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厨房の頃まで暮らしていた家があった

2ch



72 名前:大人の名無しさん 投稿日:02/07/25 02:54 ID:mu+UftDd
厨房の頃まで暮らしていた家があった。私はひとりっこ。
じいちゃんもばあちゃんもいない核家族だった。

中2の時、両親が別れた。
私は父と一緒にその家を出た。

母はその家に残り、パートなどで食いつないでいたようだが、
2年後、再婚した。

父はなかなか再婚できないでいた。その内だんだんと生活が荒れ始め、
ギャンブルに手を出し借金をこしらえた。

乱暴な父では無かったが、荒れ放題の父の家を私は出て、母の元へと戻った。
両親が別れてから5年後、中学まで過ごした面影はもはやその家には無かった。
しかしその状況にも慣れ、私は段々と「古いけど新しい家」に馴染んでいった。

学校を卒業してしばらくしたころ、父が家に来る事があった。父は立ち直っていたが、まだ再婚できずにいた。
義父は気を遣って外出してくれていた。
離婚以来、父、母と共に暮らす事はあったけれど三人揃って会うのは10年ぶりだった。
父の仕事の都合で、4~5時間ぐらいしか話す事はできなかったが、私の小さい頃の話や学生時代の話で盛り上がった。

あ~なつかしいなと思いながらも楽しいひとときを過ごし、「そろそろ…」と父が腰をあげた。
なんとなしに玄関まで見送りに行った時、涙がこぼれそうになった。

10年前、父は確かに一家の主としてここにいた。
客を見送ることはあっても見送られる事などなかった。

私は必死で泣くのをこらえた。泣いたら父も泣くだろうと思ったから。
父は少しさみしそうな笑顔で足早に玄関を閉めた。外で鼻をすする音がしたような気がした。

私は、その後号泣した。失ってしまった家族を思って声を出してわんわん泣いた。

10年ぶりに泣いた。
両親の離婚以来、涙が出なかったのに。
悲しくても涙が出なかったのに。

それを最後に、「家族」3人で出会う事は永遠に無かった。
今年はじめ、私は結婚した。おなかに赤ちゃんもいる。
何があろうと離婚だけはするまいと思う。


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