My Library Home

俺は孤児院で育った

2ch 作者不詳



686 :名無しさん@4周年 :04/05/02 23:03 ID:6DDa2Qvz
俺は孤児院で育った。父親は炭鉱に出稼ぎ、母親は顔すら知らない。
親父からは孤児院に毎月なけなしの金だけは送られてきた。
しかしあくまで最低限の金で、一般人の子がアイスや肉まんを学校帰りに美味しそうに食べるのを
俺はいつも遠くから羨ましそうに見てた…。

親父には過去数度会ったことがあるだけだった。親という実感など湧くはずもない。
手には小指が無く人様に自慢できるような人生を歩んできたわけではないだろうことは
容易に想像できた。
「なぜこんな親の下に俺は生まれてきたのだろう…」と、行き場の無い怒りと絶望の中、
俺は将来こんな奴にはならないという一心で勉強に励み、奨学生の資格も得、
苦学生ながらも大学も出て一流と呼ばれる企業に就職できるまでになった。

或る日、役所から一通の電話があった。
路上で行き倒れになっていたホームレスの持ち物の中に俺名義の通帳があるという。
どういうことだ?と病院に行くと、ベッドの上には大分痩せこけて見た目が変わっているが、
長年の炭鉱生活で顔がすっかり煤けて黒くなった親父の顔があった。
医者が言うにはかなりボケが進行している状況らしく、身元引受人になってくれとのことだった。
俺は目の前が真っ暗になった…。
「やっとゴミの様な生活を抜け出せたと思ったのに、なんで今頃また俺の前に出て来るんだよ、
これ以上、俺の人生の足を引っ張るんじゃねえよ」と心の中で絶叫した……。

嫌々だが親父を自宅に連れ帰った。24歳になって初めての親との同居生活。
鬱陶しいだけのまさに疫病神。
親父は俺が息子だということすらわかっているのだろうか?
顔の皺の間も手の爪も長年の煤で真っ黒…。会社から疲れて帰ってきたら、
先ずすることは部屋の中で漏らされた糞尿の後始末…。いい加減にしてくれ!
しかし、そんな親父も通帳だけは肌身離さず持ってけして誰にも見せようとしない。


或る日、親父を連れて公園に散歩に行くと「Sさん?」と見知らぬババアが話し掛けてきた。
親父はボケのせいで誰かわからないようだ。ババアに事情を話し、帰ろうと思った矢先、
ババアが俺の顔を見て妙な事を言った。
「Kちゃん、大きくなったわねぇ。もう心臓は大丈夫なの?」
??? どういうことだ? 心臓?

ババアに詳しい話を聞いて俺は衝撃を受けた…。
俺は赤ん坊の頃に手術をしなければ死んでしまうほどの重い心臓病にかかっていたらしい。
そしてもっと衝撃的な事実が待ち受けていた。俺と親父は実の親子ではない、と…。
ババアが全てを話してくれた…。
親父は若い頃、借金取りをしていたらしい。
或る日、借金の回収に行くと、若夫婦が赤ん坊を置き去りにし夜逃げしていたらしい。
その赤ん坊が俺だった…。
流石に親父も面食らいどうしようか大分悩んだらしい。
だが、親父は悩んだ末に俺を引き取り育てる事を選んだらしい。
周囲の反対は凄かったそうだ。だが、親父は必死に頼み込み俺を養子にした。
親父は俺を育てる為に組を抜け、莫大な医療費を稼ぎ出すために
炭鉱で一人働いて働いて働きぬいて借金を返していたのだ。
ババアがどうして俺を引き取ったのか親父に聞いたことがあるらしい。
親父は誰もいない部屋に一人ぼっちで置き去りにされて泣いていた赤ん坊の俺を見た時、
涙が止まらなかったらしい。俺の生涯をかけてもこの子を幸せにしてやりたいと誓ったそうだ。
それを聞いて俺は号泣した…。今までずっと親父を最低の野郎だと蔑んでいた自分を恥じた。
親父は自分の人生の全てを俺の為だけに捨てて生きてきたのだ。赤の他人の俺の為に…。
数日後、親父が寝ている間にそっと通帳を見てみた。
中には毎回小額ながら積み立てがされ、金額は2千万もあった。
不意に目を覚ました親父が必死な形相で「だめだ、これは息子のKのもんだ」
と通帳を俺の手から取り戻した時、俺は泣きながら親父を抱きしめた。
親父が歩けなくなったら俺が親父の足になってやる、親父の目が見えなくなったら
俺が親父の目の代わりになってやると固く心に誓った…。


Page Top | My Library Home