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ヴァッチャ大経(マハーヴァッチャ・スッタ)

仏教

ヴァッチャ族の遍歴行者に善と不善を説く



目次

第一章 |  第二章 |  第三章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、ラージャグリハの、
カランダカニヴァーパに、止まっておられた。
そこに、ヴァッチャが訪れ、このように言った。

「世尊よ、あなたと、話をするようになり、
いろいろと、私も、解かるようになりました。
今日は、善と悪について、教えてくれませんか。」

「ヴァッチャよ、身に於ける、分別がある。
人々が、身に於いて積める、三つの善がある。
それでは、この三つの善とは、如何なるものか。

第一の善は、殺生を離れ、危めないことである。
第二の善は、偸盗を離れ、盗まないことである。
第三の善は、邪淫を離れ、耽らないことである。」

「ヴァッチャよ、口に於ける、分別がある。
人々が、口に於いて積める、四つの善がある。
それでは、この四つの善とは、如何なるものか。

第一の善は、悪口を離れ、謗らないことである。
第二の善は、妄語を離れ、騙らないことである。
第三の善は、両舌を離れ、謀らないことである。
第四の善は、綺語を離れ、喋らないことである。」

「ヴァッチャよ、意に於ける、分別がある。
人々が、意に於いて積める、三つの善がある。
それでは、この三つの善とは、如何なるものか。

第一の善は、貪欲を離れ、貪らないことである。
第二の善は、瞋恚を離れ、怒らないことである。
第三の善は、愚痴を離れ、迷わないことである。」

 

第二章

「ゴータマよ、世尊の、出家信男の中には、
煩悩の漏れを滅し尽くし、心解脱と慧解脱を、
現世に於いて、体現した者が、居るでしょうか。」

「ヴァッチャよ、私の、出家信男の中には、
煩悩の漏れを滅し尽くし、心解脱と慧解脱を、
現世に於いて、体現した者が、五百人以上いる。」

「ゴータマよ、世尊の、出家信女の中には、
煩悩の漏れを滅し尽くし、心解脱と慧解脱を、
現世に於いて、体現した者が、居るでしょうか。」

「ヴァッチャよ、私の、出家信女の中には、
煩悩の漏れを滅し尽くし、心解脱と慧解脱を、
現世に於いて、体現した者が、五百人以上いる。」

「ゴータマよ、世尊の、在家信男の中には、
五下分結を滅し尽くして、色界に至ったため、
不還となって、帰らない者が、居るでしょうか。」

「ヴァッチャよ、私の、在家信男の中には、
五下分結を滅し尽くして、色界に至ったため、
不還となって、帰らない者が、五百人以上いる。」

「ゴータマよ、世尊の、在家信女の中には、
五下分結を滅し尽くして、色界に至ったため、
不還となって、帰らない者が、居るでしょうか。」

「ヴァッチャよ、私の、在家信女の中には、
五下分結を滅し尽くして、色界に至ったため、
不還となって、帰らない者が、五百人以上いる。」

「ゴータマよ、世尊の、在家信男の中には、
あなたが説いた、梵行を修めて、戒律を守り、
恐れなき、境地に至った者が、居るでしょうか。」

「ヴァッチャよ、私の、在家信男の中には、
わたしに説かれた、梵行を修め、戒律を守り、
恐れなき、境地に至った者が、五百人以上いる。」

「ゴータマよ、世尊の、在家信女の中には、
あなたが説いた、梵行を修めて、戒律を守り、
恐れなき、境地に至った者が、居るでしょうか。」

「ヴァッチャよ、私の、在家信女の中には、
わたしに説かれた、梵行を修め、戒律を守り、
恐れなき、境地に至った者が、五百人以上いる。」

 

第三章

法悦が湧き上がった、彼は、このように言った。

「ああ、これは、とても、妙なる教えです。
さながら、暗闇の中で、灯火を掲げるように、
仏陀は、私の見えない目に、見せてくれました。」

「仏陀よ、これより、この命が尽きるまで、
私は、心から、仏と法と僧に帰依し奉ります。
三宝の帰依者として、どうか受け容れて下さい。」

「ヴァッチャよ、異教の徒から、出離せよ。
四ヶ月の間、冷静に自分を見つめる時を持て。
四ヶ月の後に、汝に戒を与え、出家を認めよう。」

「尊師、ゴータマよ、出家の為であるなら、
四ヶ月と言わずに、四年間でも待ちましょう。
それゆえ、時機が来たら、どうか迎えて下さい。」

こうして、ヴァッチャは、出家を果たした。
その半月後、ヴァッチャは、仏陀の元を訪ね、
恭しく挨拶してから、師に更なる教えを求めた。

「それでは、ヴァッチャよ、止観を修めよ。
止は、心を静めて、雑念を止めることであり、
観とは、正しく観て、智慧が生じることである。」

「こうして、止と観を、実践し続けた者が、
自ずと、具えることになる、六つの力がある。
それでは、この六つの力とは、如何なるものか。」

「一身が多身となれば、多身が一身となる。
消えた姿が現れたり、水上を歩き空中を飛ぶ。
全ての世界に出現する、これが、神足通である。」

「近くの音を聴こえて、遠くの音が聞える。
人の声が聞えて来て、神の声が聴こえて来る。
聞えない音が聴こえる、これが、天耳通である。」

「貪りを貪りと知れば、怒りを怒りと知る。
疑いを疑いと知れば、善き心を善き心と知る。
他の人の心を理解する、これが、他心通である。」

「あの時の姓はこうで、あの生の名はこう。
あの生の糧はこうで、あの時の世の中はこう。
前の時の世を理解する、これが、宿命通である。」

「近くの物を見とめて、遠くの者を認める。
この世が見えて来て、あの世が現われて来る。
見えない物を観とめる、これが、天眼通である。」

「この人は漏れていて、あの人は漏れない。
あの煩悩から漏れて、この煩悩から漏れない。
煩悩の漏れを滅尽する、これが、漏尽通である。」

こうして、彼は、三明を得て、阿羅漢に至った。


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