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紙飛行機を飛ばそう

2ch



445 名前:隊長 ◆LovezowNu2 [sage] 投稿日:2006/08/05(土) 01:48:26
病室には妹の苦しそうな吐息と心拍計の電子音だけが響いている。
妹の白い顔は時折苦しげに眉をゆがめるが、それ以外は至って静穏 なものだ。
とても、医者がさじを投げた患者には見えない。
なんで、俺じゃなくて妹なんだ。まだ中学生じゃないか。あんまりだ。

「お兄ちゃん……」
いつもの祈りとも呪詛ともつかない思いが終わる前に、妹が静かに口を開いた。
「……なんだ?」
「わたし、飛行機が見たいよ。」
飛行機どころか、この1年外にだって出られていないのに。
「飛行機か。……どんなのが見たいんだ?」
「うん。」
ちょっと考え込んだ妹は、儚げに笑ってこう答えた。
「遠くまで、飛んでいく奴が見たい。」
俺はすぐに紙を折り紙飛行機を作った。
「よく見てろよ。」
窓の向こう側に投げる。紙飛行機は風に乗って眩しい光の中を遠くまで飛んでいった。
「綺麗だね、お兄ちゃん・・・」
「ああ、本当にそうだな。」
「私も・・・あんなふうに、飛べるかなぁ?」
「何言ってるんだ!お前は元気になって、たくさん紙飛行機を折って、
たくさん飛ばせばいいんだよ!」
「うん、、、そうだね、お兄ちゃん・・・でももう、私無理みたいだ・・・」
「な、、、何言ってるんだっ!お兄ちゃん、許さないぞ、そんな弱気言ったらっ、許さないからな。」
「ごめんね、お兄ちゃん・・・私、がんばれなかった・・・。今度はもっと強い子で生まれたいな・・・
 そしてお兄ちゃんと一緒に、紙飛行機を飛ばすんだ・・・。」

そういうとゆっくりと目を閉じて、静かに息を引き取った。
涙が出た。
医者がドタドタと静寂を壊して入ってくる。だけど涙は止まらなかった。


遠く、飛ばした紙飛行機は静かに地面に落ちていた。


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