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ジャズの巨匠アート・ブレイキーのエピソード

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ジャズの巨匠アート・ブレイキーのエピソード

素晴らしいメンバーを従えてアート・ブレイキーが初めて羽田空港に降り立ったのは、1961年元日の夜10時のことだった。
機内から外へ出た瞬間にブレイキーが目にしたのは、花束を持ち、こちらに向かって熱狂的に手を振っている無数の若者達。
彼はいったい同じ機にどんな有名人が乗っていたのだろうと思ったのだが、これが実は自分達を歓迎するファンの渦だと知ったとき、彼の目からは大粒の涙があふれた。

熱狂ファン「ミスター・ブレイキー!お願いがあります。」

ブレイキー「何だい?」

熱狂ファン「僕と一緒に写真を撮って下さいませんか?」

ブレイキー「は?本気か?」

熱狂ファン「もちろんです!是非、是非お願いします。」

ブレイキー「俺は黒人だが・・・そんな俺と同じ写真に写っていいのかい?」

熱狂ファン「そんなこと知ってますよ。是非お願いします。記念にしたいんです。」

ブレイキー「俺は黒人だぜ。本当にいいのか?」

アフリカン・アメリカンとして、常に差別を意識せざる得ない状況の中で生きてきたブレイキーにとって、この、彼らへのただ手放しの歓迎ぶりは、にわかには信じられないことだったのだ。
 
タラップを降りると、ファンからの花束に埋もれ、スピーチを求められても、涙が止まらなくてとてもそれどころではない。
ただ顔をくしゃくしゃにしたまま、ブレイキーはある屋敷で開催された歓迎会へと向かったのだった。

帰国を前に、彼は

「私は今まで世界を旅してきたが、日本ほど私の心に強い印象を残してくれた国はない。
 それは演奏を聴く態度は勿論、何よりも嬉しいのは、アフリカを除いて、
 世界中で日本だけが我々を人間として歓迎してくれたことだ。
 人間として! ヒューマンビーイングとして!」

とも述べている。


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