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茶屋のおばあちゃんとの写真

2ch



どこかのサイトの拾い物だけどHDの中に残ってた。既出かもしれんが、当時は泣いた。
コレ読んで自分のおばあちゃんに無性に会いたくなったのを憶えてる。
それではどぞー

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 免許を取って始めての夏休み、おいらは父親方の田舎へと一人で
ドライブということで車を走らせた。高速道路は料金が…と思い峠道を選んだ。

 のどが渇いたので自動販売機を探したけど峠道にはない。
峠の入り口付近にある茶屋があった。古く今にも壊れそうな茶屋に寄ると、
おばあちゃんが一人ポツンと座っていた。

 うどんを注文した。なんか美味しかった、不味いはずなのに、ニコニコ笑う
おばあちゃんを見てると美味しく感じた。
いろいろ話をした。息子の事、嫁の事畑の事、そしてこの茶屋の事。
高速道路が出来て車が通らなくなると茶屋は衰退し息子夫婦は出て行き
自分が一人守ってる事。

 うんうんとうなずくおいらにおばあちゃんは久しぶりに話しできる相手
を見つけて喜んでいた。話が弾んで裏の畑見るかい?と言われ畑へ行った。
おばあちゃん自慢の畑だった。果物と野菜を生でガリガリ食べた、
こんなに美味しい物を食べたのは今まで経験無かった。

 日が暮れて、おばあちゃんは「泊まってくかい?」とうれしそうに言う。
しかし、おいらは恥ずかしくて「いいよ」と言い店を出た。
翌年、同じ月同じ場所においらは訪れた。そしておばあちゃんは居た。
おばあちゃんは家族のように迎えてくれた。まぁまぁ話して行きなさいと言い、
おいらの顔も忘れずにうどんを出してくれた。
また畑を見に行き野菜をもらいおいらは家路に着く。

 そんな事を2年間繰り返した。3年目の季節、再び向かうとおばあちゃんは居た。
ちょっと年とったけど元気だった。またうどんを食べて話をした。
最近息子が全然顔を見せないのだと言う。悲しそうに笑った。

 そしていつもの「泊まっていくかい?」と言われ今回は「うん」と答えた。
ふもとの町で酒を買ってちょっと贅沢な魚を買って、贅沢なケーキを買って
おばあちゃんと暖炉を囲んでご飯を食べた。

 片付けをするとおばあちゃんは
わるいねぇわるいねぇと言いながらお茶をすすると
うれしそうな目でおいらを眺めていた。
おいらも別にめんどくさくも無かった、
ただおばあちゃんの話を聞いてあげる事で
一人のおばあちゃんの心が和むのならいいと思った。

 おばあちゃんは肩をしきりにさすっていたので、
肩を揉んであげた。おばあちゃんは昔は息子が昔はやってくれたと
悲しそうに言う、固くていくらほぐそうとしてもほぐれなかった。
手を見た。ボロボロの手だった。戦後復興の日本を支えてきた手だと思う。

 知らないおいらを泊める位だれかと話がしたかったんだと思うとちょっぴり泣けてきた。
知らない息子への怒りも多少はあった。名前も何も知らないおばあちゃん。
夜寝る前にいろいろ話をしてくれた。戦争の事、今の時代の事、旦那さんの事。
おばあちゃんは最後に「私の息子みたいになっちゃいかんよ、あんた」。
「あんたは立派な大人にならにゃ」と言い眠りに付いた。

 次の日、おばあちゃんは朝から畑仕事で真っ黒になりながら畑にいた。
手伝った。重い。自分の力の無さに恥ずかしい思いをした。
一仕事終えて店にお客が来た。家族連れだった。
子供がポラロイドを持っていたので話の流れでおばあちゃんと二人で撮ってもらった。
おばあちゃんは恥ずかしそうに下を向き「わたしゃいいよ」としきりに話していた。
出来上がりを柱に貼るとおばあちゃんはうん、よく取れてるねぇと写真を撫でていた。

 おいらは下の余白に「元気でね!」と
ペンで書くと、おばあゃんは喜んで大切にするよと言い笑った。
帰る時、「もう一日泊まってけばいいにぃ~」と寂しそうに言ったがおいらも仕事が
あるからと帰路に着いた。

4年目、同じ季節、おばあちゃんはやっぱりそこにいた。
だけど、おいらの顔がわからない。視力が弱っているのもあるが、痴呆症にかかっていた。

 おばあちゃん「俺だよ!」と言っても、息子の名前しか呼ばない。○○かい?
「よくきたねぇ、お茶でも飲んできなさい」。とお茶を出してきた。
おいらはありがとうおばあちゃんというと、
「なんだいいきなり来て~もっと顔だししないとダメだにぃ~」とうれしそうに怒る。

 しかし、一緒にいるとだんだんと記憶がよみがえるらしいのか、
ふと思い出したように、「あれっまぁいらっしゃい、元気だったかい?」と正気に戻る。
その日も話をして夜遅くまで一緒に話をした。たわいも無い話だったが、
おいらにはおばあちゃんと会った最後の記憶だった。

 5年目、同じ季節。店は閉まっていた。張り紙があった。二日前に亡くなっていた。
なぜか涙があふれた。名前も知らないおばあちゃん。

だけど、おいらにとっては師であり友人でもあった。畑もそのままに残っていた。
なぜもう少し早く来なかったのか自分を悔いた。張り紙の住所へと急いだ。
そこから10キロも離れて無い家で御通夜をやっていた。

 受付にすいません友人で、店に行ったらこちらだと聞いたのでというとすんなり通してくれた。
祭壇の写真がまともに見れなかった、視界が潤んで何も見えなかった。

 親族の一人がびっくりした顔でこちらを見ている。そしてコソコソと話をすると急ぎ足でこちらへ掛けてくる。
あの、この写真の方ですか?そう差し出された写真はおばあちゃんとある家族がとってくれたポラロイドだった。

 「母はこの写真を絶えず持ち歩いていたので…」と言われその場で嗚咽した。
声にならなかった。恥ずかしそうに笑ってるおばあちゃんと肩を組んでるおいら。

「元気でね!」と書かれた文字は薄れていた。
何回も出し入れする写真の角はめくれてしまい、何回もセロハンテープで止めてあった。
その写真をもらえないかと頼み大事に抱えた、胸に抱き再度嗚咽した。

 すると息子であろう人物が奥で話していた
「やっとくたばったか」という様な事大きい声で言っいた、寂しさの裏返しなのだろうか?
おいらはそこまで気が回らず、歩み寄ると思い切り蹴り飛ばした。
葬儀場はパニックになり、警察に突き出された。

 あの日あれでよかったんだろうか?
おばあちゃん。おいらはまだ立派な大人になりきれてないよ、だけどもう少し待ってて、
立派じゃなくても精一杯生きてゆくから。おいらが死んだら、またあのうどんを一緒に食べよう。

 今でも片時も離さずあなたとの写真持ってます。
息子じゃなくても、息子のように思ってくれたおばあちゃん。

ありがとう。


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