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愛尽小経(チューラタンハーサンカヤ・スッタ)

仏教



目次

第一章 |  第二章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、サーヴァッティの、
ミガーラマーター講堂に、止まっておられた。
そこに、帝釈天のサッカが現れて、こう尋ねた。

「世尊よ、尋ねたいことが、一つあります。
人々と神々の中で、最も勝れた者になるには、
どうすれば良いですか、どれだけ励むのですか。」

「サッカよ、苦しみにせよ、楽しみにせよ、
あらゆる、煩悩を撤して、出離に徹すること。
こうして励む者は、人と神の中で最勝者となる。」

これを聞くと、サッカは、喜んで帰って行った。

モッガラーナは、これを傍で聞いていたが、
サッカが、本当に理解できたのかと、考えて、
彼は、神通を用いて、三十三天の世界に赴いた。

モッガラーナが、三十三天に現われたとき、
サッカは、音楽を奏でさせて、楽しんでいた。
モッガラーナを見て、サッカは、上座を譲った。

「我が友よ、よくぞ、お越し下さいました。
ここを空けましたから、ここに座って下さい。
さて、友よ、如何なる件で、来られたのですか。」

「サッカよ、世尊に、何を問うたのですか。
それに対して、世尊は、何と答えたのですか。
どうぞ、彼方が解する処を、私に教えて下さい。」

「友よ、その昔、天人と修羅の戦いがあり、
天の神々が勝って、海底の修羅が負けました。
その戦勝を祝い、勝者という宮殿を建てました。」

彼は、モッガラーナを連れ、その宮殿を見せた。

「友よ、どうですか、素晴らしいでしょう。
この宮殿には、麗しい百の尖塔が建っていて、
その百の塔には、美しい万の女神が暮らします。」

そうして、彼らが近づいて来るのを見ると、
塔に暮らす女神は、恥らって隠れてしまった。
そのとき、帝釈天の従者の、毘沙門天が言った。

「友よ、どうですか、素晴らしいでしょう。
塔の麗しさは、すべて帝釈天に依るものです。
女神の美しさも、すべて帝釈天に拠るものです。」

 

第二章

そのとき、モッガラーナは、このように考えた。

“彼らは、勝利の意味を、取り違えている。
仏陀は、自己に克つことを、勝利としたのに、
天人衆は、他者に勝つことを、勝利としている”

“彼らに、少し、敗北を見せねばならない。
負けを知らない者は、勝ちを知らないものだ。
敗北を知ることにより、真の価値を悟るだろう”

そうして、モッガラーナは、指を動かして、
彼らが鼻にかけている、千の塔を揺るがした。
地の動揺は神の動揺となり、彼らは打ち震えた。

神々の誇らしい顔は、幼く脅えさせられて、
女神の美しかった顔は、醜く歪められていた。
表を飾る物が壊れて、裏に隠された物が現れた。

しばらくして、彼らが落ち着きを取り戻すと、
モッガラーナは、再び、彼に、同じ事を尋ねた。

「サッカよ、世尊に、何を問うたのですか。
それに対して、世尊は、何と答えたのですか。
どうぞ、彼方が解する処を、私に教えて下さい。」

「我が友よ、よくぞ、戻して下さいました。
我々は、詰まらない価値に、頼っていました。
価値を崩された、今こそ、本当の勝ちが解かる。」

「我が友よ、よくぞ、お越し下さいました。
私を呼び戻すため、友が来て下さったのです。
友よ、仏陀は、正しく、このように説きました。」

『サッカよ、苦しみにせよ、楽しみにせよ、
あらゆる、煩悩を撤して、出離に徹すること。
こうして励む者は、人と神の中で最勝者となる。』

神々の帝王の口から、仏陀の言葉を聞くと、
モッガラーナは微笑み、黙って帰って行った。
後から、女神が、帝釈天に近づき、こう言った。

「ご主人様、あの方が、あなたの師ですか。」
「いいや、わたしの師は、あの方の師である。
あの方も優れているが、仏陀は更に勝れている。」

「ご主人様、あなたは、とても幸せ者です。
あの方の師を、師として、仰ぐことが出来る。
あの方の師、仏陀とは、どれほどの方でしょう。」


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