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記憶を売った男

2ch



『ご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。』

店員に見送られながら、私はその店をあとにした。

私は記憶を売った。
金額は100万円。
自分がどんな内容の記憶を売ったのかは覚えていない。
だが、今手元に100万円の現金と領収書がある。
そこには確かに、私が記憶を売り、その対価を受け取った旨が記載されている。
私が記憶を売ったのは間違いないようだ。

それにしても、100万円の価値がある記憶とは、一体どんな記憶だったのだろう。
そう考えると、自分がどんな記憶を売ったのかが気になってしょうがない。

なんとかして、記憶を取り戻すことはできないだろうか。
そう思った私は、翌日、再びその店を訪れた。


「すいません、自分が売った記憶を返してほしいのですが」

『申し訳ございません。当店では記憶の返還は取り扱っておりません。ですが、買い取っていただくことはできます。』

「では、100万円はお返しします。これで・・・」

『こちらの商品は150万円となっております。』

「え?でも元は100万円で私が売ったものですよね?」

『はい、ですがこちらの記憶のお値段は、今日現在で150万円の値がついております。
 明日以降になれば、さらに値上がりするかもしれませんよ。』

そんな馬鹿な!たった一晩で50万円も値上がりするなんて!
それほどまでに価値があったというのか、私が売ってしまった記憶には。。。
これは、なんとしても取り戻さねば。
そう思った私は銀行へ向かい、預金を下ろして50万円の現金を用意した。

『お買い上げありがとうございます。こちらが商品でございます。』

その刹那、私は目の前がかすむような感覚を覚えた。
数秒後、私は自分の売った記憶を思い出した。
私の売った記憶の内容は、『七夕デートが雨で台無しになった』というものだった。

なぜ、こんな記憶に150万円もの価値が?

呆けている私の横で、別の客との手続きを済ませた店員が言った。
『ご利用ありがとうございました。”またのお越しを”お待ちしております。』


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