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俺が22の頃入社してきたアイツ

2ch



この時期いつも思い出すんだよね。
だからちょっと書かせてもうらうね。

俺が22の頃働いてた時に1つ下で人懐っこい男が入社してきた。
すぐ仲良くなってとてもいい奴でタメ口で何でも話し合ったり時には
会社に内緒で殴りあいの喧嘩したり、会社の女子社員取り合ったり、
今思うとあほな事ばっかりしてた。

仕事もお互いがチームを組んで順調に売り上げが伸びて
会社で1番の営業成績を取った時ははしゃいで朝まで飲んで
潰れて二人で救急車という馬鹿事件まで起した。

やつが結婚して子どもが出来たと大喜びしてたのを思い出す。
かわいい女子社員と毎回デートの詳細を照れくさそうに話すあいつ。
配属がお互い同じところへ変り、背広から作業着に変ったけど
2人とも一生懸命だった。

その頃、会社では社長が交代し変革という波が襲ってきた。
ベテランはリストラの嵐。中堅は無理矢理管理職にさせられ
大幅残業増、そして俺たち若手はベテランが居なくなった現場を
何件も掛け持ち。残業代はカット。酷い仕打ちだった。

やつはだんだん口数が少なくなっていた。
病院に行け!と何度も言ったが「会社が行かせてくれない」と
「休暇届が出ないんだ」と話していた。
やつは完全に塞ぎこんでしまい話し掛けても返事すらしなくなった。
時に病院へ無理矢理連れてったら、取締役が迎えに来てやつを現場に
送り返した。
それを文句言った俺は違う現場へと飛ばされた。

辞める事も出来た。だけどやつが心配だった。
会社に聞くとやつの現場は大幅な遅れが出てた。
電話しても出ない。夜遅く現場に様子を見に行くとやつは小屋で
ボーっと壁一点を見つめていた。話しかけると「よぉ」とは言うが
反応が鈍い。重度の鬱病や精神分裂病なんじゃないかと疑った俺は
再度上司に掛け合ったが、今度は夜も会えない程、遠い現場へ移された。

毎日、毎日電話した。家に帰れ、会社の事は気にするな。
辞めてお互い違う会社に行こう!そう説得する毎日。
12月下旬。正月元旦は休もうよ!遊びに行く!と言うと
「うん、たのしみだ」とやつはぶっきらぼうに言う。
でも次の日、やつは死んだ。奥さんから泣きながら電話かかってきた。

自宅近くの駐車場で死んでた。死因は睡眠薬だった。
遺書があった。一言「ごめん」だけだった。
家の近くまで来たなら何故ドアを開けないんだ!
最後は少しでも近くで死にたかったのか…
俺ももうこの頃にはおかしくなっていたので、現場ほっぽりなげて
眠い目こすりながらやつの収容されてる病院に向った。

やつは寝ているように死んでた。綺麗な死に顔だった。
泣けなかった。涙が出てこない。でも、奥さんに写真を見せられた
あいつと撮った写真で背広着て営業成績居1位の時の写真だった。
涙が「溢れる」とは本当の事なんだなと実感できる。
我慢なんて出来やしない、身体の底から、心の芯から震える。

まだ葬儀屋も到着しない病院で、幼い子どもの前で恥ずかしくも無く
やつに抱きつき、奴の顔に涙を落とした、奇跡が起きてくれと願った。
もう一度、もう一度、会って話をしよう、俺の一番の理解者だったお前。
いくら涙を落としても生き返りはしない、やつは遠くへ行った。

しばらくして、やっと葬儀屋が来た。
ひっきりなしに鳴る会社支給の携帯を壁に投げつけた。
待合室でおめおめ、おんおんと泣いてた。最後は笑いさえ出てくる。
不思議なものだった。「はははははは」と笑ってる。
自分がなんか切れちゃってるのがわかる。
看護婦さんが通りかかって、急遽医務室に連れて行かれ
安定剤を打たれしばし眠りについた。

変な夢を見た。
やつが笑ってこっちに来る。
俺の親も、あいつの親も、そして奥さんも子どももみんなで歩いてくる。
だけど、悲しいはずなのに誰も夢では泣いてない。
なんで??おかしいだろ?お前は死んだんだよな??俺には信じられない…
必死であいつに手を伸ばしてる。なんか話してる。
内容はわからない。大きな光のわっかみたいな下で俺とやつは2人で
楽しそうに話してる。やつは生きてる…
そんな夢だった。

はっと目が醒めた。周りには親父と、お袋、弟。
みんなの顔を見て、また泣いた。親父に抱きつくなんて恥ずかしいが
この時ばかりは、泣いた。強く抱き締めてくれた親父とお袋。
弟は手を握ってた。
「自殺しちゃったんだってねぇ…」お袋も涙ぐむ。あいつを独身時代は
実家によく連れてってただ酒のましたからお袋も良く知ってる。
しばらくして警察にいろいろ聞かれたが、会社の労働の違法性を言っても
警官は取り合ってはくれなかった。

お通夜ではお袋も親父も会社休んでやつの為に動いてた。
夜は線香当番で俺とやつの肉親だけ…
棺桶を開けてみた。やっぱりやつだったが信じたくない俺がまだ居る。
いっぱいいっぱい涙を注いでやった。やつが三途の川渡る時に
「こんなに悲しまれて死んだんだ」と判るように。
もちろん馬鹿げた事なのはわかってた…でもそうするしか俺には
思いつかなった。

枯れたろうと思ってもいつしか溢れてくる。
葬式で、霊柩車がホーンを鳴らし出てゆく。
やつの奥さんは一人では立っていられず両親に支えられてた。
子どもは「パパは何処へいくの?」と無邪気に聞いてくる。
「パパはね…」、嗚咽してしまう。
「パパは、遠い所へお仕事なんだよ」。涙はらはらしながら話す。
だめだ、堪えられない。
「ふ~ん、そうなんだぁ~遠いってどれくらいなの?ゆーちゃんも行けるかな?」

「そうだ…ね…、大人になったら行けるよ、それとママを困らせちゃダメだぞ」
「うん!パパ帰ってくるまでゆーちゃんがんばる!」
話した後、背を向けるともう子どもを見ることが出来なかった。
会社の人々を睨んでも、目をそらすばかりでまともに話をしてくれる上司なんて
誰一人として居なかった。

24日のイブの日、やつの墓に言ってみた。
全てが思い出されて、苦しくて立っていられない。
寒い中、ワンカップを墓に置くと、もうひとつは自分。
乾杯して飲んだ。でもしょっぱい…
墓石にすがってた。惨めで無様な格好だろけど、どうでも良かった。
朝まで飲んでた。安らかにと願いながら、天国は仕事しなくていいんだぞと。

お前が居なくなってからもう5年が過ぎた。
ゆーちゃんはもう小学校2年生だぞ。
俺も結婚したよ、今年は墓に報告に行くからな。
子ども出来たら、女でも男でもお前の文字を一文字貰うよ。

あぁそれとな、会社倒産したよ。
お前が天国いっちまってから、俺も年明けにはやめちゃったけどさ。
でも基準監督署言ってねがっぽりと残業代もらったからな。
お前の分には程遠いけど半分は奥さんに渡しておいたよ。

あの取締役いたろ?病院から連れ戻したやつ!
あいつね、2年前死んだよ。俺、葬式にすら行かなかったし
意地悪上司から案内来た時さ、
「ふざけるな、あいつ殺しておいて、こっちには強制参加とはどういうつもりだ!」
って言ってやった。馬鹿だろ…俺。
そしたらあいつ「すいません」だって。聞かせてやりたかったなぁ~

まだ死ねないけど、歳くったり、巨大地震来たり、車で突然事故したり
いずれ死ぬ時が来るからさ、そしたら心おきなく飲もうな。約束だぞ。
みんなと飲もうな。それまで見守っててくれよ。俺だけじゃなく
がむしゃらに働いてる全ての人をさ、見守っててくれよ。

じゃぁ。またな。

語り口調ですまん。
もう潤んで書けねぇや。


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