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一切智経(カンナカラッタラ・スッタ)

仏教

一切智について



目次

第一章 |  第二章 |  第三章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、ウッジュンニャの、
カンナカラッタラの園に、止まっておられた。
パセーナディ王が訪れると、このように言った。

「世尊よ、尊顔、麗わしく、なによりです。
ソーマーと、サクラーも、心配していました。
今日は、一つ尋ねたい事が、有って参りました。」

「世尊が、すべてを知り、すべてが分かる、
一切智者であるという、風聞を耳にしました。
世尊よ、この風聞は、正しい噂なのでしょうか。」

「大王よ、すべてを知り、すべてが分かる、
一切智者であるという、風聞は誤まっている。
正しくないことを言って、わたしを貶めている。」

パセーナディは、ヴィドゥーダバ将軍に尋ねた。

「将軍よ、すべてを知り、すべてが分かる、
一切智者であるという話を、誰に聞いたのか。
王宮に忍び込み、風評を垂れ流したのは、誰か。」

「大王よ、婆羅門のアーカーサゴッタです。」
「彼のところに行き、このように言いなさい。
王が、あなたを呼んでいる、すぐに来なさいと。」

 

第二章

パセーナディ王は、仏陀に、このように尋ねた。

「世尊よ、この世に、身分制度があります。
この制度は、絶対的な区別が、有るのですか。
それとも、絶対的な区別などは、無いのですか。」

「大王よ、五つを失うならば、区別が生じ、
反対に、五つを得るならば、区別が滅される。
それでは、この五つの支とは、如何なるものか。

第一の支は、三宝に対して、信心を有すること。
第二の支は、病気に罹らず、元気に生きること。
第三の支は、妄語を抑えて、正語を修めること。
第四の支は、悪業を撤して、善業に徹すること。
第五の支は、無智を破って、智慧を具えること。」

「世尊よ、五つを失うと、どうなりますか。」
「強いものは強いまま、弱いものは弱いまま。
人々は、カルマに塗れて、カーストに従属する。」

「世尊よ、五つを得ると、どうなりますか。」
「弱いものも強くなり、強いものも弱くなる。
人々は、カルマを越えて、カーストを解脱する。」

「世尊よ、解脱の境地に、差が有りますか。」
「誰が点けたところで、火は同じであるよう、
誰が越えたところで、辿り着く処は同じである。」

 

第三章

ヴィドゥーダバは、仏陀に、このように尋ねた。

「世尊よ、神々は、存在しているのですか。
善い神と悪い神、どちらの神が来ていますか。
悪い神が、善い神を、滅ぼすことはないですか。」

これを聞いていた、アーナンダが、こう言った。

「ここは、わたしに、答えさせて頂きたい。
善い神は上に住み、悪い神は下に棲んでいる。
地に降りて来るのは、専ら、悪い神の方である。」

「地の人が、天の神に、手を出せないよう、
悪い神が、善い神に、手を出せることはない。
下から上は見えず、上から下は見えるのである。」

この答えを聞いて、パセーナディ王は感心した。

「尊者よ、あなたの名前は、何でしょうか。」
「我が名は、アーナンダ、歓喜という意です。」
「尊者よ、あなたの答えは、実に歓喜であった。」

大王は、仏陀に恭しく挨拶して、帰って行った。


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