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梵摩経(ブラフマーユ・スッタ)

仏教

偉大な人の身体的特徴と行動



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、五百人の比丘衆と、
ミティラーという地方に、止まっておられた。
そこには、ブラフマーユという、婆羅門が居た。

彼は、百二十歳であり、三つの奥義を極め、
語彙論、活用論、音韻論、語源論にも通じて、
あらゆる、聖典の語句と文法にも、通じていた。

ブラフマーユには、特に優秀な弟子が居た。
その一番弟子は、ウッタラという青年であり、
彼も、師と同様に、あらゆる聖典を修めていた。

ブラフマーユは、彼を呼び、このように言った。

「誉れ高い仏陀が、近くに居られると聞く。
私に代り彼を訪ねて、彼を調べて来て欲しい。
本当に、噂の通り、素晴らしい人物か、どうか。」

「どのように調べたら、良いのでしょうか。
彼は、どのような特徴を、持つのでしょうか。
彼には、どのような運命が、待つのでしょうか。」

「仏陀は、偉大な三十二の相を備えている。
そういう人物は、二つの運命しか存在しない。
在家にて聖王となるか、出家して世尊となるか。」

彼は、仏陀の元を訪ねて、恭しく挨拶した。
仏陀に、三十二相の内、三十相を見とめたが、
残る二つに関しては、外からは見られなかった。

残る二つの相は、陰蔵相と広長舌相であり、
陰蔵相とは、陰部が隠されていることであり、
広長舌相とは、舌が広くて、長いことであった。

仏陀は、彼が困っているのを、見とめると、
神通を使って、残る二つの相を、彼に見せた。
彼は非常に驚き、仏陀に付いて回ることにした。

 

第二章

七ヶ月後、ウッタラは、ブラフマーユに言った。

「我が師よ、ゴータマの名声は、本物です。
評判通り、偉大な三十二相を、具えています。
在家で聖王となるのか、出家し世尊となるのか。」

「家に在れば、七宝を修め、四方を治める。
家を出れば、七科を修め、四諦を収められる。
それでは、この三十二相とは、如何なるものか。

第一は、地に足が着いている、足安立相である。
第二は、足の裏に輪がある、足下二輪相である。
第三は、足の踵が広いこと、足跟広平相である。
第四は、すべての指が長いこと、長指相である。
第五は、手足が柔軟なこと、手足柔軟相である。
第六は、指に水掻きがある、手足網縵相である。
第七は、足の甲が高いこと、足趺高満相である。
第八は、脹脛が鹿のような、伊泥延膊相である。
第九は、手が膝まで届く、正立手摩膝相である。
第十は、男根が体の中に隠れる、陰蔵相である。
第十一は、体が金に輝いている、金色相である。
第十二は、体が滑らかである、細薄皮相である。
第十三は、一孔から一毛、一一孔一毛相である。
第十四は、毛が上向きである、毛上向相である。
第十五は、体が真っ直ぐである、直身相である。
第十六は、七箇所が膨れた、七処隆満相である。
第十七は、上半身が獅子の、獅子上身相である。
第十八は、両の脇が膨れた、両腋下隆相である。
第十九は、体が両腕の長さ、身広長等相である。
第二十は、肩が丸みを帯びた、肩円好相である。
第二一は、全て美味しい、味中得上味相である。
第二二は、顎が獅子のような、獅子頬相である。
第二三は、四十本の歯がある、四十歯相である。
第二四は、整った歯をしている、歯斉相である。
第二五は、歯に隙き間がない、具足歯相である。
第二六は、歯が綺麗な白である、歯白相である。
第二七は、長い舌を持つこと、広長舌相である。
第二八は、神々しい声を有する、梵声相である。
第二九は、紺青の眼を有する、真青眼相である。
第三十は、睫毛が牛のような、牛眼睫相である。
第三一は、眉間に白い毛がある、白毫相である。
第三二は、頭の頂が盛り上がる、肉髻相である。」

 

第三章

「どこに行くときも、どこに向かうときも、
七ヶ月に渡って、私は、仏陀を見て来ました。
ゴータマには、次のような、特徴がありました。」

仏陀は、歩く時は、必ず右足から前に出すこと。
仏陀は、歩く幅が、広過ぎず、狭過ぎないこと。
仏陀は、歩く時に、早過ぎず、遅過ぎないこと。
仏陀は、歩く時に、高過ぎず、低過ぎないこと。
仏陀は、歩く時に、緊張せず、弛緩しないこと。
仏陀は、歩く時に、膝と膝が、こすれないこと。
仏陀は、振り返る時に、体全体で振り返ること。
仏陀は、上を見ず、下も見ず、前方を見ること。
仏陀は、家に入る時に、身体が真っ直ぐなこと。
仏陀は、座に坐る時に、静かに座っていること。
仏陀は、水を飲む時に、全く水を零さないこと。
仏陀は、食を摂る時に、全く食を零さないこと。
仏陀は、食を摂る時に、必ず歯で磨り潰すこと。
仏陀は、食を摂る時に、食の味を貪らないこと。
仏陀は、体を養う為に、滋養を摂っていること。
仏陀は、食べた後に、静かに座り感謝すること。
仏陀は、着る物により、体を飾り立てないこと。
仏陀は、外から、帰って来ると、足を洗うこと。
仏陀は、他を害することなく、他を利すること。
仏陀は、己を害することなく、己を利すること。
仏陀は、人々を煽てたり、貶したりしないこと。
仏陀は、声が美しく、解り易く、響き渡ること。
仏陀は、法を解き明かして、世の人を導くこと。」

これを聞き、ブラフマーユは、帰依文を唱えた。

私は、世尊、応供、正等覚者に帰依し奉ります。
私は、世尊、応供、正等覚者に帰依し奉ります。
私は、世尊、応供、正等覚者に帰依し奉ります。

 

第四章

ある日のこと、仏陀は、ミティラーにある、
マカーデーヴァの庭園に、止まっておられた。
そこに、婆羅門のブラフマーユが、遣って来た。

彼は、仏陀の元を訪ねて、恭しく挨拶した。
仏陀に、三十二相の内、三十相を見とめたが、
残る二つに関しては、外からは見られなかった。

残る二つの相は、陰蔵相と広長舌相であり、
陰蔵相とは、陰部が隠されていることであり、
広長舌相とは、舌が広くて、長いことであった。

仏陀は、彼が困っているのを、見とめると、
神通を使って、残る二つの相を、彼に見せた。
すると、彼は歓喜に震えて、立ち上って言った。

「あなたは、三十二相を完全に具えている。
あなたは、完全であって、偉大な聖者である。
どうか、わたしに、来世の利益を教えて下さい。」

「偉大な聖者とは、如何なる者でしょうか。
覚めている仏陀とは、如何なる者でしょうか。
ゴータマよ、あなたは、これが解かるはずです。」

「偉大な聖者とは、明らめている者である。
覚めている仏陀とは、諦らめている者である。
彼らは、煩悩を越えて、心が寂静に至っている。」

それから、仏陀は、段階的に法を説かれた。
天界に至る法を説き、涅槃に至る法を解いた。
そして、最後になって、四諦を説いたのである。

法悦が湧き上がった、彼は、このように言った。

「ああ、これは、とても、妙なる教えです。
さながら、暗闇の中で、灯火を掲げるように、
仏陀は、私の見えない目に、見せてくれました。」

「仏陀よ、これより、この命が尽きるまで、
私は、心から、仏と法と僧に帰依し奉ります。
三宝の帰依者として、どうか受け容れて下さい。」

それから、間もなくして、彼は亡くなった。
彼の弟子達は、このことを、仏陀に報告して、
彼が、どこに生まれ変ったか、仏陀に質問した。

「彼は、わたしの教えを、速やかに修めた。
下位に結び付ける、五つの結を断じたことで、
彼は、不還者となり、平安の境地に入るだろう。」


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