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起源経(アッガジャー・スッタ)

仏教



目次

第一章 |  第二章 |  第三章 |  第四章

 

第一章

あるとき、わたしは、このように聞いた。

ある日のこと、仏陀は、サーヴァッティの、
ミガーラマーター講堂に、止まっておられた。
婆羅門から出家した比丘に、このように言った。

「ヴァーセッタよ、憂いている事はないか。
バーラドゥーシャよ、悩んでいる事はないか。
他の婆羅門は、出家した汝らを、誹謗しないか。」

「尊師よ、完膚なきまで、叩かれています。
彼らは、身分制度に囚われ、婆羅門を重んじ、
婆羅門を捨て去った、我々を、誹謗するのです。」

『婆羅門は、梵天の子、最上の階級である。
婆羅門は梵天の口で、王族は梵天の腕であり、
庶民は梵天の腿であり、隷民は梵天の足である。』

『あいつら二人は、バラモンの誇りを忘れ、
クシャトリア出身の、ゴータマに帰依をした。
梵天を裏切った奴らは、必ず、地獄に落ちるぞ。』

それを聞くと、仏陀は、彼らに、こう言った。

「比丘達よ、殺生を為さず、偸盗を為さず、
邪淫を為さず、妄語を為さず、飲酒を為さず、
貪欲を離れ、瞋恚を離れて、愚痴を離れている。」

「比丘達よ、これらの、戒と律を守る者は、
僧侶階級、貴族階級、平民階級、奴隷階級の、
身分を問わず、高貴であり、身分を越えていく。」

「比丘達よ、これらの、戒と律を破る者は、
僧侶階級、貴族階級、平民階級、奴隷階級の、
身分を問わず、卑劣であり、身分に嵌っていく。」

「身分に囚われる者には、こう言いなさい。
梵天の子は、梵天の父の元に、出家を果した。
梵天も平伏す、如来の子として、生れ変ったと。」

 

第二章

「長い時が過ぎると、この欲界は消滅する。
その際には、生きとし生ける者の、大部分は、
二禅天に存在している、光音天に生まれ変わる。」

「彼らは、身分の差が無く、同じ姿を持ち、
光輝を放ち、空中を歩き、歓喜を食べていた。
そこは、日もなく月もなく、男も女もなかった。」

「究めて長い期間、光音天に止まった後に、
梵天界が創造されて、生ける者が落ちて来る。
彼らは、そこに、天の味が広がることを、知る。」

「そして、独りの、意地の汚い者が現れて、
天の味を舐めてみて、とても甘い事を知った。
彼は、その味を貪ったため、容色が汚くなった。」

「そして、次々に、意地の汚い者が真似て、
天の味を舐めてみて、とても甘い事を学んだ。
皆が、その味を貪ったため、光輝が弱くなった。」

「自ら発する光が消えて、日と月が現れた。
日と月と星が現れると、昼と夜とに分かれた。
昼夜が現れて一日が、季節が現れ一年が現れた。」

「貪るほど、体は硬くなり、光は弱くなり、
初めは等しかった容色に、違いが現れ始めた。
そして、身分の差が現れて、高慢の心が現れた。」

「そして、彼らの中に、慢心が現れたとき、
天の味が消えて、代わりに、地の味が現れた。
彼らは、代わりに、地の味を貪るようになった。」

「地の味は、天の味には、適わないものの、
極妙の蜂蜜の様に甘く、味も香も優れていた。
彼らは、喜んで、地の味を、貪るように食べた。」

「貪るほど、体は硬くなり、光は弱くなり、
初めは等しかった容色に、違いが現れ始めた。
そして、身分の差が現れて、軽蔑の心が現れた。」

「そして、彼らの中に、侮蔑が現れたとき、
地の味が消えて、代わりに、地の蔓が現れた。
彼らは、代わりに、地の蔓を貪るようになった。」

「地の蔓は、地の味には、適わないものの、
極妙の蜂蜜の様に甘く、味も香も優れていた。
彼らは、喜んで、地の蔓を、貪るように食べた。」

「貪るほど、体は硬くなり、光は弱くなり、
初めは等しかった容色に、違いが現れ始めた。
そして、身分の差が現れて、差別の心が現れた。」

「そして、彼らの中に、差別が現れたとき、
地の蔓が消えて、代わりに、地の米が現れた。
彼らは、代わりに、地の米を貪るようになった。」

 

第三章

「地の米は、地の蔓には、適わないものの、
すぐに食べられるし、すぐに実るものだった。
彼らは、喜んで、地の米を、貪るように食べた。」

「貪るほど、体は硬くなり、光は弱くなり、
初めは等しかった身体に、違いが現れ始めた。
そして、性別の差が現れて、情愛の心が現れた。」

「そして、彼らの中に、男と女が生じると、
互いに見つめ合って、互いに絡み合い始めた。
その様子を見ると、他の者は汚物を投げ付けた。」

「現在では正当でも、当時では不当である。
現在でも、花嫁に汚物を投げる風習があるが、
それは、意味が忘れられた、当時の名残である。」

「こうして、汚らしい、性交に耽る者達は、
何ヶ月も、何年間も、仲間から外されたため、
彼らは家を作って、隠れて交わるようになった。」

「家が作り上がると、家から出なくなった。
今までは、食べるだけ、米を取って来たのに、
それからは、貯めるため、米を取って来るのだ。」

「一日分を貯め込むと、米が糠に覆われて、
一週間分を貯め始めると、米が籾に覆われた。
一年分を貯め込むと、もう、米が実らなかった。」

「ついに、食べ物が、足りなくなったので、
互いに、土地を分けて、所有地を耕し始めた。
すなわち、所有が現われると、労働が現われた。」

 

第四章

「そこに、独りの、意地の汚い者が現れて、
他の米を食べてみて、とても甘い事を知った。
働くより、盗む方が良いと、盗みの味を占めた。」

「そして、次々に、意地の汚い者が真似て、
他の米を食べてみて、とても甘い事を学んだ。
働くより、盗む方が良いと、盗みの味を占めた。」

「すると、初めは、彼らを許していた者も、
繰り返される罪に対して、許し得なくなった。
許すより、殺す方が良いと、殺しの味を占めた。」

「そうして、最も優秀なる者を選び出して、
報酬を与えて、人の罪を裁いて貰う事にした。
これが王族である、クシャトリアの起源である。」

「それから、最も高貴なる者を選び出して、
尊敬を集めて、人の心を育てて貰う事にした。
これが祭司階級である、バラモンの起源である。」

「それから、似たような男女が結び付いて、
夫婦の関係を結び、生活を営むようになった。
これこそ平民である、ヴァイシャの起源である。」

「それから、生を殺めないと活きられない、
狩猟を生業にして、生活を営むようになった。
これこそ隷民である、シュードラの起源である。」

「それから、身分を問わず、身分を越える、
あらゆる業を離れて、法を求める者が現れた。
これこそ修行者である、汝ら自身の起源である。」

「比丘達よ、身口意で、悪業を重ねる者は、
僧侶階級、貴族階級、平民階級、奴隷階級の、
身分を問わず、卑劣であり、地獄に落ちていく。」

「比丘達よ、身口意で、善業を重ねる者は、
僧侶階級、貴族階級、平民階級、奴隷階級の、
身分を問わず、高貴であり、天界に還っていく。」

「比丘達よ、七科三十七道品を捨てる者は、
僧侶階級、貴族階級、平民階級、奴隷階級の、
身分を問わず、卑劣であり、身分に嵌っていく。」

「比丘達よ、七科三十七道品を修める者は、
僧侶階級、貴族階級、平民階級、奴隷階級の、
身分を問わず、高貴であり、身分を越えていく。」

「比丘達よ、その昔、サナートクマーラが、
この詩を唄ったことを、汝らは知っているか。
この歌は、意味が溢れて、真実が洗われている。」

『カルマを愛すると、カーストに属して、
ダルマを愛すると、カーストを越えていく。
最も優れたカルマは、カーストの外に現れる。』

これを聞いた、二人の比丘は、歓喜し実践した。


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