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菩提王子経(ボーディラージャクマーラ・スッタ)

仏教

生涯で三度三宝に帰依した王子



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章 |  第五章 |  第六章 |  第七章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、バッガの山にある、
べーサカラーの鹿の園に、止まっておられた。
そこに、サンジカープッタが訪れると、言った。

「世尊よ、我が国の王子、ボーディ王子が、
世尊に、食を供養したいと、申しております。
比丘衆と共に、どうか、受けて下さいますよう。」

仏陀は、沈黙を以って、その事に同意した。
翌朝、仏陀は、ボーディ王子の家に向かった。
そして、食べ終わると、ボーディ王子は言った。

「世尊よ、わたしは、このように考えます。
楽は楽から得られない、楽は苦から得られる。
これに関し、仏陀は、どのようにお考えですか。」

「王子よ、まだ、私が、成道していない頃、
楽は楽から得られず、楽は苦から得られると、
このように考えて、そのように修めた事がある。」

 

第二章

「王子よ、まさに、私も、菩薩であった頃、
聖なる探求のために、出家を果したのである。
まだ、私の髪も黒くて、若かりし頃の事である。」

「私は、アーラーラ・カーラーマを訪ねた。
彼は、無所有の定を修めている、聖者であり、
私を見とめるや否や、私の根を認めたのである。」

『友よ、君に会えたことは、妙なることだ。
君は、すぐにも、私の境地を成就するだろう。
ゴータマよ、私と共に、この僧伽を率いないか。』

「実際、まもなく、私は彼と等しくなった。
それ故に、彼を知り、上が有ることを知った。
私は、彼を認めた上で、高みを求めて旅立った。」

「私は、ウッダカ・ラーマプッタを訪ねた。
彼は、非想非非想の定を修めた、聖者であり、
私を見とめるや否や、私の根を認めたのである。」

『友よ、君に会えたことは、稀なることだ。
君は、すぐにも、私の境地を達成するだろう。
ゴータマよ、私と共に、この僧伽を率いないか。』

「実際、まもなく、私は彼と等しくなった。
それ故に、彼を知り、上が有ることを知った。
私は、彼を認めた上で、高みを求めて旅立った。」

「それから、ウルヴェーラのセーナー村で、
私は、これまで以上に、瞑想の修行に励んだ。
そして、遂に、出離の道である、中道を悟った。」

 

第三章

「このとき、三つの喩えが、思い浮かんだ。
王子よ、三つの喩えとは、苦行の譬えである。
それでは、この三つの比喩は、如何なるものか。」

「例えば、湿った木が、沼地に落ちている。
たとえ、どれだけ、外から火を付けたとして、
沼に落ちた木は、決して燃え上がることがない。」

「同様に、すっかり、煩悩に浸った状態で、
たとえ、どれだけ、外から苦を与えたとして、
欲に塗れた心は、決して悟りを開くことがない。」

「例えば、湿った木が、陸地に落ちている。
たとえ、どれだけ、外から火を付けたとして、
中が湿った木は、決して燃え上がることがない。」

「同様に、すっかり、欲望に浸った状態で、
たとえ、どれだけ、外から苦を与えたとして、
欲に塗れた心は、決して悟りを開くことがない。」

「例えば、乾いた木が、陸地に落ちている。
たとえ、どれだけ、外から風で煽ったとして、
一度、火が付いた木は、更に、燃え上っていく。」

「同様に、すっかり、欲望を越えた状態で、
たとえ、どれだけ、外から楽を与えたとして、
欲を越えた心は、決して楽に溺れることがない。」

「確かに、私は、比類のない苦行を修めた。
食を止めて、私の体は骨と皮ばかりになった。
呼吸を止めて、私の頭は砕け散りそうになった。」

「しかし、そうして、悪業を落とした結果、
私は、苦しみは、目的でないことが分かった。
つまり、苦しみは、手段であることに気づいた。」

「当時、私には、五人の修行仲間が居たが、
右道を離れて、中道に入った、わたしを見て、
私が落ちてしまったと、彼らは離れてしまった。」

 

第四章

「王子よ、果たして、わたしは落ちたのか。
楽に落ちたのではない、苦を越えたのである。
それからは、苦を越える、中道を修めて行った。」

「王子よ、中央の道とは、出離の道であり、
一切の苦を、諦らめていく、四つの禅がある。
それでは、この四つの禅とは、如何なるものか。」

「第一の禅とは、思いが有り、考えが有り、
欲を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
その時、全身は、無欲の歓喜で満たされている。」

「第二の禅とは、思いが無く、考えが無く、
想を捨てて生じる、歓喜を体験する禅である。
その時、全身は、無想の喜楽で満たされている。」

「第三の禅とは、正念が有り、正知が有る
喜を捨てて生じる、大楽を体験する禅である。
その時、全身は、無喜の大楽で満たされている。」

「第四の禅とは、大楽が無く、清浄が有る、
楽を捨てて生じる、空性を体験する禅である。
その時、全身は、無楽の空性で満たされている。」

「王子よ、中央の道とは、修習の道であり、
一切の苦を、明らめていく、三つの明がある。
それでは、この三つの明とは、如何なるものか。」

「第一の明とは、過去の智、宿命通である。
一、十、百、千の、過去世を思い出すことで、
如何なる業が、如何なる命を宿すか、証知する。」

「第二の明とは、未来の智、天眼通である。
一、十、百、千の、未来世を透し見ることで、
如何なる業が、如何なる生を課すか、証知する。」

「第三の明とは、現在の智、漏尽通である。
一、十、百、千の、漏煩悩を見て取ることで、
如何なる業が、如何なる漏を生むか、証知する。」

 

第五章

「王子よ、もはや、再生することがない。
わたしの解脱は、不動であると知ったとき、
このような思いが、私の中に生じたのである。」

『果して、この境地を、誰が見とめるのか。
心から求めない者は、端から認めないだろう。
この地に至るまで、数々の仕掛けが潜んでいる。』

『真理の道は、深遠であって、神妙である。
無理に勧めれば、進むどころか、退くだろう。
私は、真理を明かすまい、この光は明る過ぎる。』

「こうして、最後まで残っていた、私の欲、
衆生を済度する意欲を、亡くしてしまった時、
私の目の前に、梵天が現れ、このように言った。」

『世尊よ、どうか、法の輪を回して下さい。
仏陀が、法を回さないと、世界が廻りません。
世尊が滅するときに、世界が亡びてしまいます。』

『世尊よ、生まれ付き、汚れの少ない者が、
法を認められる者が、少なからず来ています。
どうか、彼らのために、法を説き示して下さい。』

「私は、アーラーラ・カーラーマを尋ねた。
そのとき、神の声で、彼が死んだ事を知った。
彼の機根を、見とめたからこそ、残念に思った。」

「私は、ウッダカ・ラーマプッタを尋ねた。
そのとき、神の声で、彼が死んだ事を知った。
彼の機根を、見とめたからこそ、残念に思った。」

 

第六章

「果たして、誰が、真理を認められるのか。
私は、一緒に出家を果した、比丘衆を探した。
彼らが、バーラーナシーに居るのを、私は見た。」

「私が、彼らを訪ねている、その道の途上、
アージーヴィカ教の教徒、ウパカと出会った。
彼は、私の姿を見るや否や、このように言った。」

『あなたの感官は、清浄であり、清潔です。
あなたは、誰を師として、出家したのですか。
あなたの師は誰ですか、あなたの法は何ですか。』

『私は自ら悟った者で、私には師が居ない。
私は全て悟った者で、私には尋ねる事がない。
私は、真理で打ち克った者、無限の勝者である。』

「すると、ウパカは、納得し去って行った。
私は、一緒に出家を果した、比丘衆を訪ねた。
遠くに、私を見とめると、彼らは近づいて来た。」

『ゴータマよ、今さら、何をしに来たのか。
汝は、苦行を捨てて、我々を捨ててしまった。
汝は堕落してしまった、早く、立ち去るが良い。』

『私は、苦行を捨てず、苦行を越えたのだ。
苦行のみか、一切の欲望を越え、戻って来た。
いいか、良く聞け、今から、全て説き明かそう。』

「すると、彼らは、わたしの変化を見とめ、
自らの変化を求めて、私に従うようになった。
彼らに向かって、私は、このように説き示した。」

『如来は、尊敬に値し、目覚めた者である。
私が教える通りに、汝らが法を修めるならば、
無上の梵行の成就を、現世に於いて得られよう。』

 

第七章

「世尊よ、比丘衆が、仏陀の元に出家して、
この現世に於いて、梵行の成就を得るまでに、
一体、どれぐらいの、期間が掛かるでしょうか。」

「師に対して、信が有れば、時は短くなり、
師に対して、信が無いならば、時は長くなる。
一年でも、十年でも、ひたすら、教えを修めよ。」

法悦が湧き上がった、彼は、このように言った。

「ああ、ここに、まさに、仏陀が居られる。
ああ、ここに、まさに、真理が説かれている。
わたしは、仏陀に巡り会えて、実に幸いである。」

サンジカープッタは、彼に、このように言った。

「感嘆してばかりで、懇願していませんね。
王子よ、どうして、仏に帰依しないのですか。
真の教えを、聞くばかりで、修めないのですか。」

彼は、サンジカープッタに、このように言った。

「友よ、良くぞ言ってくれた、その通りだ。
私は、胎に宿っている時、乳を飲んでいる時、
すでに、二回、三宝に対し、帰依を示している。」

そう言って、彼は、生涯三回目の帰依を示した。

「仏陀よ、これより、この命が尽きるまで、
私は、心から、仏と法と僧に帰依し奉ります。
三宝の帰依者として、どうか受け容れて下さい。」


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