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地震に会ったときの心得

今村明恒

東京帝国大学教授、明治大正から昭和初期にかけての著名な地震学者で地震学会の設立者。



 最初の一瞬間に於いて非常の地震なるか否かを判断し機宜に適する目論見を立てること、これは多少の地震知識を要す。

 非常の地震たるを覚えるものは自ら野外に避難せんとつとめるであろう、数秒間に広場へ出られる見込みがあれば機敏に飛び出すが良い、但し火の元用心を忘れざること。

 二階建、三階建等の木造家屋では階上の方却って危険が少ない、高層建物の上層に居合わせた場合には野外への避難を断念しなければなるまい。

 屋内の一時避難所としては堅牢なる家具の傍らが良い、教場にては机の下が最も安全である。木造家屋内にては桁、梁の下を避けること、又洋風建物内に於いては張壁、暖炉用煉瓦煙突等の落ちてきそうな処を避け、止むを得ざれば出入り口の枠構の直下に身を寄せること。

 野外に於いては屋根瓦、壁の墜落あるいは石垣、煉瓦塀、煙突等の倒潰し来るおそれある区域から遠ざかること、特に石灯籠に近寄らざること。

 海岸に於いては津波来襲の常習地を警戒し、山間に於いては崖崩れ、山津波に関する注意を怠らざること。

 大地震に当り、凡そ最初の一分間を凌ぎ得たらば最早危険を脱し得たものと看做し得られる。余震恐れずに足らず、地割れに吸い込まれることは我が国にては絶対に無し、老若男女全て力の有らん限り災害防止につとむべきである。火災の防止を真っ先にし人命救護をその次とすること、これが人命財産の損失を最小にする手段である。

 潰屋からの発火は地震直後にも起こり十二時間の後にも起こる、油断なきことを要する。

 大地震の場合には水道は断水するものと覚悟し機敏に貯水の用意をなすこと。

 余震はその最大なるものも最初の大地震の十分の一以下の勢力である、最初の地震を凌ぎ得た家屋は  多少の破損傾斜をなしても余震に対して安全であろう、但し、地震でなくても壊れそうな程度に損したものは例外である。


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