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バイクってのは走らないと死んでしまうんだ

2ch



482 :774RR:2012/06/20(水) 09:41:48.54 ID:KYvQDVli
オカルト入るけど保守がてら投下

父はバイク乗りだった。
よく後ろに乗せてもらって近所をゆっくりと回ってもらったり、バイクの整備を手伝ったりしていた。

その父が5年前に死んだ。

結婚記念日に母と出かけたが、あいにくの雨で視界が悪く、
見通しの悪い交差点で突っ込んできたダンプカーと衝突し、2人とも帰らぬ人となった。

残されたのはスズキのカタナ400という古いバイク。
黒いボディに赤いSUZUKIというロゴが入っていて、とても大きく見えた。

私は当時バイクの免許がなく、周囲にはバイク乗りもいなかったため、
カタナは私が免許を取得しようと教習所に通うあいだ、
ずっと父が懇意にしていたバイク屋さんに預けたままだった。

「ちゃんと整備しておくから、早く免許をとってこいつを迎えにきてやってな。
バイクってのは走らないと死んでしまうんだ」
と、整備士さんが寂しそうに笑った。

父を二度も死なせるわけにはいかない。

何度も転んであざをつくったり、骨を折ったりしながらも、やっとの思いで免許をとった。

483 :774RR:2012/06/20(水) 09:43:34.52 ID:KYvQDVli
やっとの思いで乗れるようになったカタナを引き取りに行くと、
整備士さんが顔をしわくちゃにして出迎えてくれた。

「ミキちゃん、免許取ったのかい。お父さんの形見だ。壊すなよ」
そう言って笑い、送り出してくれた。

足がほとんど届かなくて、
ヤジロベーのようになりながらギアをローに入れて発進……したつもりがN芋掘った。

父の笑い声が聞こえた気がした。

そのまま海岸線をとばして、両親の遺骨をまいた海が見える道の駅へ出かける。
最初はそこへ行こうと考えていたからだ。

たまにツーリングであろうバイクとすれ違う。Vサインをくれる人も居た。
皆すごく上手に走っている気がして少し恥ずかしい思いをしたのを覚えている。
それでも最初のN芋以来ほとんどミスせず走れたのは、父のお陰かもしれない。

道の駅に到着するころにはヘトヘトだった。
初心者のくせに3時間休憩なしツーリングなんて、今考えればバカなことをしたと思う。
フラフラしながら缶コーヒーを買って、ぼーっと海を見ていた。

「大事に乗れよ」

そんな声が聞こえた気がして振り返る。
カタナがあった。

484 :774RR:2012/06/20(水) 09:45:16.82 ID:KYvQDVli
家に帰って車庫にカタナを戻したあと、わんわん泣いた。

5年たった今でも、カタナは私の相棒として元気に走っている。
今年は父が行きたいと言っていた北海道に行くつもりだ。


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