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転輪聖王獅子吼経(チャッカヴァッティ・シーハナーダ・スッタンタ)

仏教



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章 |  第五章 |  第六章 |  第七章 |  第八章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、マガダの国にある、
マトゥラーという地方に、止まっておられた。
そこに、比丘衆が集まると、このように説いた。

「己を島とせよ、自己を帰依処としなさい。
法を島としなさい、法則を帰依処としなさい。
比丘達よ、これには、どのようにすれば良いか。

第一に、身に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。
第二に、受に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。
第三に、心に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。
第四に、法に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。」

「比丘達よ、他を島とせず、己を島とせよ。
我を帰依処とせずに、法を帰依処としなさい。
自ら托鉢をして、自らの先祖の地に行きなさい。」

「比丘達よ、托鉢して、先祖の地に帰るなら、
悪魔が乗じることはない、福徳が生じるだろう。」

「その昔、ダルハネーミという、転輪王が、
四方を平らげ、天下を治めて、七宝を収めた。
比丘達よ、この七つの宝は、何のことだろうか。

第一に、四方に法の輪が転がる、金輪宝である。
第二に、王の賢い乗り物となる、白象宝である。
第三に、王の賢い乗り物となる、紺馬宝である。
第四に、夜が昼になるほど輝く、神珠宝である。
第五に、最上の容姿を所有する、玉女宝である。
第六に、最大の財宝を所有する、居士宝である。
第七に、最高の智慧を所有する、将軍宝である。」

「また、転輪聖王には、千人の息子が居た。
その誰もが、勇気が有って、意志も強かった。
彼らは、武器を用いず、正法をして敵を挫いた。」

「比丘達よ、あるとき、このように言った。
『臣下よ、我が元を、天の輪宝が去ったなら、
すぐに教えなさい、私は、隠遁を決めるだろう。』

「それから、数千年後、その臣下は言った。
『大王よ、たった今、天の輪宝が消えました。
大王の元を離れて、空を飛び立って行きました。』

「その報告を聞くと、大王は息子に言った。
『王子よ、髪と髭を剃って、私は出家をする。
お前は、わたしの代って、天下を治めるが良い。』

 

第二章

「ところが、国王が出家して、七日の後に、
王子の元から、天の輪宝は、忽然と消失した。
悲しんだ王子は、父の元を訪ねて、こう言った。」

『大王よ、天の輪宝が、忽然と消えました。』
『息子よ、消えたことを、悲しむことはない。
十五日の間、斎戒を行えば、忽然と現われよう。』

『それでは、天の輪宝とは、何なのですか。』
『息子よ、善と悪を、明らかにする法である。
善を為せば楽を受けて、悪を為せば苦を憂ける。』

『法の輪を転がすとは、どういう事ですか。』
『楽しむ者が居れば、善を説く法を転がして、
苦しむ者が居れば、悪を解く法を転がすことだ。』

「父の教えを受けた王が、斎戒を行なうと、
十五日の満月の日、天の輪宝が忽然と現れた。
それを見ると、王は満足しながら、こう言った。」

『これで、漸く、私は、転輪聖王になった。
天の輪宝がある限り、私は天下を治められる。
あの天に輝ける輪宝こそ、転輪聖王の証である。』

「そのとき、転輪王は、玉座を立ち上がり、
左手に金瓶を持ち、右手に金輪を撫でながら、
一方の肩を露にして、このように臣下に言った。」

『輪宝よ、転がれ、転がって、一切を征服せよ。』

「第一に、輪宝は、東方に転がって行った。
すると、東勝身洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「東方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「第二に、輪宝は、南方に転がって行った。
すると、南贍部洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「南方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「第三に、輪宝は、西方に転がって行った。
すると、西牛貨洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「西方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「第四に、輪宝は、北方に転がって行った。
すると、北倶盧洲の王が集まり、こう言った。」
『大王よ、全て彼方の物です、統治して下さい。』

「北方の王たちに、転輪王は、こう説いた。」
『殺生してはならない、偸盗してはならない。
邪淫をするな、妄語をするな、飲酒をするなと。』

「二代目である、転輪聖王も、こう言った。
『臣下よ、我が元を、天の輪宝が去ったなら、
すぐに教えなさい、私は、隠遁を決めるだろう。』

「それから、数千年後、その臣下は言った。
『大王よ、たった今、天の輪宝が消えました。
大王の元を離れて、空を飛び立って行きました。』

「その報告を聞くと、大王は息子に言った。
『王子よ、髪と髭を剃って、私は出家をする。
お前は、わたしの代って、天下を治めるが良い。』

「ところが、国王が出家して、七日の後に、
王子の元から、天の輪宝は、忽然と消失した。
悲しんだ王子は、祭司達を訪ねて、こう尋ねた。」

『我が祭司よ、天の輪宝が、忽然と消えた。』
『大王よ、消えたことを、悲しむことはない。
我が大王は、思いのままに、治めれば良いかと。』

「こうして、代を経るほど、法は歪められた。
比丘達よ、正法に代って、末法に変っていった。」

 

第三章

「転輪王も、七代目になると、正法が廃れ、
世の中に、貧困が現われて、偸盗が現われた。
人々は、盗んだ者を捕らえて、王に引き渡した。」

「王は、罪を犯した者を見て、こう言った。
『おまえは、どうして、人の物を盗んだのだ。』
『大王よ、そうしないと、生きられないのです。』

「それを聞いた王は、彼に更生を誓わせて、
その代わりに、生きていくだけの物を与えた。
しかし、すぐに別の者が捕まり、引き渡された。」

「王は、罪を犯した者を見て、こう言った。
『おまえは、どうして、人の物を盗んだのだ。』
『大王よ、そうしないと、生きられないのです。』

「それを聞いた王は、彼に更生を誓わせて、
その代わりに、生きていくだけの物を与えた。
しかし、すぐに別の者が捕まり、引き渡された。」

「王は、罪を犯した者を見て、こう言った。
『おまえは、どうして、人の物を盗んだのだ。』
『大王よ、そうしないと、生きられないのです。』

「それを聞いた王は、彼に更生を誓わせて、
その代わりに、生きていくだけの物を与えた。
しかし、すぐに別の者が捕まり、引き渡された。」

「比丘達よ、これを、繰り返していく内に、
盗んだ者には、王から物が与えられるという、
邪まなる思いが、人々の心の中に生まれ始めた。」

「こうして、世の中に、盗みが増え始めた。
それを見た転輪王は、この悪循環を絶つため、
盗人には、物を与えず、命を取るようになった。」

 

第四章

「比丘達よ、転輪王が罪人を殺すのを見て、
罪を犯す者は、殺してしまう方が良いという、
邪まなる思いが、人々の心の中に生まれ始めた。」

「こうして、世の中に、殺生が増え始めた。
世の中に、偸盗が現われて、殺生が現われた。
人々は、殺した者を捕らえて、王に引き渡した。」

「王は、罪を犯した者を見て、こう言った。
『おまえは、どうして、人の命を絶ったのだ。』
『大王よ、それは嘘です、私は殺していません。』

「こうして、世の中に、妄語が増え始めた。
世の中に、殺生が現われて、妄語が現われた。
すると、八万歳の寿命が、四万歳まで縮まった。」

「比丘達よ、嘘により罪を免れるのを見て、
嘘を吐く者は、訴えてしまう方が良いという、
邪まなる思いが、人々の心の中に生まれ始めた。」

『大王よ、この罪人は、嘘を吐いています。
この悪人は、自分の命が、助かりたいばかり、
殺したものを、殺してないと言う、悪い奴です。』

「こうして、世の中に、悪口が増え始めた。
世の中に、妄語が現われて、悪口が現われた。
すると、四万歳の寿命が、二万歳まで縮まった。」

「比丘達よ、人を罵る者は、姿が悪くなり、
姿が悪くなると、人の妻を盗むようになった。
醜い者は、美しい者を嫉み、美しい者を奪った。」

「こうして、世の中に、邪淫が増え始めた。
世の中に、悪口が現われて、邪淫が現われた。
すると、二万歳の寿命が、一万歳まで縮まった。」

 

第五章

「比丘達よ、淫に耽る者は、腹が据わらず、
腹が坐らないと、口が軽くなるようになった。
異性を得るために、適当なことを、話し始めた。」

「こうして、世の中に、綺語が増え始めた。
世の中に、邪淫が現われて、綺語が現われた。
すると、一万歳の寿命が、五千歳まで縮まった。」

「比丘達よ、淫に耽る者は、腹が据わらず、
腹が坐らないと、楽しみを貪るようになった。
快楽を求めるため、貪欲に狂った心に侵された。」

「こうして、世の中に、貪欲が増え始めた。
世の中に、邪淫が現われて、貪欲が現われた。
すると、五千歳の寿命が、二千歳まで縮まった。」

「比丘達よ、淫に耽る者は、腹が据わらず、
腹が坐らないと、苦しみを嫌うようになった。
苦痛を避けるため、瞋恚に狂った心に侵された。」

「こうして、世の中に、瞋恚が増え始めた。
世の中に、邪淫が現われて、瞋恚が現われた。
すると、二千歳の寿命が、一千歳まで縮まった。」

「比丘達よ、淫に耽る者は、腹が据わらず、
腹が坐らないと、判断力を鈍るようになった。
決断に迷うために、愚痴に狂った心に侵された。」

「こうして、世の中に、愚痴が増え始めた。
世の中に、邪淫が現われて、愚痴が現われた。
すると、一千歳の寿命が、五百歳まで縮まった。」

「比丘達よ、三毒に耽る者は、法を求めず、
沙門を尊敬せず、婆羅門を恭敬しなくなった。
先達を侮るために、自分が成長できなくなった。」

「こうして、世の中に、非礼が増え始めた。
世の中に、三毒が現われて、非礼が現われた。
すると、五百歳の寿命が、二百歳まで縮まった。」

「比丘達よ、三毒に耽る者は、法を求めず、
父親を敬わなくなり、母親を愛さなくなった。
両親から学ばないため、子供しか居なくなった。」

「こうして、世の中に、餓鬼が増え始めた。
世の中に、三毒が現われて、餓鬼が現われた。
すると、二百歳の寿命が、百歳にまで縮まった。」

 

第六章

「転輪が消える前には、貧困は無かったが、
転輪が消えた後から、貧困が現れたのである。
貧困が現れると、偸盗が現われ、殺生が現れた。」

「もともと、人間界の寿命は、八万歳だった。
殺生が現れて、妄語が現れると、寿命は四万歳。
妄語が現れて、悪口が現れると、寿命は二万歳。
悪口が現れて、邪淫が現れると、寿命は一万歳。
邪淫が現れて、綺語が現れると、寿命は五千歳。
邪淫が現れて、貪欲が現れると、寿命は二千歳。
邪淫が現れて、瞋恚が現れると、寿命は一千歳。
邪淫が現れて、愚痴が現れると、寿命は五百歳。
三毒が現れて、非法が現れると、寿命は二百歳。
三毒が現れて、餓鬼が現れると、寿命は一百歳。」

「比丘達よ、このように、悪法が栄えるほど、
人の寿命は短くなり、人の容色は悪くなるのだ。」

「比丘達よ、これからも、寿命は短くなり、
やがて、人間の寿命が、十歳になる時が来る。
そのとき、幼女は、五歳で結婚し、子供を生む。」

「また、そのときは、食の味が消えている。
砂糖、油、ヨーグルト、バター、塩が消えて、
人間の主食は、獣のように、雑草となっている。」

「また、そのときは、善の法が消えている。
十の善行の代わり、十の悪行が現れていよう。
彼らは、悪人を賞賛し、悪人に支配されている。」

「また、そのときは、血の絆が消えている。
親が子を捉えれば、獣のように犯そうとして、
子が親を捕らえれば、獣のように侵そうとする。」

「喩えるなら、猟師が、獲物を見るようだ。
激しい貪欲が昂じて、烈しい瞋恚に駆られる。
狂わしい愚痴に塗れて、互いを獣の如く捉える。」

「比丘達よ、人々の寿命が、十歳の時代に、
七日の間、最後に相応わしい、戦乱が起こる。
人々は、互いを獣と捉えて、命を奪い合うのだ。」

「その中で、戦いに疲れ切った者が現れる。
彼らは揃って、武器を捨てて、山中に篭もる。
もう、誰も殺すまい、もう、誰も傷つけまいと。」

「彼らは、山の中に入り、木の根を食べた。
そして、七日の後、彼らは、山から下り来て、
互いに抱き合い、互いに喜び合い、こう言った。」

『わたしも生きている、あなたも生きている。
恐ろしい戦いは終わった、もう二度と戦うまい。』

「比丘達よ、そこで、彼らは殺生を禁じた。
その結果、寿命が延び、容色が美しくなった。
彼らの子供の寿命は、二十歳になったのである。」

 

第七章

「最も短い時に、人間の寿命は、十歳だった。
殺生を禁じて、生まれた子供の、寿命は二十歳。
妄語を禁じて、生まれた子供の、寿命は五十歳。
悪口を禁じて、生まれた子供の、寿命は一百歳。
邪淫を禁じて、生まれた子供の、寿命は五百歳。
綺語を禁じて、生まれた子供の、寿命は一千歳。
貪欲を禁じて、生まれた子供の、寿命は五千歳。
瞋恚を禁じて、生まれた子供の、寿命は一万歳。
愚痴を禁じて、生まれた子供の、寿命は二万歳。
非礼を禁じて、生まれた子供の、寿命は四万歳。
不敬を禁じて、生まれた子供の、寿命は八万歳。」

「比丘達よ、このように、善法が栄えるほど、
人の寿命は長くなり、人の容色は良くなるのだ。」

「比丘達よ、人間の寿命が、八万歳の時は、
五百歳で結婚して、三つの病が残るのである。
残った三つの病とは、欲求と老化と断食である。」

「その時は、ここ、閻浮提は栄えていよう。
バーラナシーは、ケートゥマティと呼ばれて、
八万四千の都がある、閻浮提の最高の都となる。」

「比丘達よ、ケートゥマティーの王城には、
サンカという名の、転輪王が現れるのである。
彼は、正法によって、四方を遍く治めるだろう。」

「比丘達よ、このサンカが治める時代には、
マイトレーヤという名の、如来が現れるのだ。
彼は、私が説くように、法を解き明かすだろう。」

「マハーパナーダ王が、作った古の殿堂で、
サンカ王は髪と髭を剃り、出家するのである。
そして、如来に導かれ、無上の梵行を成就する。」

 

第八章

「己を島とせよ、自己を帰依処としなさい。
法を島としなさい、法則を帰依処としなさい。
比丘達よ、これには、どのようにすれば良いか。

第一に、身に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。
第二に、受に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。
第三に、心に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。
第四に、法に於いて、自ら悟り、憶念しなさい。」

「比丘達よ、他を島とせず、己を島とせよ。
我を帰依処とせずに、法を帰依処としなさい。
自ら托鉢をして、自らの先祖の地に行きなさい。」

「比丘達よ、托鉢して、先祖の地に帰るなら、
悪魔が乗じることはない、福徳が生じるだろう。」

「比丘達よ、四つの如意足を具足しなさい。
欲如意足を修習し、勤如意足を修習しなさい。
心如意足を修習して、観如意足を修習しなさい。」

「こうして、四つの如意足を具足する者は、
自らの欲するままに、生きることが出来よう。
比丘達よ、これを、比丘の延命と説くのである。」

「比丘達よ、四つの禅定を良く具足しなさい。
第一には、思考が有り、喜楽が有る、第一禅定。
第二には、思考が無く、喜楽が有る、第二禅定。
第三には、喜楽が無く、寂静が有る、第三禅定。
第四は、不苦不楽、捨念清浄である、第四禅定。」

「このように、四つの禅定を具足する者は、
心が無辺に広がって、平安な境地に安らげる。
比丘達よ、これを、比丘の安穏と説くのである。」

「比丘達よ、四つの無量心を具足しなさい。
慈無量心を修習し、悲無量心を修習しなさい。
喜無量心を修習して、捨無量心を修習しなさい。」

「こうして、四つの無量心を具足する者は、
心が無辺に広がって、平安な境地に安らげる。
比丘達よ、これを、比丘の財宝と説くのである。」

「比丘達よ、有漏から、無漏に至りなさい。
心解脱と慧解脱とを、現世で具足して止まる。
比丘達よ、これを、比丘の神通と説くのである。」

これを聞いた、諸々の比丘は、歓喜し実践した。


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