「ここ、ナーディカで、命を終えた者がいる。
彼らが何処に転生したか、説き明かして下さい。」

「尊師よ、サーロは、どうなったのですか。」
「アーナンダよ、彼は、諸々の漏を破壊して、
この現世において、心解脱と慧解脱を果たした。」

「尊師よ、ナンダーは、どうなりましたか。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、スダッタは、どうなりましたか。」
「アーナンダよ、彼は、三結を破壊するため、
一度だけ現世に生まれ変わる、一来者となった。」

「尊師よ、スジャータは、どうしましたか。」
「アーナンダよ、彼は、貪瞋癡の破壊をして、
真理の流れを決して外れない、預流者となった。」

「尊師よ、カクダは、どうなったのですか。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、カーリンガは、どうしましたか。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、ニカタは、どうなったのですか。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、カティッサパは、どうでしょう。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、トゥッタは、どうなりましたか。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、サントゥッタは、どうでしょう。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、バッダは、どうなったのですか。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「尊師よ、スバッダは、どうなりましたか。」
「アーナンダよ、彼は、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「アーナンダよ、五十人を越える者たちが、
ナーディカで命を終え、五下分結を破壊して、
完全に煩悩を断じ、二度と還らない者となった。」

「アーナンダよ、九十人を越える者たちが、
ナーディカで命を終え、三結を破壊するため、
一度だけ現世に生まれ変わる、一来者となった。」

「アーナンダよ、五百人を越える者たちが、
ナーディカで命を終え、貪瞋癡の破壊をして、
真理の流れを決して外れない、預流者となった。」

 

第十四章

「アーナンダよ、死は、決して稀ではない。
しかし、死が迫らないと、人は死を認めない。
アーナンダよ、これこそが、世尊の苦悩である。」

「ここで、法の鏡という法の要点を説こう。
聖なる多学の弟子が、この法を具足するなら、
悪趣を断じて、預流者となり、正覚に到達する。」

「アーナンダよ、聖なる多学の弟子たちは、
仏陀に対して、絶対的な浄信を持つのである。
即ち、かの仏は、応供であって、世尊であると。」

「アーナンダよ、聖なる多学の弟子たちは、
仏法に対して、絶対的な浄信を持つのである。
即ち、かの法は、利益を有して、解脱に導くと。」

「アーナンダよ、聖なる多学の弟子たちは、
僧伽に対して、絶対的な浄信を持つのである。
即ち、かの僧は、正法を修め、尊敬に値すると。」

「アーナンダよ、聖なる多学の弟子たちは、
戒律に対して、絶対的な浄信を持つのである。
即ち、かの戒は、煩悩を滅して、三昧に導くと。」

「アーナンダよ、これが、法の要点である。
聖なる多学の弟子が、この法を具足するなら、
悪趣を断じて、預流者となり、正覚に到達する。」

 

第十五章

また、そこで、仏陀は、ナーディカに止まり、
比丘達に対して、数々の法話を説いたのである。

「戒に熟達した定に、大きな果報がある。
三昧に熟達した智には、大きな果報がある。
智に熟達した心は、四つの漏から離解脱する。
すなわち、欲漏、有漏、謬見漏、無明漏である。」

仏陀は、ナーディカに心ゆくまで止った後、
比丘の集団を率い、ヴェーサーリーに入った。
そして、仏陀は、比丘達に、このように説いた。

「比丘達よ、汝らは、正しく記憶しなさい。
これは、汝らに対する、私からの教戒である。
それでは、如何に念じて、正念するのだろうか。

身に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。
受に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。
心に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。
法に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。」

「比丘達よ、汝らは、正しく認識しなさい。
これは、汝らに対する、私からの教戒である。
それでは、如何に悟って、正智するのだろうか。

身に対して、正しく悟って、苦悩を断ちなさい。
口に対して、正しく悟って、苦悩を断ちなさい。
意に対して、正しく悟って、苦悩を断ちなさい。
業に対して、正しく悟って、苦悩を断ちなさい。」

「比丘達よ、このように、正念して正智せよ。
これらは、汝らに対する、私からの教戒である。」

 

第十六章

娼婦アンバパーリーは、仏陀の到来を聞き、
ヴェーサーリーにある、マンゴー林を訪ねた。
仏陀の法に感動した彼女は、このように言った。

「尊師よ、私の布施を、受けて頂けませんか。
どうか、私の家まで、食事を受けに来て下さい。」

その申し出に対して、仏陀は、黙って同意した。

また、リッチャヴィ族も、このことを聞き、
ヴェーサーリーにある、マンゴー林を訪ねた。
行き道、帰り道の、アンバパーリーと衝突した。

「アンバパーリー、お前の供物を譲ってくれ。
我々が代わって布施をしよう、十万でどうかな。」

「いいえ、たとえ、如何なるものを貰っても、
このような偉大な食事を、わたしは譲れません。」

リッチャヴィ族は、これを酷く悔しがった。
その一部始終を、遠くから眺めていた仏陀は、
比丘たちを集めて、このように説いたのである。

「比丘達よ、三十三天を見た事がない者は、
あそこに居る、リッチャヴィ族を見るが良い。
まさしく、彼らこそ、三十三天の現われである。」

その翌日、アンバパーリーは、食事を施すと、
仏陀が食べ終るのを待って、このように言った。

「尊師よ、私の布施を、受けて頂けませんか。
どうか、この庭園を、布施として受けて下さい。」

その申し出に対して、仏陀は、黙って同意した。

また、仏陀は、アンバパーリーの園に止まり、
比丘達に対して、数々の法話を説いたのである。

「戒に熟達した定に、大きな果報がある。
三昧に熟達した智には、大きな果報がある。
智に熟達した心は、四つの漏から離解脱する。
すなわち、欲漏、有漏、謬見漏、無明漏である。」

仏陀は、アンバパーリーの園に止まった後、
比丘の集団を率いて、ベールヴァ村に入った。
そして、仏陀は、比丘達に、このように言った。

「比丘達よ、汝らは雨期の住居に入りなさい。
わたしは、ベールヴァ村で雨期の住居に入ろう。」

そして、彼らは、知人を頼って、雨期に備えた。

第十七章

仏陀は、雨期の住居で、大病に見舞われた。
凄まじい痛みにさえ、苦しむことなく耐えて、
仏陀には、このような思いが浮かんだのである。

「弟子を省みる事なく、僧伽を顧みる事なく、
涅槃に至れることは、私にとって相応しくない。」

すると、仏陀の病気は、鎮まったのである。
アーナンダは、仏陀を訪れて、これを喜んだ。
仏陀は、アーナンダに対し、このように説いた。

「アーナンダよ、私に、何を期待するのか。
私は、余す所なく、全ての法を説き明かした。
師に握拳なし、説くべき法は既に解き明かした。」

「守もろうとしたり、護られようとしたり、
そのような関係ならば、何かを語るであろう。
しかし、我々は、そうではない、何を語ろうか。」

「わたしも、老け込んで、八十歳となった。
アーナンダよ、世尊が、全ての相を作意せず、
心三昧に止まる時、世尊の身体に安穏が訪れる。」

「私の死んだ後、比丘は、このようにせよ。
他を帰依処とせず、自己を帰依処としなさい。
自我を帰依処とせず、法則を帰依処としなさい。」

「周りを灯明とせずに、自らを灯明とせよ。
自我を灯明とせずに、真理の法を灯明とせよ。
アーナンダよ、そのためには、如何にすべきか。」

「このように、正念して、正智すべきである。
身に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。
受に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。
心に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。
法に対して、正しく念じて、渇望を断じなさい。」

「こうすれば、現在にも、わたしの死後にも、
周りを灯明とせず、自らを灯明に出来るだろう。」

 

第十八章

仏陀は、ヴェーサーリーで托鉢を終えた後、
そのまま、チャーバーラ神殿に入って行った。
そして、長老アーナンダに、このように説いた。

「アーナンダよ、四つの如意の基礎、即ち、
欲如意足、勤如意足、心如意足、観如意足を、
修めた者は、一劫以上、世に止まる事が出来る。」

「アーナンダよ、確かに、私は年を取ったが、
おまえが欲するならば、私はこの世に止まろう。」

このように、仏陀が、前兆を与えたときに、
アーナンダは、仏陀に祈願する事がなかった。
彼の心に、第六天魔が、憑いていたからである。

再び、仏陀は、アーナンダに、同じ事を説いた。

「アーナンダよ、四つの如意の基礎、即ち、
欲如意足、勤如意足、心如意足、観如意足を、
修めた者は、一劫以上、世に止まる事が出来る。」

「アーナンダよ、確かに、私は年を取ったが、
おまえが欲するならば、私はこの世に止まろう。」

このように、仏陀が、前兆を与えたときに、
アーナンダは、仏陀に祈願する事がなかった。
彼の心に、第六天魔が、憑いていたからである。

三度、仏陀は、アーナンダに、同じ事を説いた。

「アーナンダよ、四つの如意の基礎、即ち、
欲如意足、勤如意足、心如意足、観如意足を、
修めた者は、一劫以上、世に止まる事が出来る。」

「アーナンダよ、確かに、私は年を取ったが、
おまえが欲するならば、私はこの世に止まろう。」

このように、仏陀が、前兆を与えたときに、
アーナンダは、仏陀に祈願する事がなかった。
彼の心に、第六天魔が、憑いていたからである。

仏陀は、長老アーナンダに、このように言った。

「立ち去れ、アーナンダよ、その時が近づいた。」

 

第十九章

アーナンダが去ってから、第六天魔が現れた。
彼は、仏陀の傍らに立つと、このように言った。

「尊師よ、あなたは、もう涅槃なさいませ。
その昔、このように言われたではないですか。
比丘が成長したら涅槃すると、今がその時かと。」

「尊師よ、あなたは、もう涅槃なさいませ。
その昔、このように言われたではないですか。
比丘尼が成長して涅槃すると、今がその時かと。」

「尊師よ、あなたは、もう涅槃なさいませ。
その昔、このように言われたではないですか。
優婆塞が成長して涅槃すると、今がその時かと。」

「尊師よ、あなたは、もう涅槃なさいませ。
その昔、このように言われたではないですか。
優婆夷が成長して涅槃すると、今がその時かと。」

仏陀は、悪しき第六天魔に、このように言った。

「悪しき者よ、そんなに、言わなくても良い。
言われなくても、三ヶ月後、わたしは涅槃する。」

 

第二十章

そして、仏陀は、チャーパーラ神殿において、
正念して、天命を悟ると、寿命の蓄積を捨てた。

すると、そのとき、神々の太鼓が破裂して、
大いなる地震が起き、人々は非常に恐怖した。
この意義を悟り、仏陀は、この狂喜句を唱えた。

「計り知れない生命の起源を、牟尼は捨てた。
三昧に入り、歓喜を知り、生存の軛を破壊した。」

長老アーナンダは、仏陀を訪れて、こう言った。

「ああ、尊師よ、実に、不思議なことです。
神々の太鼓が破裂し、巨大な地震が起こった。
尊師よ、これには、どんな意義があるのですか。」

「アーナンダよ、大いなる地震の出現には、
実に、八つの原因と、八つの条件があるのだ。
それでは、この八つの因縁とは、何であろうか。」

「アーナンダよ、大いなる風が吹くときに、
風が振動して、水が振動して、地が振動する。
これが、第一の原因であり、第一の条件である。」

「アーナンダよ、如意を持つ人々や神々が、
小さな地に対する、大いなる認知を修習する。
これが、第二の原因であり、第二の条件である。」

「アーナンダよ、菩薩が兜率天から没して、
母の体内に入る時、大地が動揺して振動する。
これが、第三の原因であり、第三の条件である。」

「アーナンダよ、菩薩が人間界に生まれて、
母の体内を出る時、大地が動揺して振動する。
これが、第四の原因であり、第四の条件である。」

「アーナンダよ、世尊が人間界で修行して、
現正覚を果たす時、大地が動揺して振動する。
これが、第五の原因であり、第五の条件である。」

「アーナンダよ、世尊が人間界で解脱して、
法輪を展開する時、大地が動揺して振動する。
これが、第六の原因であり、第六の条件である。」

「アーナンダよ、世尊が人間界で正念して、
天命を正智する時、大地が動揺して振動する。
これが、第七の原因であり、第七の条件である。」

「アーナンダよ、世尊が大涅槃に到達して、
完全に解脱する時、大地が動揺して振動する。
これが、第八の原因であり、第八の条件である。」

「アーナンダよ、これらが、八つの因縁である。」

 

第二十一章

「アーナンダよ、実に、八つの集団がある。
その八つは、武人、祭司、商人、出家修行者、
四天王天、三十三天、他化自在天、梵天である。」

「その昔、わたしは、武人の集団を訪れて、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「その昔、わたしは、祭司の集団を訪れて、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「その昔、わたしは、商人の集団を訪れて、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「その昔、わたしは、出家の集団を訪れて、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「その昔、私は、四天王天の世界を訪れて、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「その昔、私は、三十三天の世界を訪れて、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「その昔、私は、他化自在天の世界を訪れ、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「その昔、わたしは、梵天の世界を訪れて、
法則をして、彼らを鼓舞し歓喜させたものだ。
その以前にも、彼らに会っている事を思い出す。」

「しかし、彼らは、私のことを忘れていた。
『この方は、人だろうか、いや、神だろうか。』
それ以前にも、私と会っている事を忘れている。」

「アーナンダよ、これらが、八つの集団である。」

 

第二十二章

「アーナンダよ、八つの勝境というものがある。」

「色を見とめて、好き嫌いを余りしないこと。
アーナンダよ、これこそが、第一の勝境である。」

「色を見とめて、好き嫌いを全くしないこと。
アーナンダよ、これこそが、第二の勝境である。」

「色を見とめず、好き嫌いを余りしないこと。
アーナンダよ、これこそが、第三の勝境である。」

「色を見とめず、好き嫌いを全くしないこと。
アーナンダよ、これこそが、第四の勝境である。」

「色を見とめず、輝く青色の境地に至ること。
アーナンダよ、これこそが、第五の勝境である。」

「色を見とめず、輝く黄色の境地に至ること。
アーナンダよ、これこそが、第六の勝境である。」

「色を見とめず、輝く赤色の境地に至ること。
アーナンダよ、これこそが、第七の勝境である。」

「色を見とめず、輝く白色の境地に至ること。
アーナンダよ、これこそが、第八の勝境である。」

「アーナンダよ、これらが、八つの勝境である。」

 

第二十三章

「アーナンダよ、八つの解脱というものがある。」

「色を有するものが、色を見とめていること。
アーナンダよ、これこそ、第一の離解脱である。」

「内に色を見とめず、外に色を見とめること。
アーナンダよ、これこそ、第二の離解脱である。」

「美しいことに対して、浸り切っていること。
アーナンダよ、これこそ、第三の離解脱である。」

「色の無い世界に至り、空間無辺境となる。
つまり、空間が無辺となる、境地に至ること。
アーナンダよ、これこそ、第四の離解脱である。」

「空間無辺境を越えて、識別無辺境となる。
つまり、識別が無辺となる、境地に至ること。
アーナンダよ、これこそ、第五の離解脱である。」

「識別無辺境を越えて、無所有境に変わる。
つまり、所有が存在しない、境地に至ること。
アーナンダよ、これこそ、第六の離解脱である。」

「無所有を越え、非認知非非認知境となる。
つまり、見る事もなく、見ない事もないこと。
アーナンダよ、これこそ、第七の離解脱である。」

「非認知非非認知を越え、大涅槃に変わる。
つまり、認識を越えて、経験を滅尽すること。
アーナンダよ、これこそ、第八の離解脱である。」

「アーナンダよ、これが、八つの離解脱である。」

 

第二十四章

「アーナンダよ、お前に憑いていた悪魔が、
過去に、私の前に現われ、涅槃を勧めて来た。
わたしは、それを受け、涅槃することに決めた。」

長老アーナンダは、狼狽えながら、こう言った。

「尊師よ、どうか、この世に止まり下さい。
衆生の済度のために、この世に留まり下さい。」
「止めよ、アーナンダよ、もう決まったことだ。」

「尊師よ、どうか、この世に止まり下さい。
衆生の済度のために、この世に留まり下さい。」
「止めよ、アーナンダよ、もう決まったことだ。」

「尊師よ、どうか、この世に止まり下さい。
衆生の済度のために、この世に留まり下さい。」
「止めよ、アーナンダよ、もう決まったことだ。」

「アーナンダよ、これまで、わたしは何度か、
お前に対して、このように言った事がある筈だ。」

『アーナンダよ、四つの如意の基礎、即ち、
欲如意足、勤如意足、心如意足、観如意足を、
修めた者は、一劫以上、世に止まる事が出来る。』

『アーナンダよ、確かに、私は年を取ったが、
おまえが欲するならば、私はこの世に止まろう。』

「涅槃の前兆が、汝だけに与えられたのに、
どうして、おまえは、祈願をしなかったのだ。
アーナンダよ、これは、お前が犯した罪である。」

「わたしは、三ヶ月後に涅槃すると言った。
世尊が生命のために、言葉を覆すことは無い。
さあ、アーナンダ、すべての比丘を集めなさい。」

アーナンダは、悲しみながら、比丘を集めた。
比丘が集まると、仏陀は、彼らに、こう説いた。

「比丘達よ、七科三十七道品を修めなさい。
すなわち、その三十七とは、四念処、四正断、
五根五力、七覚支、八正道、四如意足、である。」

「比丘達よ、この三十七道品を修めるならば、
多くの神々と人々に、多くの利益があるだろう。」

「この世は無常である、この私も無常である。
今から三ヶ月後に、私は大般涅槃に至るだろう。」

「私の生命は熟して、私は天命を果たした。
私は最期に、君達を捨断して、大涅槃に至る。
自己を帰依処とせよ、不放逸に、苦悩を越えよ。」


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