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日頃から大口を叩いている助左衛門

2ch



859 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/27(日) 21:34:38 ID:iBdRXPtC
鹿児島の加治木に神田助左衛門という大工が居た。
日頃から大口を叩き、荒っぽいところもあるこの男、あるとき島津義弘の居城の修繕を頼まれて
大工仲間とともに城内で仕事をしていた。

助左衛門が天井の修繕をするため、足場を組んで仰向けになって作業をしていたところ
「おうい」と助左衛門を呼ぶ声がする。
おそらく大工仲間だと思ったのであろう、助左衛門は天井を向いたまま「何だい?」と返した。
すると声の主は「もう飯は食ったのかい?」と尋ねてくる。
助左衛門はよほど腹が減っていたのか「いいや、奥の腐れ坊主達はまだ飯を出してくれんのよ」と
返した。
ここで言ってる「腐れ坊主」というのはお坊さんのことではなく城の奥にいる侍、要するに
殿様達のことなのだが…
暫くして大工の親方がすっ飛んできた。

親方「おい、助左衛門!お前いま話した相手が誰だか知っているのか!」
助左衛門「知りませんよ、誰ですかい?」
親方「馬鹿!お殿様だよ、お・と・の・さ・ま!惟新様その人だよ!
  そのお方にあんな無礼な事言いやがって…ああもう、どうなっても知らんぞ!」

そう、助左衛門は声をかけてきた義弘に背を向けたまま返事をした挙句、あろうことか
「腐れ坊主」呼ばわりしたのだ。
日頃から大口を叩いている助左衛門も、このときばかりは顔を青くして怯えだした。
すると案の定、使いの者がやってきた。義弘が助左衛門に用があるというのである。

もはやこれまで、きっと殿様直々の厳罰が待っているのであろう…
覚悟を決めた助左衛門が義弘の御前に見たものは…ご馳走と酒であった。
義弘は「さあ、奥の坊主のご馳走じゃ、たんと食え」と事も無げに言うと自ら
大杯に酒を注いで助左衛門に与えた。
既に覚悟を決めている助左衛門、こうなったら食える限りは食い、飲める限りは飲んでやろうと
ご馳走の山に敢然と挑む。
その食べっぷり、痛飲振りがよほど気に入ったのか義弘も次々と酒を勧めてくる。
だが人間である以上、胃袋には限界がある。
「どうじゃ、もう飲めぬか」と義弘に聞かれた助左衛門は逍遥として答えた。「はい、もういけませぬ」
ああ、自分はこんな形で人生を終えるのか…うなだれる助左衛門に義弘は言った。

「そんなら帰れ。また明日も頼むぞ」

…何のことか分からぬがとにかく助かったらしい。
助左衛門はそのまま帰ると日頃の大気が戻ったのか、心配して待っていた仲間達と供に
今度は蘇生の宴会を開いたという。

まあ、相手が人格者の義弘だから助かったようなもの。
みんなも人と話すときは相手の顔を見て、失礼が無いようにしよう!


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