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金魚すくいと兄妹

2ch



422 :大人になった名無しさん:2005/04/21(木) 04:00:17

俺が打ってる店(金魚すくい)に兄妹だと思われる

7歳ぐらいの女の子と10歳ぐらいの男の子がやってきた。

妹は他の子供たちが金魚すくいをしているのを、興味津々で長い間見ていたが、やがてせがむように兄の方を見た。


正直、二人の身なりは裕福そうには見えず、男の子は「1回300円」と書かれた看板を、何とも言えない表情でしばらく見つめていた。

そしてもう一度妹の方を見てから、俺に向かって

「1回」と言いながら、握り閉めた手を差し出した。

彼の手から渡された3枚の100円硬貨は、余程大事に握っていたのか、とても熱かった。


妹は満面の笑みを浮かべて、俺から紙を受け取ると、夢中で金魚すくいを始めた。

男の子は妹が楽しそうに遊んでいるのを見ながら、満足そうだったが、やはり自分も遊びたいのだろう、身を乗り出してソワソワとしている。


こんな時、俺はわざと手を滑らせて、紙を船の中に落とす。

「あー、しまった、濡れてもうた、しゃーない、勿体無いからボク使え」

そう言って、濡れた紙を男の子に渡した。

男の子はすごく嬉しそうな顔をして、

「ありがとう」と言うと、眼を輝かせて、金魚すくいをしようとしたが、ちょうどその時、

妹が兄のそばに寄ろうとして躓いた。

そしてその拍子に兄とぶつかり、妹の紙が

破れてしまった。

妹の泣きそうな顔を見て、男の子は俺に、

「あげてもいい」

と手にした紙を見せた。

俺が頷くと男はニッコリ笑って手にした紙を妹に差し出した。

そして、妹と俺に気を使わせない為だろうか、

「俺、ちょっと向こう見てくるから、ここで遊んどけよ」

と言って走り去っていった。

妹はしばらく困ったように立ち竦んでいたが、やがて再び金魚すくいを始めた。

しばらくして、妹が遊び終わった時、隠れてみていたのか、タイミング良く兄が現れた。

そして俺に向かって、再び「ありがとう」と笑顔で言い、妹にも同じように言わせると、妹の手を引いて、行ってしまった。


もう10年前の話だが、俺は今も彼の笑顔を忘れてはいない。


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