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アッサラーヤナ経(アッサラーヤナ・スッタ)

仏教

階級の無差別(阿摂想経)



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章 |  第五章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、サーヴァッティの、
アナータピンディカ園に、止まっておられた。
そこには、アッサラーヤナという、青年が居た。

彼は、十六歳であり、三つの奥義を極めて、
語彙論、活用論、音韻論、語源論にも通じて、
あらゆる、聖典の語句と文法にも、通じていた。

その地方には、五百人のバラモンが居たが、
彼らは、仏陀を、言い負かそうと考えていた。
その刺客には、アッサラーヤナが選び出された。

真理を語る者を、言い負かせる筈がないと、
彼は考えていたが、頼みを断り切れなかった。
彼は、仏陀の元を訪ねると、このように言った。

「バラモンは、このように、申しています。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「バラモンの女性も、月経があり妊娠する。
バラモン以外の女性も、月経があり妊娠する。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

 

第二章

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「身分が有ろうとも、階級が無かろうとも、
堕落すれば下がり、精進すれば上がっていく。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「身分が有ろうとも、階級が無かろうとも、
悪を為せば下がり、悪を断じて上がっていく。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「身分が有ろうとも、階級が無かろうとも、
善を断じて下がり、善を為せば上がっていく。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

 

第三章

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「バラモンだろうと、慈の心を修められる。
バラモン以外だろうと、悲の心を修められる。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「バラモンだろうと、汚れを洗い落とせる。
バラモン以外だろうと、穢れを洗い落とせる。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「バラモンだろうと、輝きを取り戻せよう。
バラモン以外だろうと、耀きを取り戻せよう。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

 

第四章

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「祭司の父と、王族の母から生まれた子は、
バラモンでもあるし、クシャトリアでもある。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「ウマの父と、ロバの母から生まれた仔は、
ウマであるとも言え、ロバであるとも言える。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

「しかし、バラモンは、このように考える。
婆羅門は最上であり、婆羅門のみ清浄である。
ゴータマよ、これについて、どう思われますか。」

「怠惰なバラモンに、布施を為す法よりは、
勤勉なクシャトリアに、布施を為す方がいい。
バラモンと、それ以外に、何の違いがあろうか。」

 

第五章

何も言えない彼に、仏陀は、このように言った。

「遠い昔に、七人の仙人が、暮らしていた。
彼らは、バラモンだけが、清浄であると考え、
そのような教えを説き、そのように広め始めた。」

「それを聞き、アシタ・デーヴァラ仙人が、
彼らの元を訪ね、彼らに、このように尋ねた。
汝らの母親は、本当に、バラモンであったかと。」

「七人の仙人が、そうであると答えたので、
アシタ仙人は、もう一度、このように尋ねた。
その母の母親は、本当に、バラモンだったかと。」

「六人の仙人が、そうであると答えたので、
アシタ仙人は、もう一度、このように尋ねた。
その母の母親は、本当に、バラモンだったかと。」

「五人の仙人が、そうであると答えたので、
アシタ仙人は、もう一度、このように尋ねた。
その母の母親は、本当に、バラモンだったかと。」

「四人の仙人が、そうであると答えたので、
アシタ仙人は、もう一度、このように尋ねた。
その母の母親は、本当に、バラモンだったかと。」

アッサラーヤナは、ここで、このように言った。

「実にその通りです、正しくこの通りです。
バラモンの真偽も、バラモンの逸話の真偽も、
問う事に意味はなく、示す事に意味があります。」

「婆羅門の青年よ、実に、その通りである。
生まれを問うことに、貴賎を見る余地はなく、
生きて行うことに、貴賎が生まれる余地がある。」

法悦が湧き上がった、彼は、このように言った。

「ああ、これは、とても、妙なる教えです。
さながら、暗闇の中で、灯火を掲げるように、
仏陀は、私の見えない目に、見せてくれました。」

「仏陀よ、これより、この命が尽きるまで、
私は、心から、仏と法と僧に帰依し奉ります。
三宝の帰依者として、どうか受け容れて下さい。」


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