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サクルダーイ小経(チューラサクルダーイ・スッタ)

仏教

釈尊のもとで修行する理由(箭毛経Ⅱ)



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、ラージャグリハの、
カランダカニヴァーパに、止まっておられた。
その地には、著名な遊行者が、多く集っていた。

そして、仏陀が、サクルダーイを訪れると、
彼らの集団は、大声を出して、論争していた。
しかし、仏陀の到来に気づくと、彼らは言った。

「諸賢よ、静かにしろ、諸賢よ、静かにしろ。
沙門ゴータマが来られた、彼は論争を好まない。」

サクルダーイは、仏陀に恭しく挨拶すると、
仏陀に席を譲って、自らは低い場所に座った。
そして、仏陀に対して、このように語り掛けた。

「尊師よ、その昔、わたしが過去について、
我が師、ニガンタ・ナータプッタに尋ねた時、
彼は怒りを露わに、答えようとしませんでした。」

「サクルダーイよ、宿命通を持たない者に、
過去のこと、過去世ついて尋ねてはならない。
過去に関しては、しばらく、置いておきなさい。」

「尊師よ、その昔、わたしが未来について、
我が師、ニガンタ・ナータプッタに尋ねた時、
彼は怒りを露わに、答えようとしませんでした。」

「サクルダーイよ、天眼通を持たない者に、
未来のこと、未来世ついて尋ねてはならない。
未来に関しては、しばらく、置いておきなさい。」

「それでは、わたしが、あなたに法を説こう。
わたしが、あなたに説くのは、現実の法である。」

「すなわち、これが現れて、あれが現われる。
これが消えて、あれが消える、縁起の法である。」

 

第二章

「わたしは、宿命通もなく、天眼通もなく、
師の教えの真偽を、確かめる事が出来ません。
尊師よ、どうか、代わりに教えてくれませんか。」

「解った、サクルダーイよ、教えてみなさい。
あなたの師の教えとは、如何なるものだろうか。」

「尊師よ、我が師は、最上の光を説きます。
そして、最上の光を求めよ、と説いています。
理由を聞けば、他の光より優れているからとか。」

「サクルダーイよ、その最上の光とは何か。」
「尊師よ、他の光よりも、優れている光です。」
「遊行者よ、それでは、何も説かないに等しい。」

「闇夜に輝く蛍の光と、闇夜に輝く火の光。
サクルダーイよ、どちらが、明るいだろうか。」
「尊師よ、それは、言うまでも無く、後者かと。」

「闇夜に輝く火の光と、闇夜に輝く月の光。
サクルダーイよ、どちらが、明るいだろうか。」
「尊師よ、それは、言うまでも無く、後者かと。」

「闇夜に輝く月の光と、昼間に輝く日の光。
サクルダーイよ、どちらが、明るいだろうか。」
「尊師よ、それは、言うまでも無く、後者かと。」

「確かに、日の光は、他の光よりも明るい。
しかし、これが、最上と言い切れるだろうか。」
「いいえ、これ以上がないと、言い切れません。」

「サクルダーイよ、この比喩と同じである。
他の光よりも、その光が優れるからと言って、
その光が最上の光とは、言い切れないのである。」

「ああ、仏陀よ、実に、その通りであります。
仏陀によって、我が師の教えは、打ち砕かれた。」

 

第三章

「わたしは、宿命通もなく、天眼通もなく、
師の教えの真偽を、確かめる事が出来ません。
尊師よ、どうか、代わりに教えてくれませんか。」

「解った、サクルダーイよ、教えてみなさい。
あなたの師の教えとは、如何なるものだろうか。」

「尊師よ、我が師は、一向の楽を説きます。
そして、絶対の楽を求めよ、と説いています。
一向楽とは、苦がない、楽だけがある境地とか。」

「遊行者よ、一向楽に至る方法とは、何か。」
「尊師よ、戒律を守って、善業を積む道です。」
「遊行者よ、それだけでは、苦と楽を越えない。」

「殺生することが悪、殺生しないことが善。
サクルダーイよ、これで、絶対の楽だろうか。」
「尊師よ、それでは、苦と楽を越えていません。」

「偸盗することが悪、偸盗しないことが善。
サクルダーイよ、これで、絶対の楽だろうか。」
「尊師よ、それでは、苦と楽を越えていません。」

「邪淫することが悪、邪淫しないことが善。
サクルダーイよ、これで、絶対の楽だろうか。」
「尊師よ、それでは、苦と楽を越えていません。」

「妄語することが悪、妄語しないことが善。
サクルダーイよ、これで、絶対の楽だろうか。」
「尊師よ、それでは、苦と楽を越えていません。」

「破戒することが悪、破戒しないことが善。
サクルダーイよ、これで、絶対の楽だろうか。」
「尊師よ、それでは、苦と楽を越えていません。」

「遊行者よ、一向楽の道に、四つの禅がある。
それでは、この四つの禅とは、如何なるものか。」

「遊行者よ、第一の禅は、有尋有伺にして、
欲を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
この段に於いて、悪が減って、苦が減っていく。」

「遊行者よ、第二の禅は、無尋無伺にして、
想を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
この段に於いて、善が増えて、喜が増えていく。」

「遊行者よ、第三の禅は、正念楽住にして、
喜を捨てて生じる、大楽を体験する禅である。
この段に於いて、喜が消えて、楽に変っていく。」

「遊行者よ、第四の禅は、不苦不楽にして、
楽を捨てて生じる、清浄を体験する禅である。
この段に於いて、楽が消えて、空に変っていく。」

「尊師よ、苦でもないし、楽でもないもの。
一向楽とは、その実、絶対の空であったとは。
仏陀によって、我が師の教えは、打ち砕かれた。」

 

第四章

サクルダーイは、仏陀に、このように言った。

「尊師よ、それでは、一向楽を求めるために、
比丘が修めている、より優れた法とは何ですか。」
「遊行者よ、宿命通、天眼通、漏尽通の法である。」

「禅定を経て、三昧に入ると、宿命通を得る。
一生、十生、百生、千生を、次々と思い出して、
比丘は、過去の原因を、如実に明らめるのである。」

「禅定を経て、三昧に入ると、天眼通を得る。
一生、十生、百生、千生を、次々と突き詰めて、
比丘は、未来の結果を、如実に明らめるのである。」

「禅定を経て、三昧に入ると、漏尽通を得る。
過去を知り、未来を知り、煩悩の行く先を知る。
比丘は、現在の縁起を、如実に明らめるのである。」

法悦を得た、サクルダーイは、このように言った。

「いまや、完全に、師の教えは挫かれました。
どうか、我々を、仏陀の元に出家させて下さい。
未来永劫、仏陀と法則と教団に、帰依し奉ります。」


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